第235話「招かざる者の謀略と、欲望に魅せられし者」
朝食はマッコリーニが連れて来ていた踊るホーンラビット亭のコック達が、出発前に支度してくれたのでそれを全員で食べた。
食材は日持ちが長持ちしない生肉から扱っているようで、マジックバッグ(大)から持ち出していた。
意外にもエルフ達も普通に肉を食べていた。
勝手なイメージで肉は食べないとか思っていたので質問したら、肉を頬張りながら『肉も魚も全然食べるぞ?これは美味い!おかわりは頂けるのかな!?』と普通に返された。
エルフに飯を出したことが無い、コック達は食べた感想を逐一聴いていた。
朝食後に出発したが、時間にしてあさ7時にはキャンプを畳んでその場を後にしていた。
その後5時進進んだあたりで休憩を挟んだが、時間は12時(正午)ともあり何か胃袋に入れたかった僕はクロークにしまってあった宿屋の主人お手製のサンドイッチを食べていた。
その間エルフ達は何やらポーチから取り出して食べていたので聞いてみたらエルフの携帯食らしい。
森で取れる木ノ実を擦り潰し、そこに調味料と魔力を練り込み焼き上げた物の様だ。
僕が気にしていると、サンドイッチが気になっていたらしく人数分ちょうど残っていたので交換してもらった。
皆が見ていたが余りにも気になったのでコッソリ鑑定してみた。
この名前は誰がつけたのか非常に気になった。
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・エルフのマリョクッキー『食料』
錬金可能・マジックアイテム(食材)
『食用期間 1天 ※腐敗・劣化遅延効果』
苔ナッツとピースタチオに魔力水を馴染ま
せ練り上げた焼き菓子。
腹持ちが良く、空腹をかなりの時間満たす
事ができる。
常時摂取する事で『魔力の最大値』を稀に
上げることが可能。
・摂取時 1MP限界値UP(極稀)
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ごく稀にMPの総合値を上げられるらしい。
基本的にはこの食材がエルフの主食になっているらしく、これを100年近く食べ続けていれば魔力の最大値が相当上がるだろう。
仮に3回摂取と考えると1年だとすれば1095食だ。
下二桁でも95MPも最大値が増えることになり、その分他種族より魔法が使えるのだ。
まぁ一日2食が多いこの世界では、どれ位増えているかは細かく情報収集しなければ分からないが……。
エルフ達もサンドイッチをすごく気に入ったらしく喜んでいた。
特に野菜のピクルスが好みの様だ……なんかエルフっぽいなと安心した。
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出発した時は伯爵の指揮する『秘薬護送隊』が先頭で進む時間にして半刻位後にマッコリーニの商団が後を続く感じだ。テッキーラーノ商団と氷菓屋が離れない様について行く感じだ。
テッキーラーノ商団と氷菓屋はすでに何かを感じ取っていた。
今このマッコリーニを逃したら『損』だ………と。
しかし大商いであれば全貌を明かすことなど出来ない……だからこそ団長はとにかく金の気配を感じ取る必要がある。
だからこその先行ではなく『後から追う』を選択した。
王都とジェムズマインの間には村が一つあり、王都を目指す商団などはそこを利用する。
当然、前回王都へ行った伯爵もこの街を経由する。しかし帰りに急いでいた伯爵はこの村を素通りした……先を急ぐ場合はここで宿泊せずに一気に駆け抜ける。
村周辺は安全性が幾分かマシなので馬車をかなり進められるのだ。
そのかわり、確実に野営となるので、疲れは溜まる一方だが。
『中継地点の村』と『ジェムズマイン』間は約三日の距離だが、村周辺は周辺はほぼ平野で中継地点の村から少し行った場所が岩場になっているくらいだ。
ジェムズマイン周辺は平野と山岳地帯と森林地帯の一部なのだが、村に向かう経路は平野が占めている。
その為に今回の様に『エルフ』が遠方から射撃で倒してくれた場合は、安全を確保できるのでかなり早く村に着くことが出来る。
そして運の良い伯爵達は二日目の夜に、その中継地点となる村に到着することができた。
「皆の者助かった。特にエルフの視野は素晴らしいな!3日の所をなんと!2日の夜には着いてしまった……本来ならば考えにくい事だが、まぁ到達したのは事実だ。今日はこの村で宿を取る」
「この村には貴族用の宿泊施設を作ってあるので今晩はゆっくり休める筈だ!エルフの皆も是非遠慮せずに今日は羽を休めて貰いたい。」
そう言って、伯爵が僕達を連れて行ったのは村にはそぐわない大きな屋敷だった。管理はこの村の住民がしているらしく、ザムド伯爵が王都に遠征する機会が多いので折角なので作ったらしい」
確かに考えれば、貴族なのだ何かあったら困るので、宿屋に泊まるよりは安全が保たれるだろうし、宿側としても有難いはずだ。
本来僕達は冒険者なのでこの場合は宿にとなるものだが、今回は『運搬護衛任務』なので荷物から離れることは許されないし、そう言われても荷物から離れるべきでは無い。
まぁ荷物は『偽物』だが……
マッコリーニ達は伯爵の施設に来るわけではなく当然宿を別に取る。この場合は『護衛任務』のエクシア達が交代で荷物番をするのだ。
その頃中継地点の岩場付近には動きがあった。
ヤクタ男爵は夜のうちにこの村を抜けてしまい、この先の岩場で罠を張るつもりだった。
この周辺は王都に向かうに連れて暫くは岩場になっているので、そこに潜み強襲するのだ。
そうすれば一見は野党による襲撃と思わせることができるからだ。
村の入り口を通らず迂回して岩場に入り込み、野営の準備をしつつ数名の騎士に村まで酒を買わせに行く。
この役目は自分に忠誠を尽くすものから選んだ……当然その者達は金に目が眩んで、ヤクタ男爵の臣下を『自分から』選んだのだ全貌を話す事に問題はない。
村に使いに出す時の格好は、当然一般冒険者の様な装備をさせて誤魔化す……この場所は強襲場所として計画済みだから準備は万端だ。
酒に関しては襲撃前に皆に振る舞うことで、英気を養わせながらもついでに村の様子を伺わせる為だ。
戻って来た騎士二人に村の状態を聞くヤクタ男爵へ、兵士たちは見て来た事を漏らさず話す。
「村には伯爵が使用する施設に護衛隊の全員を呼び、酒を振る舞っていると村人が言ってました。それ以外は変わった様子は無く予定通りの様です」
「施設を見た所、護衛隊の数人で常に馬車の荷物を監視している様です。馬車は施設に横付けされていましたが、荷台に目的のものがそのまま放置されているとは考え辛いです」
「村内部では特に変わったことはありませんが、伯爵の護衛馬車を追いかける様に商団馬車が三つ程村に滞在した様です。調べた所、いつもの様に連合商団を組んで王都へ向かっているグループでした」
「商団はマッコリーニ商団にテッキーラーノ商団と氷菓屋でした。ここは毎回遠征時に何かがあれば声を掛け合い共に行動する商団の様で、村人は物資の買い付けや特産の売り込みに励んでいました。」
「奴等にの行動は毎度の事らしく村人から色々商材を買い漁っていましたが……明日は奴らも一緒に襲いますか?」
騎士団員とは思えない発言だったが、意に介さないヤクタ男爵は……
「商団を襲えばそれだけ時間のロスになる。アイツらは絶対に出発時間は合わせないはずだ……伯爵家の馬車を追い越せば後で問題になりかねんし、だからと言って並走すればそれはそれで不況を勝った場合後が怖いと言う」
「我が家にも専売特権の商団が出入りしているが、その様に言っていたしな!だからアイツ等を待っていたら機会を逃す……ここから4日馬車を走らせれば王都だからな!」
「万が一にもこれ以上は王都へ近付かせる訳にはいかない。伝令を逃せば我々の命も危険だからな。狙うは伯爵のみだ」
「ひとまずお前達はその商団馬車が先に進まない様に足止めしろ。だが決して手を出すな……万が一問題が起きれば全員打首決定だから気をつけるんだぞ!足止めだけ確実にするんだ出来れば2時進、困難だった場合でも1時進だ」
「お前達は足止め後は合流地点に先に向かうんだ!決して王都側に向かう門を使うなよ?足取りでお前達が疑われるからジェムズマイン側から出て迂回しろ!ポーションも念の為に持って行く事を忘れるな。途中で遭遇する魔物は相手などせずに振り切ってこい……いいな!?」
ヤクタ男爵は調査に行った彼等にそのまま宿代を渡し、村に宿泊して明日に備える様に言い渡す。
いよいよ入念に準備した彼の『秘薬護衛隊』の強襲が始まる……
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