第236話「太陽のエルフと伯爵一行」
『街を追い出された太陽のエルフ達』
太陽のエルフの戦士五人はジェムズマイン街から村まで移動をしていた。
理由は複雑で、外で親衛隊の伝令を待っている際に例の『少年』が街の貴族専用門から出て来た。
これは思い知らせるには良いチャンスと思い、旅団が近くに来るのを待っていると予期せぬ事が起きる。
何故か昨日自分達を捕縛した『大地のエルフ』達までも一般通用門から出て来て、少年の行動を監視している姿を運悪く確認されたのだ。
しかし見られたところで町の外だ……街の住民には危害は無い襲ってはくるまい……と、太陽のエルフ達は大地のエルフなど気にも留めなかった。
大地のエルフがした昨日の行動については、彼等と街の住人との盟約で縛られた結果、人里での守護契約の為に攻撃をしたと誤解していた。
守護対象は『自国エルフ国の姫』だと考えが至らなかった。
そうたかを括っていたが、向こうはまたもや自分達に蔦呪文をけしかけて来た。
その為に慌てて戦士達は一度その場を退いた。
相手はフォックス国王の親衛隊6名だ……自分達など叶うはずがない。
しかし彼等は誤解している為に大地のエルフの行動が不自然でならなかった……何故アイツ等もエルフなのにあんな人間などを街の外でも護衛するのかと……。
しかし、自国の姫の事が抜けてしまい、その上負けた事実まである。
このまま引き下がることはプライドが許さなかった。
スライムに負けたことが受け入れられずに曲解した結果を伝えた事で、それを仲間が信じたが為に起きた一連の事なのだが、人間に良い思いを持っていない為に誤った方向に事が進んでいくばかりだった。
その旅団の進行方向と、状況から判断して王都へ向かうのは間違いが無い。
ならば先回りしてチャンスを狙い、タイミングを見てあの人間共にはエルフと人間の格の差を見せてやろうとしていたのだ。
その後に、太陽のエルフ護衛隊と合流して大地のエルフ達に今までの謝罪させる事まで織り込み済みだった。
エルフと言えば高貴なイメージがあるが、エルフの王国に住む住民の全員がそうでは無かった。
閉じられた環境で間違った知識だけ得た結果、間違ったエルフが誕生したのだ。
どこの世界や環境にも同じ様な者が居るもので……彼等はその様な典型であった。
彼等は村まで行き村の立地を探り予定を立てていた時に、夜だと言うのに人眼を忍んで村から出て岩場へ向かう、怪しい動きをする人間をみつけた。
不穏な行動が気になり後をついて行くと、何やら人間同士争う様なのだ……それも相手は自分達が今一番ギャフンと言わせたい相手がいる旅団だった。
彼等は『同族で争うなど……これだから人間は野蛮で利己的で仕方ない生き物だ』と自分達を棚に上げて嘲笑っていたが、どうせならこの場を利用しようと考え始めた。
その結果、彼等が強襲したのを見計らって乱入して、双方収拾がつかなくなるくらいに戦場を掻き乱してやろうと彼等はしたのだ。
決行日は既に日が暮れた以上、村から馬車が出ないので明日しかない。
朝になったら適当な時間にここで様子を伺っているだけで勝手にその時はくる……間抜けな人間達を掻き回すだけで勝手に自滅する。
彼等は全員そう思っていたのだ。彼等にとってこの行為は所謂、街で起きたことの憂さ晴らしだった。
しかし事はそう簡単には運ばない……彼等は大地のエルフと人間が共に行動し続けると思っていなかったからだ。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
『村に宿泊した伯爵一行』
「さぁ!皆の者準備は良いか?では王都へ向かおう!」
その伯爵の号令で中継地点の村を出発する。
僕達はこの村では貴族用の宿泊施設から出る事はしなかった……と言うより出来なかった。
出て仕舞えば間違いなく怪しいからだ。
「伯爵様……私達商人はこの村で商いをしたのち向かいますのでお別れとなります。一晩安全に過ごせたのは、伯爵様のお陰で御座います。またこの先、追いつく事ができたならば野営での食事提供を皆様方にさせて頂きますので、その時はよろしくお願い致します」
マッコリーニ達は食材を購入してからと言った。
理由は、エルフ一行と同業者2組の飯も振舞ったので予定以上に食材を消費した様だ。
これは、マッコリーニが積み荷の内容を知らないが為に言った言葉だ。
男爵は伯爵に代わり村を出てすぐ皆に言う。
「この道を1時進歩くと『岩場』に辿り着く……王都までの路程で一番人目に付きづらく襲いやすい環境だ。よく盗賊団や野盗が罠をかける場所で有名だ。その先はほぼ平野が続くので襲い辛くなるのでチャンスはその辺りだろう」
伯爵は勿論男爵もエルフ達には王都へ行く理由を伝えていないが、エルフ達には些細な問題でしかないのだろう。
昨日から度の理由も積み荷の中身も聞く気も無い様だった。
半刻程進むと、エルフ達が何かを気にし始める。
「ふむ……この先の岩場にかなりの人数が待ち伏せしている様だ。焼け焦げた匂いからして野営をした様だな……向こうが風上だから焚き火に使った焼け焦げた木々と焼いたであろう食材の残り香で嫌でもわかる。そして混じる匂いからして人間だ……このまま進まず少し開けた地形沿いに移動したほうがいいぞ?伯爵殿」
その言葉を聴いた伯爵と男爵が気合を入れる。
「うむ……森エルフに方々がいて本当に良かった。この距離で感知することが出来るとは……さすがエルフですな!間違いなくこれで目的が果たせるぞ!無事この荷物を奪わせるのが目的だ……皆いいか!抜かるなよ!?」
「エルデリア殿と、他の森エルフの方々はこの護衛馬車から少し離れて着いてきてください。理由は今は話せませんが、後で事情は説明します。なので『我々が襲われても』決して手を出さずに『敵をワザと見過ごして』ください」
そうすると不思議そうな顔をしつつ了承する。
「うむ……基本的にはエルフは人間同士の諍いには参戦してはならない決まりがあるからな……特別な理由がない限り参戦はせぬよ。」
「だからこそ今、待ち伏せする者を申したが……周知の上で貴方達は罠を張ったのだな?面白い!是非後で理由を教えてくれ!」
エルフのエルデリアに言われた伯爵と男爵は、物が物だけに詳しく話せない内容のせいで苦笑いをする。
エルデリアが警戒しろと言った方向には、進むに連れて確かに『空間感知』に引っかかる対象が複数いて感知領域が前に進むに連れて反応が増えていく。
街や家、ダンジョンがある訳でもない場所に、多くの『人の反応』がある。
感知持ちの冒険者が居る以上こんな手は愚策でしかないと思うが、マジックアイテム頼りなのだろうか……であれば過信し過ぎている気もするが。
そんな事を考えつつ僕らは注意しながら前進し、エルフ達は隊列の後方に下がる前に伯爵達に声をかける。
「伯爵様に男爵様……御武運を!決して無理はなされるな」
そう言って離れていくエルフ達。
彼等は大地のエルフの国王直下の親衛隊だ……一緒に戦えば間違いなく『荷物』を守り切ってしまうだろう。
そうなれば『ヤクタ男爵』のやった魔導士学院での罪は暴けない。
万が一マッコリーニが追いついた際、彼等がいれば壁にもなるので伯爵達はエルフ達を後ろへ下げたが、人間の争いに加勢出来ないのは盲点だった。
いよいよ男爵にとっては子供達に絡む因縁の対決に決着がつきそうだ。
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