第196話「一年かけて再生とか長すぎると思ったら喜ばれた件」
先程と同じ説明を伯爵が繰り返すと、イーザとミオは涙腺が崩壊していた。
小部屋から出ると、既に人だかりができていて、先に出た5人が質問攻めにあっていた。
「す………すげぇ良かったじゃねぇか!1天かかったとしても元通りなんだろう?そこの部位は何があっても守らないとな!」
「まじかよーーコレ………すげぇよう!俺声をかけ辛くてさ……2便の連合討伐で行く予定だったからお前のその怪我見て正直ビビってた……」
「スゲェだろ?コレも全部ヒロ達のパーティーがダンジョンからポーション持って帰ってきてくれたお陰だよ!マジで恩の返し方が俺にはもうわかんねぇよ!」
チャックにチャイ、それにユイモアとスゥはものすごく白い目で僕を見ている………
「ちょっとリーダー一言先の言ってくれっかな?説明のしようがなくてな!」
「そうよ!意味わかんないから笑うしかないし……お酒飲めないのに皆持って来るし………アッチでベンさんとロズさんが私とユイとスゥの分を代わりに呑んでくれたけど……飲み過ぎで流石に吐いてるわよ?」
「本当に!モアちゃんの言う通り、笑うしか無かったです……アレって私達と居たダンジョンじゃないですよね?この辺にダンジョンまだあるって事ですか?」
「ちょっと!リーダー!他のダンジョンあるなら私にも教えてよ!実は秘密の特訓そこでしてるんでしょ?戦い方が異常だったから何かあるとは踏んだんだけど……」
「リ…………リーダー僕もうお酒飲めません………リーダーから皆に言ってください………お腹が肉でパンパンなのにお酒でもパンパンです……」
チャイだけはクレームの方向性が違くて何よりだ。
「すまんな!君達にも迷惑をかけた!この通りだ!すまん………ちょっと深い話があってな……君達を呼ぶのを忘れてしまった様だ……混乱させたな!」
そう言ってパーティーの5人に頭を下げる伯爵と男爵。
コレは流石に狡い攻撃だ……周りの皆は伯爵と男爵が頭を下げているので、そこからはもう何も言えない。
「「「「「だ……大丈夫ですーーーーー」」」」」
そう言いながらも皆は何か言いたげな白い目で僕を見ていた……
周りは介助を受けながら出てきた冒険者と楽しい酒盛りになっていた。
治った冒険者達は、15人の負傷者と酒を酌み交わしていた。
「お前達も治る見込みが出てきたぞ!「時進制限」付きのポーションが発見された!部位再生ポーションだったかな?名前は感動のあまり頭に入ってこなかったが!チャンスだけはあるぞ!」
「はははは!感動で入ってこなかったんじゃないぜ!お前は!あの強撃を頭に喰らって既に脳味噌が壊れたんだよ!ははははは」
「はははは!違いねぇ!って馬鹿ってことを言いたいんだな!?余計なお世話だ!ははははは!」
自分たちの怪我も治る見込みが出てきた彼等は意気揚々と酒を煽る。
今まで痩せ我慢をしてたのはすぐにわかった……再生中の仲間を見たら希望が出たのだろう……共に泣いて喜んでいた。
その傍らには当然イーザさんがいて、泣きながらも皆に酒を渡している。
◆◇◆◇◆◇◆◇
皆が宴会中だが、伯爵と男爵それとギルマスに呼ばれて僕は2階の執務室に居る。
明日以降の『秘薬と宝物』を王都へ持っていく打ち合わせ中だった。
既に衛兵長達とは話が纏まったのか、僕とすれ違う形で階段を降りていった。
「すまんな!君は下で宴会に参加したいだろうが、ちょっとだけ付き合ってくれるか?」
そう切り出したのはギルマスだった。
しかしギルマスが話すより先に伯爵が口を開いていた。
「君には本当に驚かされる。間違えて馬車に乗りそのまま鉱山に行ったらその日に『連動討伐戦』が終わり、死にかけてた『シャイン』が延命し、その足でトレンチのダンジョンに行ったら5階の『守護者』を倒したんだってな?」
「君達が宴会中に、ギルドマスターに『ラビリンス・イーター』も含めて先程ここの執務室で話していたんだ。『君の勇姿』についてね」
「ギルマスとウィンを気にすることはない、ウィンにはちゃんと言っておいた。『魔法契約』の延長を続ける様にと……契約と言う意味ではもうすでに周りが『知り過ぎている』から契約効果は期待できん……と言うか残念だがこの場合魔法での契約は無理だ。冒険者の口に戸は立てられないし、周りに関連項目が知られすぎて魔法効果はすぐ無くなってしまう」
「しかし、『それ以外の意味』であれば契約延長で大丈夫だろう?我々は何があっても君を守ろう……いや君達か……だからと言って何かを強制するわけでもないし、誰にもさせない。勿論このテカーリンにもだ」
「そして勿論、危害も及ぼさない。君は既にこの街を救ったんだからな……それが私たちに出来る礼だ。万が一君達に不利益が起きそうな場合、我が持つ力の全てを使い安全な場所まで逃そう」
「ザム!万が一危害を及ぼしたとして、完全に滅びるのは僕達の方さ……シャインの話ではたった一度の振り向きざまの攻撃でジュエルイーターの腕が千切れて宙を舞ったそうだ……」
「そんな事を苦も無く出来る『大魔導士』が本気で暴れれば、こんな街は1時進も持たず廃墟になるだろう!?」
「そうだな!確かにその通りだ。馬鹿共を牽制しないとならんな……本気で……」
「テカーリン!いいか!何があっても『腐敗貴族共』の接触を彼にさせるな……伯爵としての命令だ!もしアイツらに通じる冒険者が彼の事に探りを入れていたら何を差し置いても知らせろ!その貴族も冒険者も関係者全員を全騎士団を使い殲滅する。いいな?」
「職員にも情報管理を徹底させる様に、特に彼周りの冒険者は絶対に情報を漏らすなどこから探りを入れるか分からんからな」
男爵の言葉で何かを感じたのか、語尾が力強い……
腐敗貴族と言えば鉱山の一件があるので、僕はかなりの確率で『討伐部位』欲しさに近寄って来るんじゃないかと思った。
理由は冒険者達に大盤振る舞いしたからだ。
その事に行き着いたのは、さっきして居たデビルイーターの話からだ……皆に大盤振る舞いしたが、騎士団には何も渡してきていないそして、あの時『逆鱗(特大)』をテイラーにプレゼントしたのでその情報を聞いて居てもおかしくない。
うん……あの鉱山の出来事はフラグでしかないな……
そう考えているとギルマスが不思議そうに聞き始める……
「!?伯爵様……どうしてそこまで………」
「彼は私の『友人』だからだよ!先程私が最も気に入っている『魔導書』をプレゼントした所だ」
「!!!………そ……そうでございますか……読める『魔法使い様』がいらしたんですね」
「ああ!我が家は土系魔導士の祖母がいる話をしただろう?私では使えない『魔導書』を有効活用してくれたんだ」
Oops!いきなり伏せ文字カミングアウトかよ!って事は余程重要なんだな……このギルマスはこの街にとって。
黙って居られるのに、あえて言ったのは意味があるからだろう……
伯爵にとって重要なとかこの街にとって重要とかじゃなく、話の筋から『腐敗貴族』から守る手段だろう。
今言った『友人』程度だと王様に献上する宝物と秘薬の件があるから、恩を感じての友人と捉えることもできるしな……
わかる人にだけ分かる答えなのかもしれない。
「あ!僕錬金術使えるんで!今から言う素材集めてください。中級ポーションと………………………」
伯爵様がそれとなく言ってくれたので、折角だから彼等の『部位再生ポーション』の素材をギルマスに集めてもらおう。
中級ポーションは伯爵がくれると言っていたので、多分大丈夫だろうけど一番の高額品だから念の為………
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