第354話「罠のアラームが齎す孤児院の新たな後ろ盾」


「いえいえ!私が出来る事であれば!なんでも言ってくださいまし!幾ら同郷のアーチさんでも私でないと出来ないこともあるでしょうし!」



 何故アーチが比較対象かわからないが、手伝ってくれる様だ。



「では一緒に来てもらえますか?報酬は後払いになりますけど………王様がいるので何欲しがるかわからないので……それでも良いですか?」



 僕がそう言うとシャインは、



「では料理の方法を教えてください!レシピ詳しいじゃ無いですか?ヒロさんは、実際に一緒に作るって事を報酬で!!」



 シャインは変な物を報酬に欲しがるな……食べ物のお店でも開きたいのかな?折角貴重な『回復師』の存在なのになぁ?とか思ってしまう。


 しかしそんな物で良ければ本当に助かる。


 箱の中身で王様に渡ったあれ欲しかったなどと、後で問題になるより遥かに良い。



「良いですよ?何か僕の知っているレシピを一緒に作るんですよね?では美味しい食材があるのでそれ使いましょう!『ミノタウロス・ミート』が手に入ったので!!」



 と言うと、喜んでいた……女性だから将来はお店経営が良かったんだなぁ?とか思ってホッコリした。


 後で何を作るか考えておこう!



「遍く光の精霊と、慈愛と光の守護神よ、我等に光の恵みを与え賜え!祝福!!」



 箱の中に祝福を唱えると、すぐに失われた王国の銀食器(皿)『呪い』がボロボロに崩れて無くなる。



「すまぬな……モノクルで見ていたのだな……儂も知らなんだので勝手に手を出してすまぬ事をした。まさか呪いとは……かくも恐ろしとは!」



 そう言って王は僕にモノクルを返してくる。


 しかし臣下は僕に文句をどうしてのつけたいのだろう……



「陛下!ですがその物はその様なアイテムがあり効果があるならば、王様に渡しておくべきです!陛下の御身が一番でございます!!」


 そう言った瞬間シャインはガチでキレ始める。



「何を馬鹿な事を仰いますか!?ヒロ様の身に何かあったら如何なさるおつもりですか?誰が『秘薬』を持って来れたのですか?誰が『鉱山の魔物』を討伐したのですか?貴方は現場に居ないから分からないでしょうが、あの場で無事生き残るなど難しい事なのです!ダンジョンに潜ったことがありますか?全く!!」



 周りはシャインのキレ方にびっくりする。


 王の前でこれだけハッキリ文句を言える胆力も素晴らしい……とザムドもウィンディアも思い、王は……切れ方が妻のポラリスに似てるなぁと思っていた。


 しかしシャインの言葉で、山が動いた『アラーネア』だ。



「万が一だと………妾はその日のうちに、この王国を誰も住めぬ地にするぞ?そして当然誰も生かしてなどおかぬ!!!」



 アラーネアは箱の中身を覗き込んでいたが、手をかけていた箱の縁がメキメキと歪んでいき『バキバキ』と音を立てて破壊されている。



「妾からおにぎりを取り上げるものなど……この世には要らん……人であろうと……国であろうと……神であろうと……殺し尽くして喰うてくれる!」



 王と側近達はその様に青ざめている……しかし僕はおにぎりと同価値なのかと思ったので『おにぎりと僕は同価値なんですか?へー?そうですか?へー?』と言う。



「ち!違うのじゃ!妾は、其方がそれだけ大切であると!言いたかっただけなのじゃ!」



 あたふたするアラーネアだが、鍵士は皆に向けて言い放つ……



「次開けて良いですかな?皆様?」



 鍵士は壊れた箱をなんとも思っていないのだろうか……


 2番目は当然王様へのご機嫌取り箱のランクAの『階層ボス宝箱』で罠がアラームの奴だ。



「ふむ!これは本当に開けて平気なのだな?罠がかかったままでは無いか?』



 そう言う王様に僕はその罠の『逸話』を話すと、気になった様ですぐ様箱の上蓋に手をかけて開けてみる。



『ジリリリリリリリリリリリリリーーーーー』



 と鳴り響くアラームかなりうるさいが、本来なら此処で魔物が来る。



「………………………………誰も来ぬな?つまらぬ…………」



 王様は逸話の信用性を意外と楽しみにしていた様だ



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 金貨袋(120枚)


 硬く・硬い・モーニングスター


 ナイトシールド+1


 ポーション(大) 4本


 MPリジェネーション・ボトル 2


 太古の金貨


 宝玉のサークレット 


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 今度は王様は手を出さなかったので、モノクルをすぐに渡す……一応確認した『ふり』は必要だ。



 王様はモノクルを嵌めて中を見ようとするが…………



『ギギギギ……失礼致します……メンター様……陛下は?王宮から知らせが来ております………』



 アラーム効果だろうか?王宮から知らせが来て開封作業が暫し中断となるが、王様は大爆笑だった。



「いやぁ笑った笑った!これはポラリスに知らせなければな!ああ!中断してすまぬな!アーコム子爵がドクリンゴの手先であると判明したらしくてな……その連絡だった……どうやら儂が任せた王都の9番地区で悪さをしていたらしいのだ。やれやれ……楽しみの最中だと言うのになぁ……無粋で困る。まぁ後回しにしておいた!さぁ続きだ!」



 そう言ってアーコム子爵の一件を後回しにするので僕は、



「彼女はそこの子ですので、何卒平和に暮らせるようにしてあげてください。悪くも無いのに地上げを受けていたんですよね……土地代金貨150枚とか言って暴挙も良いところです。どっかの豪商に売り払うとか言ってたんですよ!」



 と言うと、アーチも頭を下げていた。



「ふむ!ヒロ男爵がまさに、それに確認をしたのだな?わかった!貴族の証人がいて伯爵位と男爵位を持つものが2名此処にいるしな……うむ!今すぐに手を打とう!彼奴は所領没収及び財産の国外移動禁止命令じゃ!監督者を付ける必要があるな!」



 そう言って一人の家臣に何やら話すと、家臣は部屋から急いで出て飛ぶ様に王宮へ帰る。



「今、アーコム子爵はドクリンゴへの金銭的協力者と我が意に叛いたと言う裁量をしたので安心せよ!其方の住んでいる孤児院は無くしたりせんからな?」



 そう言うと、アーチは孤児院に戻りたそうにするので、王様に言ってアーチが退出する許可を貰う。



「ヒロ!本当にどうも有難う!院長とちびっ子達に知らせてくるね!」



 そう言うと、凄い勢いで孤児院に向けて走っていった。


 その間にシャインの祝福を終わらせていたので、王様は太古の金貨と宝玉のサークレットをまじまじを手に取って見ていた。



「その金貨はなんですかね?一枚金貨ですよね?サークレットの方はハマっている宝石は宝玉っぽいですけど……」



 僕はサークレットの鑑定結果を言いながら王の興味が何故1枚の金貨ないあるのかが知りたいと伝える。



「む?おお!これか?これは稀にダンジョンから出る古い金貨でな!まぁ王族や貴族の収集品なのだ!年代が分かれておってな……今見た感じ我の知らぬ金貨なので相当古いはずだ、このモノクルで見る限り太古の金貨となっておるでな……貴族の間では相当値打ちが出るものだろう……例え割れていてもこの類は高いのだ!」



 そう王様は言うと僕に渡すので、鑑定スキルで見てみる。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


  原始の金貨 『初代王国製』


  現在の貨幣制度が確立する以前

 に作られた金貨。

  実際に使用された金貨と異なり、

 祭事の時のみ使用された特別製。


  細工は全て手掘りされた逸品。


  神気に覆われた、聖なる金貨。


  金貨の上方に裏と表に分ける仕掛

 けがある。


  コインを2枚に分けると効果発動


 特別効果「所持効果」


  ステータス LUKが77になる。


  表面 MAX・HP+50上昇


  裏面 MAX・MP+50上昇


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 僕は鑑定スキルの説明のままにコインの上を見ると、確かに仕掛けがありその部分を爪で弾くと二枚に分かれる様だ。


 王様にそれを見せると、王様は好奇心に負けて爪で弾いて二枚にしてしまった。

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