第310話「異世界製品とアラーネア」
「実はその通り『流れ』なんです……そして以前箱で同じ物が出たことがあって……その時は一人でダンジョンに潜ったせいだと思ったのですが……今はアラーネアさんにあの兵士も居るので何故出たのか……と」
「出るものは異世界製品であって、この世界の物は混ざってないんです。まぁ食べ物だったり……道具類だったり、箱に入る物に限られるのでしょうが、異世界品である事は確かでした」
今の僕が不思議に思っている事をそのまま告げると、もっと噛み砕いて説明してくれた。
当然『可能性』の話であり断定はできないが……
「祝福の箱は文字通り『アイテム』を祝福して、手に入るアイテムや装備品のグレードを上げる効果があるのじゃ……だとすればお主の様な『流れに合わせた』異世界品にグレードが上がると考えれば……」
「異世界の祝福もあり得るのかも知れんな?妾の時代にも稀に『流れ』が突如として現れる事があったが、宝箱の事は聞いた試しは無いぞよ?試しにその箱を開けてみるが良い!妾も見て見たいしのぉ?」
「因みに箱が出た理由は『妾が魔物』である事と、あの者は『パーティーメンバー』では無いじゃろう?地上から出たらお主の自由じゃが、このダンジョンではそうでは無い。お前にくれてやるのは、あの馬鹿者が妾の逆鱗に触れずに地上まで行ければ……の話じゃ!」
「あくまであの者は『妾の持ち物』じゃからな?お主とて勘違いはするな……あの様な痴れ者は我ら魔物にとっては『餌』じゃ!魔物じゃと言っても元は『王家の人間』じゃからの。当然だが不敬罪は適応するぞ……王族に楯突くのだ!当たり前じゃろう?」
最後の方は若干的を外した内容だったが……要は彼は『パーティーメンバー』でない人間であり『ダンジョン』では、持ち主が決まっている場合『人間』であっても『物扱い』になると言う事だろう。
だとすれば、僕単体でダンジョンを冒険しない限りは出現しない箱になるかも知れないと言う事だ。
何度かダンジョンを経験すれば、その違いを見出せるかも知れない。
そして問題は『罠がかかったまま』の箱を今アラーネアが破壊しようとしている事だ。
「妾ならば多少の毒や爆発にも耐えられるから開けてみよう!『転移罠』は諦めるしかないの……転移先が地下水脈だけは勘弁して欲しいがな……あれは妾も流石に苦しいのでな……」
「ちょっと待ったー!!僕らは毒でも死にますし、爆発は耐えれません!転移先が地下水脈だったら間違いなく『溺死』確定ですから!僕は罠解除用の罠外しの捻れた鍵(金)を持ってますから、絶対に僕が開けます」
僕はトロールトランクLを罠外しの鍵で解錠する。
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徳用4リットル・ウィスキー『簡易包装4本入り』1ケース
チョコレートアソート 業務用(1kg) 4袋
モチモチ餃子の皮 業務用(50枚入り30パック) 1ケース
NIKO製ハイヒールスニーカー(赤) サイズ23.5 「箱入り」
単3乾電池 10個パック 4個
コスプレ用 学生服
業務用 ミルクココア 1kg 3袋
プラズマライター
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「え?なにこれ……ライター?プラズマって書いてあるな……それとウイスキー??乾電池に、チョコレート?……餃子の皮にミルクココア……殆どが業務用?……コスプレ用の服?と、お!靴だ!!それもNIKO製の!」
「なんじゃなんじゃ!妾も気になるのだ!見せよ妾も見たいのじゃーー!何じゃその服は!女物じゃないのか?ちょっと妾に貸してみよ!」
「ちょっと!アラーネアさん!ここで着替えるのは………痛って!!蹴らんでも見ませんよ!!」
僕からコスプレ用の学生服を引っ手繰ると、アラーネアは恥ずかしげも無く着替えるのかと思ったら、止めようとした僕を蹴っ飛ばす。
慌てて僕は反対を向くが、蹴るくらいなら少し行けば小部屋なんだから、着替えるならそこまで行って欲しいものだが……と思う。
「おお!誂えた様にぴったりじゃ!これは妾にくれても良いんだぞ?」
「くれるも何も……もう着ちゃったじゃないですか!今更返せなんて言いませんよ、全く……それは差し上げます。箱の情報料って事で!それより僕は靴が気になるんです。好きなメーカーなんで」
「本当にこれをくれるのか!?言ってみるもんじゃな!……ほほほ!異世界の服とな!着心地も良いの?自分の糸で作った妾の作った服など比べ物にならん!それにこの世界の服もこの様に滑らから触り心地ではないぞ?良いのか?これであれば高く売れるじゃろう?」
アラーネアは本当に貰えるとは思っていなかった様で、これから着替える為に今まで着ていた自分の服をひっくり返してホコリを叩いていたが、僕の一言に驚いて手を離すとドレスがバサバサ音をたてながらぶっ飛んでいく。
どんだけ驚いて力いっぱいにぶん投げたのだか……
問題は今までの服は『巨大蜘蛛』になった時に邪魔にならない仕様だったが、異世界の学生服はそうではない。
まぁ、僕の知ったことではないが……
「良いんですよ!異世界の物売ったらバレたら自分が困るじゃないですか!でもサイズ的に蜘蛛になった時に破けるかも知れませんよ?……あれ…これ女性用の靴だ……はぁ……残念」
「それは大丈夫じゃ!太腿の中頃から蜘蛛化すれば済むでの……ほ?……何と!女性用の………ちょっと見せ………な!なんて素晴らしいデザインなのじゃ!極めて綺麗な赤に黒!そのヒール……ちょっと履かせてくれんかの?」
「良いですよサイズ的に履けるなら差し上げますよ。サイズ的に僕は無理だし。そもそも女性用の靴なので……女性用の履く趣味ははないですから。ああ!箱見れば外に書いてあったなそう言えば……はぁ」
「はははは……凄い残念そうじゃの?まぁお陰で妾は貰えそうなんじゃが!!ちなみに……これはどうやって履くのだ?」
僕は靴の紐を緩めて履き方を教える。
たしかに物欲しそうに見ていたのだが、よく見ると彼女は靴を履いていない。
「妾の糸でも靴を造るのは面倒での……何度か挑戦したのだが……何というか……時にバラけたり重心がおかしくなったりで最近は諦めておったのだ!」
「こんな良い物を貰える日が来るとは!お主は良くあの穴から落ちてきてくれた!妾は感激じゃ!」
そう言って年齢不詳の一見同年代のアラーネアにハグされるが、身体がその瞬間からミシミシ言っているので『是非辞めて』頂きたい!
まさかハグしながらバラバラにして、例の畑の肥料にする気なのだろうか……
「アラーネアさん……バラバラになっちゃう…………苦しい………」
「あやーーーすまぬ!すまぬ!ついほんのちょっと『力を込めて』しまった!妾とした事が感激のあまりウッカリしてしまった!」
学生服に赤黒のスニーカーヒールと言う出立ちに変わったアラーネアさんと、中身を見ながら其々がどういう物かを説明する。
チョコレートに凄く興味を持っていたが、蜘蛛はチョコを食べると酔っ払うと言う事を聞いたので辞めておくことにした。
……理由はカフェインが何とかと言ってた気がする。
万が一酔った後に何をしでかすか分からないのと、彼女の大蜘蛛になった時に対応手段がないからだ。
危ないチョコレートはすぐにクロークへしまう。
変わりにカフェインがほぼ入っていないミルクココアをご馳走すると言い、コスプレ用の袋に入ってた台紙を燃料にプラズマライターで火をつける。
部屋の中には木材片や瓦礫などが散乱しており、木材片をアラーネアに集めてもらう。
ご馳走するコップは冒険者セットのコップだが、貴族に使わせるにはちょっとばかりデザインが悪いが、其ればかりは我慢してもらうしかない。
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