第352話「契約違反!?ギルドで王とアラーネアが鉢合わせ!?」


 当然その絡まれた理由は、銅級窓口でそっけなくしたアラーネアを追いかけてきたお馬鹿さんだが、総合窓口で『ミノタウロス50匹同時殲滅とジャイアント5匹は同時殲滅』を聞いて更に揶揄うつもりだろう。



 彼女が暴れれば此処は3分も持たない……カップ麺ができる前に焼け野原でカップ麺は出来上がりを待ったアラーネアの胃袋の中だろう。


 そして冒険者はダンジョンの畑の肥料だ……うん……エコだ!……いや違う……



「なんだお前ら!?この変なの2人の知り合いか?女連れとは良い身分だな?ヒヨッコ冒険者!」



 そう言ってモブAは僕を突き飛ばす……が、



『ズダン!!!』



 しかし代わりにモブAはギルドの床に、そのすごい音と共に這いつくばる。



 アラーネアでなく横の女性だ……その女性は滅茶苦茶強かった。


 僕を突き飛ばした腕を引っ掴み、冒険者を一回転させて床に叩きつけるお付き。



 アラーネアが規格外ならば、お付きも規格外だ。


 周りのモブBからFまでがお付きに襲いかかるが、攻撃を交わしつつ同時処理で次々にのしていく。


 ちなみにモブと呼んでいるのは名前を知らないからだ。



「コホコホ………ホコリが凄いの!!妾の事を埃まみれにする気か?お主は……全く!……首を千切れば良いのじゃ!簡単じゃろうが……」



 そう言って実践しようとするアラーネアを必死に止める僕とお付き。



「いやーヒロさん!有難う御座います!アラーネア様を止めるのも一苦労ですよ!まぁ文句は言えないんですが……」



 そう言うお付きの声には聞き覚えがあった……女性と思ったらやっぱり男性だ!


 この仮面男はドクリンゴの私兵Aでアラーネアの巣に引っかかってたモブGだ!!



 そう思ったが、あからさまに強過ぎる……なんでだろう?と思い聴くと、あの後巣穴に戻ってから下層階の畑に行ったそうだ。


 そして畑の側にいた魔物を片っ端から狩らされたらしい。


 糸で雁字搦めになった魔物を、片っ端から処理させられてそれが強制レベリングになり、そして畑仕事は朝までやったらしい。



 当然その間も魔物が来るので倒すわけだが、畑所有者のアラーネアは紅茶が楽しみたいらしく、糸で絡めるが処分は彼がやるとなったようだ。


 それも畑はアラーネアの屋敷と呼ばれる所から、下層に5階程続くらしく畑面積もかなり有るようで、野良魔物の遭遇率も高いらしい。


 野良魔物はアラーネアが育てた野菜を狙いに来るようだ……その結果、彼のレベルは既に42レベルにまで上がっていた。



 モノクルで簡易鑑定したら感謝されたが、僕の所有スキルと魔法は秘密にすると約束してもらった。


 まぁ話せばアラーネアが丸くコネコネするだけだろうし、そもそも彼が話すにもあの穴蔵の奥では周りには人がいない。



 畑はダンジョンの一角を使っていて、その周辺は軽作業小屋やら野良魔物のトラップやらを糸で仕切ったために、その周辺は階層変更が出来ないようになっているとの事だ……アラーネアの巣同様、下層の一部はアラーネアの出現範囲に指定されたらしい。



 当のアラーネアのレベルはわからない……鑑定など出来ないし、したく無い……



 なんで此処にいるか聴くと、彼の家族が『王都から退去』になったのだが『移動先に無事に着くか不安だ』と言ったら、『そうなったのは自業自得じゃろ!諦めろ』と言われたとか。


 そして地上の話や兵舎の話そして冒険者時代の話をしていたら、アラーネアは何故か冒険者証を作りに行こう!となったらしい……彼女は素直では無い……



 そして今現在は、おにぎりと味噌汁を僕から貰ってマジックバッグに全部詰め込んでいる最中だ。



「妾はここに来て良かったぞ!まさか今日もこんなに貰えるとは思わなんだ!何をしに来たのじゃ?主は?」



 とアラーネアが言うと、急に入り口方面が騒がしくなる。



「ユニバース陛下の視察で御座います!!繰り返します!ユニバース陛下の視察で御座います!!道をお開け下さい!」



 例のお付きが来たのだが……非常に不味い……箱開けてないし!!


 だが、しっかり王様に見つかった……



「待たせたな?ヒロ!それでどうじゃ!もう開けたのか?………うん?誰かの?貴女は?ヒロの仲間か?其方は本当に知り合いが多いな!」



 アラーネアはコッソリ抜け出して気まずいせいか、モブGは生きていることに申し訳がないせいか、軽く会釈をして済ます。



「すいません陛下、色々ありましてぇ……これから開けるんです……………」



 そう言うと、側近がクワ!っと目を見開く……『言わんこっちゃない!』と言う顔だが………



「そうか!そうか!いやぁ間に合ったか……執務を急いだ甲斐があった!だが、よく分かってるな?儂も同席して開けている様を見てみたかったのだ!宝箱が開く瞬間など儂は見れんからな!よく分かっておるな!流石はヒロだ……おお!しもうた儂とした事が……『ヒロ男爵』だったな!すまぬすまぬ!」



 総合窓口の受付嬢が王様の話にびっくりして、僕の顔を覗き込む……が……その瞬間、王様が側近に指示を出す。


 その言葉に、受付嬢は慌てて部屋番号を確認して席を立ち、後を側にいた控えの受付嬢に任せる。



「メンター!では儂とヒロ男爵を部屋へあないせい!」



 どうやら今日案内してくれた人の名前は『メンター』と言うらしい……睨み方からしてDメンターじゃなくて良かった。



「其方達も同席するが良い!仲間であろう?中身が気になるだろうからな!はっはっは!」



 王がそう言うと、うっかりアラーネアが話し出す。



「妾は……構わぬ……我が屋敷にて用事があるのでまた今度で………」



 その言葉と口調と声に『ギョッ』とする王様………



「お……お主は………あ!!あ………いや貴女は!!アラーネア様か!?どうなっているのだ?そんな身長と髪の長さではなかったはず……」



 そして横でのされている冒険者を見て、王様は愕然とする。



「ち!違うのじゃ!これは妾では無い!此奴ら雑魚の分際でヒロを突き飛ばしたから、我が餌の此奴がのしたのじゃ!妾は手を出しておらぬぞ!おにぎりに誓って!………あ!!え……餌は妾が食べたい時に食べるのじゃ!おにぎりがあるでな!今は……そう言う事じゃ!」


 王様もアラーネアとモブGもバツが悪そうだ。


 王様とすれば人間がけしかけたなどすぐにわかる、アラーネアとすれば約束を守らず出て来たところに偶然ヒロがいたが、まだ口裏合わせの話もろくに出来ていない。


 お互いアワアワしている。


 そこで王様が先手を打つ。



「いやいや……アラーネア殿は気にせんでくだされ……どうせこのギルドに居た、相手の力量が測れぬ冒険者がやらかしたのだろう?であればこれは致し方無い!寧ろ気分を害して無ければ良いのだが……王都が火の海は儂が困るからな!」


 アラーネアの機嫌取りでウッカリ王様はぶっちゃけてしまう事で、周りの目線がアラーネアに集中する。


 銀級冒険者にしたら噂の『S級冒険者』と勘違いした可能性がある……焼け野原は雛美の事件と直結する。



 そしてアーチは、王様の存在で既に白目だ。



 僕は王とアラーネアの両者に助け舟を出す。



「陛下!どうやらアラーネアは冒険者証を発行しに来たようです……ちょっと行きたい場所があるそうで、他の場所で割と必要になる『身分証』が欲しいようです。行く間は当然王都を『留守』にするとの事なので、その事を伝えに僕と話してたんですよ!」



 僕がそう言うと、『そうなのじゃ!!』とアラーネアは言い、王様は大いに喜んで『そうか!では早速作らせよう!S級で良いな?』と言ってしまう。


 それダメなやつ……雛美とは別な意味で完全な『Sクラスの魔物』が出来あがっちゃう……


 しかし、事を知らないメンターはヒソヒソと『有難うございます。流石はヒロ男爵様ですね!陛下の悩み全てをお見通しとは!』と言っていた……だが断じて違う!

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