第351話「王都冒険者ギルドの規模は段違い!!」


「スワン……部屋の確認と、鍵士の手配を。陛下もまもなくいらっしゃるはずです。既に時間をかなり浪費していますので、鍵士を先に部屋へ案内させておくように!」


 そう指示を受けたスワンは、急いでギルドの中へ向かう。


 王の側近は、一緒には来ないで王に到着を此処で待つようだ。


 だから僕とアーチは先に馬車から降りて王都のギルドに向かう。



「すげぇな!オークの両刃斧じゃねぇか!」


「お前こそリザードスケイルメイルじゃねぇか?それ!沼地に行ってきたのか?確かにダンジョンよりは確実だもんな!」


「エールが安いよ!今ならツマミ付きだよ〜!!」


「ブランワンパーティーのリーダー様、買取査定が終わりました!窓口までお越しくださーい!!」


「今日は良い儲け話は張り出してないな?仕方ねぇ!ダンジョンかノルマか決めねぇと!みんなどうする?」



 等と、様々な会話が飛び交う中を僕とアーチは奥へ進む。



 王都のギルドは円形な建物で壁には、駆け出しからSクラスの受付までが半円状に並んでいる。


 しかしSクラスの窓口は『閉鎖中』と書かれている。



 S級の冒険者である雛美は『死んだ事』になっているので、多分その結果が反映された証拠なのだろう。



 2階の階段は脇に何個かあり、上が冒険者貸出用の宿舎になっているようだ。



 ちなみに道具屋や食料売店、解体受付などジェムズマインにもある施設関係は、一階の各種受付を挟むように両脇にある。



 総合案内は入り口を入って一番奥にある……非常に勝手が悪い。


 入ってすぐに総合案内を作っておかねば、目的の場所に行くのに楽なのにと思うが……受付が一番奥なので結局行くしかないのだ!と思うと逆に合理的?なのかもしれない。


 建物は円形の建物が三つ連なって出来ているので、横には扉が有り双方の建物に繋がるがその扉の先がどうなっているのかは分からない。


 宝箱を開ける事ができる魔術結界が張られた扉がないので、多分両脇の建物のどちらかなのだろう。


 王都は当然冒険者が多いので、開封部屋も多く必要だそれに本館が万が一にも被害が出るのが困るからかもしれない……全て推測だが……。



 周りが僕らに興味を示さないので、今のうちにやっておく事を済ませる。


 何かといえば、アーチへの『流れ』の注意事項の伝達だ!……携帯を周りの冒険者に、ホイホイとは見せられないので最低限だが。



『アーチさん『流れ』って言う単語使うようですよ……僕らの事、そして珍しい存在のようです。そして伝えたい事もたくさんありますが、人の耳に入るのは危険なんです。冒険者登録の名前は基本偽名がいいみたいですが、名前は?』



 と携帯のメモ機能を使って知らせる…………すると返事を書いて渡してきた。



『成程!やっぱりそうなのね!孤児院の院長に話はしたの!でも(絶対に話すのはダメ!)って言われたから誰にも言ってない……冒険者で使った名前は愛称の(アーチ)だよ!よかった知らなかったよ!」



 と絵文字入りで返してくる……やはり年齢的には僕と同じで、見かけ通り女子高生くらいだろう。


 僕は次に何を書こうかと思いながら、騒然とするギルドを歩きながら総合カウンターを目指す。



 僕は携帯からふと顔を上げると、カウンターで揉めている女性と止めに入る男性が目に入る。



 窓口は銅級窓口だ。



「お嬢さん冒険者は向かないよやめときな〜がははははは!」


「横のはなんだ!?それでもお付きか?粗方貴族崩れか、貴族病か何かだろう?死ぬ前に屋敷へ帰りな!甘くねぇぜー冒険者は!!」


 などと言われている2人がいる。


 多分だが、感じ的には駆け出し窓口と銅級窓口を間違えて行ったか、総合窓口に行く前に銅級窓口へ行ったかだろう。


 冒険者ギルドは非常にガラが悪い奴も居る。


 悪い奴ばかりではないが、良い奴ばかりでもない。



 ちなみに絡まれている女性の方は腰まである目立つほど長い白髪で、身なりは鎧を着ておらずドレスだ。



 代わりに男性の方は普通の装備に身を包んでいる。


 腰には2本の湾曲した剣を下げ、装備も至って普通に見えるが……簡易鑑定の結果は全てが『レア装備』だ……ダンジョン産だろう。


 非の打ち所がない程の『逸品揃い』だ。



 窓口は銅級窓口だったので、周りの冒険者はその装備の良し悪しが判断出来ないのだろう。


 そして銀級冒険者などはそっちまで見に行かない……総合受付を挟んで反対にあるからだ。



 確かに装備の面で言えば、パッと見は派手さがない。


 上はプレートメイルに腰回りは革製装備で腿まで防御面があり、腕には革製の籠手に足は金属が一部に貼ってある動きやすそうなブーツだ。


 銅級窓口にいれば、周りの冒険者と一見は変わりが無い。



 総合案内に近づくに連れて、そんな彼等の会話が聞こえてくる。


「なんだ?お主ら?ちまちまと雑魚相手に戦っていたら時間だけが無駄であろう?だからこっちに来たのだが、まさか銅級の窓口さえもダメなのか?装備を見れば力量程度は一目瞭然であろう?」



 その言葉の使い方に聞き覚えがあって見るが、格好からして全く別人だ。


 そもそも僕が知っている人『魔物』は僕が渡した異世界産の服に身を包んでいる。



 それに王と約束したので単独でここにいるはずが無いし、そもそも彼女にお付きはいない……話し相手をそれに含むなら別だが。



 男の顔も女性の顔も、残念ながら此処からでは反対を向いている為に見る事ができないが………まさかな……と思うと、男が偶然こっちを向く。



 なんとその顔には仮面が着けられていた……男性ではなく女性だ………


 冒険者の中には、冒険中に顔に火傷を負ったり傷を負ったりして仮面をつける事が有るが、そのほとんどが『女性』と聞いた事が有る。


 シャインも背中の傷を気にして、鉱山では背中にはマントを着けていたが、今は背中が空いて肌が見える装備を好んでつけている。


 女性冒険者の装備デザインはファッションであり、一つの凝り要素だろう。



 横に居るのは男性のお付きと思ったが、実は女性だった。


 髪は多分結って兜の中だろう、戦闘中に邪魔にならない様に……



 鎧は多分ダンジョン産だろうから、胸の部分の特殊形状『女性限定装備』などは入手確率も低いだろう。


 わざわざ女性用を探さない限りは、大概は共用品になるだろうし………



 ちなみに顔全体を覆うマスクは目が三つ有る悪鬼の様だが、全面に細かい金や銀の紋様がされカーニバル用の様な感じでいてとても高そうだ。


 まぁ話し方など貴族であればどこも同じだと思い、僕は若干アラーネア恐怖症になりつつあると感じながら、アーチと総合窓口へ向かう。


 僕は目の前の総合窓口で先に向かったスワンが何処にその部屋を借りたかを聴く。


 僕は王都は初めてなのだが、向こうとすれば冒険者という事で多分周知の上と思っているのだろう……残念だがそうではない。異世界人で何もかもが初めてだ。



「すいません!宝箱を開ける場所を借りていたんですが、スワンさんという人が借りているはずなんですが、何処へ行けばいいか分からず、此処に来ました。場所を教えていただけますか?あ!これが僕の冒険者証です」



「すまぬな!妾にちょうど良い冒険者証を発行してくれぬか?魔物はそうだの……ミノタウロスならば50匹まではひとなでで殲滅できるぞ!ジャイアントだったら同時に5匹は倒せるぞ?」



 同時に受付に話し出してしまった……


 まさか先ほど見た2人が総合窓口に来るとは思いもせず、周りをうかがわずにいきなり話してしまった。


 向こうも僕が同時に話したのに、びっくりして僕を見ると……



「おお!ヒロではないか!偶然じゃの?どうしたのじゃ?妾は冒険者証なる物を発行しに来たのじゃ!でもなんか面倒だの?コイツらのやる事は……お主どうにかできんか?」



 偶然じゃなかったし!!アラーネアの見てくれが違うのは………なんでなんだろうと思い聴こうとしたが、その間もなく僕たちはガラの悪い奴らに絡まれた。

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