第197話「ユニークアイテムの重要性とお茶目なカナミ」

目の前には大笑いする伯爵に男爵。



「ははははは!どうだ!テカ!?気持ち良いほど無頓着だろう?さっきの再生ポーションは『彼の錬金ポーション』だ。中級ポーションは後で我が家から届けさせる。10本は置いておくから、彼が必要な場合渡す様に受付には言っておく様に!」


「くれぐれも中級ポーションも部位再生ポーションも適当な奴等に渡さない様にな!?次『鉱山と同じ事』をしたら流石に怒るからな!?徹底して管理する様に!」



 僕が思いっきりカミングアウトしたら、伯爵も一緒に笑いながら乗っかってきたが、男爵は頭を抱えている。


 そしてギルマスは聴きたくないのだろうか卓に肘をつき頭を抱え始めた。


 そのポーズは耳も隠れているんだよ……聴きたくないのはよくわかる!ギルマス………僕もどうしてこうなったのかよく悩む……


 まぁ助け舟くらいは出してあげよう………


「伯爵様無理ですよ!?ギルマスに言ったって………相手は貴族ですよ?難癖つけて持っていくに決まってます。あんな貴族達は早く消滅させちゃいましょうよ!」



「その方が『絶対』に早いです!綺麗さっぱり後腐れ無いし!多分誰も残らないから……それに奴等は確実にそれで『大霊界』に行くから皆が万々歳ですよきっと……此処から居なくなるから……ね!?」


 何故か青ざめているギルマスマスター……本気でやったりしないよ!?僕『魔王』じゃ無いし……そういえば……この世界には魔王っているのかな?異世界では定例だよね?そう考えてたらギルマスがすぐに口を開く……


「冗談でも怖いぞ!君は前から思っていたんだが………実のところ然程、魔物も怖くないだろう?レッドキャップの時に思ったもんだ。素早く一回転で首を切り落とすとか、駆け出しの戦闘素人じゃ絶対に無理だ!そもそもあの時の直剣は何処から出したんだ?」


「気がついたら武器が元の物に変わっていたし!」



「ああ……見えてたんですか……実はこのクロークの内側がマジックバッグの扱いなんですよ、一応このクローク『ユニークアイテム』らしいんですよね。あ、ちなみに親父の形見品なんですけどね」


「だからここから出したんです。」


 僕は『アナベルのロングソード』を出す。



 そしてクロークも武器も男爵が欲しがりそうなので先手で話す。


 クロークは凄く使い勝手がいいので渡したくは無い……まぁ武器は全長が長すぎて僕には使いづらいので、どうしてもと言われれば譲る事はできなくないが……


 テロルなどが馬上で使うには良いかもしれない。



「「「ブ!………ユニーク!?アイテム!?」」」


 なんか………やらかしたかもしれない………盛大に三人共口に含んだお茶を吐き出していた………


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 僕は伯爵達に『ユニークアイテム』の価値と等をしっかり頭に叩き込まれた。



 まず『ユニークアイテム』は現時点ではダンジョンであれば1種類しか発見されない、もしくは鍛冶職人も1つしか製造できない。


 帝都の鍛冶職人が遥か昔に1本剣を打ったらしいのだが、それが『ユニークアイテム』の鑑定だったらしい。


 即座に王に献上されたらしいのだが、周りの貴族がこぞって剣を依頼したそうだが二度と同じものは出来なかったそうだ。


 ダンジョンでも稀に排出されるが、そのアイテムが出るのは決まって『未踏破ダンジョン』のみで、尚且つ一度手に入れたらそのダンジョンからは『ユニークアイテム』は発見されていないそうだ。


 ただし、発見のされ方には一貫性は無く階層ボスを倒した場合、ダンジョンの主を倒した場合、探索中の宝箱、隠し部屋の宝箱など様々だそうだ。


 今ユニークアイテムとして公に認知されているのが、王都に3種、帝都に3種、魔導士学院に5種、とある冒険者が1種そして今は引退した商団が1種そして僕の様だ。


 とある冒険者は実はカナミ(当時雛美)らしい……既にその武器は『彼女が死亡した』……とエクシアがジェムズマインのギルドに提出したらしく、執務室で『厳重』に保管されている。


 現在も死亡の確認をするべく手を打っているが、上手く行っていない様だ。


 死亡した場所は、ロックバードの『水精霊のダンジョン』最深部の例の魔物だ。


 当然ギルマスはダンジョンが発見されれば調べなければならないので使いを出そうとするが、エクシアがうまく牽制した様だ。


 水精霊に加護を受けS級冒険者の雛美(現在カナミ)が仕留めたと報告をしたらしい。


 戦闘は熾烈を極めたが、与えられた力が水魔法なので雛美とは相性が悪く、相討ちでなんとか身体の消滅までは出来たが魔物の核は壊せなかった……とした様だ。


 エクシアも僕と水っ子達の暴走の様を見ているので、それを語った事で信憑性が増した様だ。


 水精霊が彼女の魂に秘められていた力を使い、最深部を再封印するという話をでっち上げた。


 封印は生き物の穢れで核が再活性化しない為としたみたいだ。


 あながち間違いでは無いので冒険者が『あのダンジョン』に入らなければ結果オーライだ。


 その為『最深部に入った場合、たとえ信奉する人族であろうとも無条件で消滅させる。これ以上この地に危険を増やせないから』と言われたと嘘を並べた様だ。


 其れ程までに『悪しき存在である魔物だ』と言われたとギルマスに伝えたら確認なんて出来るはずがない。


 実際あの魔物は『ぐぼあーーーーー』と叫んでいたので物凄く悪しき存在だ。


 多分何かの魔法だろう。


 僕と水っ子達で魔法を連発しなければ危険だったはずだ!


 食らっていたら死んでいたかもしれない僕は。


 多分………うん……


 それから実際に水っ子と会っている『エクシアと村長』は口裏を合わせて、ギルマスが使いに出した職員達に『水っ子が光らせた水輝石の話』をしたら、両手を合わせ祈っていてそのまま帰ってきたらしい。


 結果遺体の確認が出来ないギルマスは『遺体未確認』でその事を『ギルド本部』へ伝えるしかなかった。


 そして現在はギルド本部でその事を確認中らしく、近いうち本部からこのギルドに人が来るらしい。


 『雛美』が使っていた『ユニークアイテム(武器)』であればその確認が取れ、カナミは無事『放免』になる。


 いや……違う……話がアイテムとカナミですり替わった。


 僕の重要度合いがアイテムよりカナミが優先だから。


 何はともあれ、ユニークアイテムの重要性を知れたのはかなりの収穫だ。


 要はあの『水精霊のダンジョン』は未踏破であり、それが故にこのアイテムのドロップだった様だ。


 そこで不思議に思ったので質問する事にした。


「じゃあ、確認済みのダンジョンは14個しか無いって事ですか?排出理由があって『ユニークアイテム』が手に入るんですよね?それも条件達成前のダンジョンのみで出るのであれば………」


「いいや?既に2つは鍛冶職人が打ったものだ。他にも由来があるからダンジョンだけとは限らないぞ?」



「ああ!鍛冶職人でした……そうでしたね……って事は………他もですか。」


「まず帝都のは1つが鍛冶職人の至高の1振りで、エルフの王国より1000年以上前に友好の印で賜った武器が一つ。そして帝都地下にあるダンジョンから排出された『ユニークアイテム』が一つで、計3種類だ。」



「王都の場合は、ミオの兄が打った一振りの剣が『ユニークアイテム』だった。2個目は『ドワーフ族』との友好の印だな、そして3個目は王都が出来た際には既にあった様なのだ。出所が不明だがいつから有るかも分かってないそうだ。」


「S級冒険者の雛美はその武器をどこで手に入れたかは分かっていない……理由が理由で彼女は孤独だったからな……残念だがその事を知る者はもう誰もいないだろう………この世界には……」



 ………男爵の説明の後に悲しそうにギルドマスターは俯きながら禿げた頭をさすって言う。



 帰ったら直接『カナミ』ちゃんに聞いてみよう!それが手っ取り早い!


 それにしても嬉々としてユニークアイテムを捨てようとしてたカナミちゃんは……飴ちゃんの方がユニークアイテムだったんだよなぁと思い出したらギルマスとは対照的に笑えて来た……

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