第315話「二足歩行のネズミが落とす物…チーズじゃ無いのが残念です」

兵士の彼が幸せを噛み締めている間、僕はダンジョン効果で変わったアイテムを集める。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 洞窟の地図 1

 ラットマンの爪 5

 ラットマンの耳 2

 ラットマンの尻尾 2

 銀貨 10枚

 銅貨 50枚

 小魔石 19個

 中魔石 4個

 土の中魔石 1個


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



「地図?……ラットマンが落とした……あった場所的にドロップはジェネラルラットマンかな?」



 それを聴いた兵士が中を覗き込む。


 地図をまじまじ見た後、何も知らない僕の顔を見てため息を吐きながら話し出す……



「知らんのか?『宝の地図』だ……稀に魔物が持っていたりする地図さ。『その場所には『宝』があるんだが、同時にそこは『ダンジョン』でもある。充分装備を整えてから向かえよ?」



「ウッカリ軽装備で行くと死ぬぞ?俺達みたいに………それにしても……なんでこんな事になったんだかな。あのドクリンゴって言う貴族の甘い言葉に騙されなけりゃ……こんな悪事に足突っ込まなかったのによぉ……」



「冒険者やめて妾の様な王族の私兵になれ!って言われりゃ……誰だって飛びつくだろ?始まりは良かったが……だんだんきな臭くなってな……最終的にはこの様だ」



「陥れの手伝いや、貴族の裏切り者探し……汚い汚れ仕事ばかりだ。裏事情知ったからには、逃げたら貴族に追われて殺される。だが逃げなくても、結局ダンジョンやら戦争参加やらで殺される」



「高待遇は初めだけだ。貯めた金は、今度は自分の家族を守る為に使わないとならん……お前は絶対甘い言葉に乗ったりすんなよ?」



 しみじみと彼はそう話した。


 さっきの嫌な話し方は自棄であって、コレが本当の彼なのだろう……そんな彼はまだ話を続ける……



「久々に冒険者の真似事やって楽しかったぜ!まさか……魔物と仲良く話す奴が居て……ソイツと一緒に冒険するなんてな………夢にもおもわねぇよ!」



 その兵士は僕を見ながら笑いつつ、アラーネアにも笑いかける……さっきまでの恐怖を吹っ切った様だ。



「ふん!じゃがな、物は考えようじゃろうが?お前はその兵士って貴族の所有物になったからこそ、この妾と会った訳じゃ!そして捕まった……死ぬ運命だった者は既に畑で肥料じゃぞ?お前は生き残った『強運』があるのじゃ」



「そして捕まったからこそ『今』があるのじゃ……妾とて遥か昔は『魔物』になどなるとは……思いもせなんだ!馬鹿な父上が儀式など行うからこうなった……恨んだ事もあったが、じゃが……お陰でこの坊やと会えたのじゃ」



「妾ならば……死刑になったとしても、この坊やの様に『吹き抜け』から落として貰うがな?運が良ければまた、あの巣に今度は『お前が引っかかり』妾と出会うじゃろうて……それも運次第だがな!」



「あそこの吹き抜けには吸血蝙蝠がおるでな!運良く落ちて魔物に当たらず、妾の巣に引っ掛かり地面に到達せなければ………条件次第で助けてもらえるかもしれんぞ?この坊やの様に……妾にな……」



 そう言ってアラーネアはさっさと先に進んでいく……



「なぁ……魔物って本当に悪い生き物なのかな?俺には……だんだん判らなくなってきたんだが。お前やあのアラーネアって言う元貴族見てるとさ……まぁお前は『魔物』じゃないが……」



 彼もそう言って、アラーネアの後ろをついていく。


 そんな事を言われても、僕には全く判らない……そう思って僕は2人を追いかける。


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 彼が言っていた問題の『偽の階層主の間』に迄辿り着いた。


 ジェネラルラットマンの率いる24匹の群れを倒した後、運が良いのかそれとも部屋の関係なのか……全く魔物に鉢合わせはしなかった。



「いよいよだな……俺達『貴族の私兵団』はここの間に3度来た……1度目は半壊で逃げ帰った……2度目はなんとか倒して1/3の同僚を失った……3度目は充分に装備を整えてきて死者は3グループで2名だった……」



「ハッキリ言うぞ?無謀だ!……その彼女が俺たちを助けない限り……勝ち目はないだろう……本当に行くんだな?」



「ここの魔物は再度現れるのに『24時進』かかる……あの腐れ貴族のドクリンゴが何かを焦って、更に私兵を送れば………運が良ければ無戦闘で帰れるかもしれんぞ?」



「当然『王への謁見』は叶わないだろうが……お前は少なくともここで死なずに済むぞ?……上に行ったらコッソリ王城から逃す事も俺なら出来る……それでも本当に行くのか?」



 どうしたのか……先程から彼は人が変わった様に親切だ。


 何か変な物でも食べたのだろうか?


 一応此処についてから『ココア』で一服したいとアラーネアが言うので、3人で飲んだが……親切に様変わりする飲み物では無いはずだが……ココアは……



「ひとまず僕とアラーネアさんだけで入ってみますので、貴方はここで待ってて下さい……多分アラーネアさんが本気を出したら僕もあなたも邪魔になる……」


 僕は最悪『水障壁』と水槍撃がある。


 危険な時は自分だけ守って外に出て来ればいい……アラーネアには悪いが彼女は多分問題なく勝てるだろう……



 寧ろ彼女だけに任せてもいい感じだが……


 まぁ……僕たちのダンジョン脱出に関わる事なので、彼女には無関係だから僕達のどちらも出ない等、そう言うわけにもいかないが……


 異世界製品渡したことで、無理にお願いすれば聴いてもらえる気はするが、僕が参戦しない以上『宝箱』の期待が出来なくなるのはまずいと思う……最低限僕は行くべきだ短時間でもだ。


 アラーネアのご機嫌をとって、この後の『階層ボス本戦出場』まで繋げないとまずい……


 なぜならば『偽物』の階層主が『本物』の階層主より弱い筈がない……彼女にお願いするのは其方側であるべきだ。



 それに出合頭の水槍撃を狙えばかなり有効打な筈だ。


 その話の後、彼が参戦すると言っていたのだが、アラーネアが邪魔だから外にいろと言う事になった。


 アラーネアが言うには、彼がいることが僕の足枷になりかねないとの事だった。



「じゃあ行ってきます!」


 僕は短く彼にそう言う……


「死ぬなよ!!……まだ死ぬには……お前は絶対早いからな!!」


 彼の言葉を聞いて開けた門から中に入る。



「水槍撃!!!うぉらぁぁぁぁ!!」



 僕は中に入ったあと、魔物を目視した瞬間『鑑定』もせずに水槍撃を最大本数の最大威力で放つ。



 目の前に居た魔物はかなりデカく、部屋の中程まで身長がありかなりの巨軀だ……初めはジャイアントとも思ったが、何となく違う感じがする。


 人間寄りではなく、もっと別の『何か』だと直感で感じる。



 僕の放った魔法の水槍は、誰よりも早く魔物に到達しそうだった。


 だが目の前に居た魔物は、偶然真正面に抱えて持っていた『巨大で刃の面積と厚みのある武器』で、その魔法の初撃を受ける事になった。


 『ゴワァン……ゴワァン……ゴワァン』と幅の広い刃に当たる。


 だが、見た限りは手入れをしていない武器で錆が浮いている状態だったのに、実に水槍8発目でやっと砕くことができた。


 その後の刺さった水槍は2発だったが、その巨大な体躯に突き刺さり更に爆散時の衝撃でダメージを重ねていく。


 敵のHPは既に3/4は無くなりあと少しと言う所で『鑑定』をかけてから、ウォーターバレットを撃つ。



 僕は勝った!と思ったがそうはいかなかった。


 この『ブッチャー』ギガント・トロールと言う魔物の表示中の簡易ステータスには『再生中』の文字があったのだ!!

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