第193話「錬金ポーションの言い訳を皆で考えてみた!」


「おお!長袖は良いんじゃないかい?下は長ズボンで!ちゃんと太陽からなるべく隠さないと溶けてなくなっちまうよ!?って言っとけば間違いなく隠すだろうし」



「隠し続けて不衛生は怖いので、清潔にして貰うために夜は必ず洗ってもらい、隠す長袖もちゃんと洗って貰いましょう!再生中なにが起きるか想像がつかないし……不衛生のあまり皮膚病とか嫌じゃないですか?」



「じゃあアタイがユイナを連れてくるからちょっと待ってな、後仕方ない……イーザ連れてやるか………ってそれは来れないか………この件がバレちまうからね。今の精神状態じゃ何しでかすか分かったもんじゃないからな……」



 ひとまず部位特化ポーション・初級の使用期限に使用できる回数に限りもあるので、使い所を選ばないといけなかった。


いくらイーザさんが哀れでも、彼女に絡む人だけ治していたらそれこそ依怙贔屓も良いところだ。


 そもそもこの薬には中級ポーションが必須だ。


 単純に言えば『安い薬』などでは決してない。


 当選エクシアもそれが分かっているらしい。



「それに彼女の担当冒険者だけ優先に治療だと不公平だからね。あれは彼女の罪であり自分で参加した冒険者がトバッチリだと、それはそれであとで軋轢を産む……再生ができればできるで問題とは……難儀な問題だ」



「ですね……じゃあひとまずは彼女の担当冒険者5名と、それ以外の今回鉱山で負傷者から5名で良いんじゃないですか?結果的に10名助かりますし、どんな理由があれあの惨状に行って戦ったことは事実ですし。」



「ほう!確かにそうだな………ちなみに他の者への薬は……すまん……虫がいいか……忘れてくれ。」



「男爵と伯爵が素材を揃えて僕へ個人依頼してくれればいいですよ?報酬は金額が見合いそうな『魔導書』でどうですか?火属性とか水属性あとは氷属性が良いですね……街で買えそうなものがあればそれでいいですし、無ければお金で良いですよ金額は適当に任せます。」


「そもそもこの薬には『中級ポーション』が必須なんですよ。だから決して安くはないので……はい!すぐに作りますとは言えなくて。」


「勿論コレには使用期限があるので『鉱山連合戦に参加して怪我をした人』のみで今の所は……その対応でお願いします。怪我した人をアレもコレもってなると僕がする作業量が悲惨になるので、必要な数はエクシアさん通して依頼でいいですか?僕エクシアさんのギルド入るので……」



 僕はこの特殊ポーションが如何に高価格であるかを伝えておく。


 そしてエクシアさんのギルドに所属する旨も伝えておくのを忘れない……依頼を街営ギルドに流しても僕がその仕事を引き受けるかは怪しい。


 何か貴族間の力関係が働きかねない場合には、断固拒否をしたかったからだ。


 そもそもポーションは残念な事にダンジョンから排出する以外は、帝都と王都にしか取り扱いがないらしい。


 帝都と王都のポーションは一体誰がどうやって用意しているのかは僕にはわからないが……。



「ポーションの事であれば私が一肌ぬごう……あと部位再生についてはあの秘薬を少し使ったと嘘を吐こうじゃないか……秘薬には再生効果があるのはヒロ殿が言った通りだ。使用した量が少ないので『効果が遅い』と言うことにすれば良い。どうせ普通に買える金額などではないからな『秘薬』は、情報に誤りがあっても金銭で買う場合は金級冒険者以外はどうにもなるまい」



「それにこの再生ポーションの件は進んで王の耳には別に入れる内容ではないし、万が一聞かれたら運良く部位再生のポーションがダンジョンから出たと嘘を使う。」



 僕はひょんな事から伯爵の言葉で誤魔化す手を思いつく。


 それも例の領民達の『無念』さえ晴らす事が出来るいい手段だ……その為にもダンジョンをうまく利用するしかない……話を信じた馬鹿貴族共が発する欲望の穢れがダンジョンに溜まる事を考えると『悪手』ではあるが……



「いや!それいいですね!?あ、物が物だけに消費期限があって『腐敗貴族』が目をつけたら、折角のポーションを無駄にしかねないから、王の為に進んで戦った冒険者達に使ったと言えば『鉱山の悪事』を伝えられ『怪我を負った理由も』話せますよね?……それと無く……そうすれば気兼ねなくこのポーションを今此処で使えません?」



「ハハ!良いなその発案!寧ろ王から聞かれる前にコッチから仕向けるぞ!?是非ともな!薬だって使ってしまえば証拠は残らない。そもそもダンジョン産で得た薬に使用期限があれば他の街に等とてもでは無いが持ち出しなどでき無いからな。それに長袖や長ズボンも再生中の見映えの問題として処理できるしな。好奇な目に晒されない様にな!」



「部位再生ポーション効果と言えば貴族が寄ってたかって欲しがるが、出所はダンジョンであればおいそれと手に入らないと想像がつく。」



「ダンジョン産で話を合わせれば、腕が生えようが足が生えようが真実は全部が闇の中だ!」



「ダンジョンだけにですか?上手いですね!」



「ではいいか2人とも?纏めるとこうなるぞ?王へ献上する箱にしまった後にイーザという者が問題を起こした者の中から部位欠損者を5名、そして連合戦へ参加した結果部位欠損をした5名を無作為に選び合計10名を此処で治療する。」



「薬の説明はダンジョンで運良く入手、理由は使用期限の関係で使用した。それ以外のことは、その後は『まぁなんとかなるだろう』……で良いか?」



 伯爵も男爵も思うところがあったせいか、僕の発案に乗ってきた。


 ただでさえ鉱山での戦闘で大怪我を負った冒険者達に悪いと考えていたが、まさかの悪事を貴族の騎士団達が進んでやっていた事を考えると、とても許せなかったのだろう。


 僕が策を考えなくても、何か方法を考えて国王に報告する気だったのだろう。




「そんなところですかね?それに此処の部屋なら窓もないので、箱にしまった秘薬をより安全に監視できますし。兵隊に監視させる事も中に2名、外に3名も居ればまず平気じゃないですか?秘薬の管理的にも此処は良いですし。万が一悪事を考えた貴族が狙ってきても小部屋であれば牽制しやすくなる筈です。」



「それに皆には嘘も方便って奴ですね!凄くいいと思います。今秘薬がこのギルドにあるので、この個室であれば周りに特化ポーションの全貌が知られず有効活用して嘘つけますし。」



「伯爵様も男爵様も………こいつに似たらダメじゃ無いかい?……あとで後悔するよ?まぁ今はそれしかいけどな。作った物も無駄になっちまうし。」



「エクシアさん……敬語がメチャクチャです………」



「あんたに言われたくないわ!」



「構わん構わん!今は我々しかいないんだ、気にするな。なぁ?ザム!」



「うむ!気にせんでいい。此処から出たら私があの秘薬をこの部屋で管理すると伝えよう。さっき執事のラルに、王家が用意した管理用の箱を持って来させたのでな!あれに手を出すバカは余程なバカだ。」



「伯爵様はやっぱり似てきたね……王様の前では気をつけたほうがいいよ……」



「ははははははは!多分王も気に入ってくれるはずだ!私の今のこの様を!」



 そんな話をしつつエクシアはユイナを呼びに、そして伯爵はラルに言いつけ専用の箱を空き部屋に持って来させる。


 執事のラルはとても大切そうに箱を扱い持ってくる。


 黒い箱は小型の黒いトロールトランクだが箱の正面に竜と虎のオブジェがある。


 箱は特殊な作りになっていて、箱の中に次元収納袋が用意されている。


 何があっても破れない様にする為だろう。


 そしてその箱からは、専用の内鍵と外鍵が無いと中身の次元収納袋は取り出せない工夫がされていた。


 箱の全体には不思議な紋様があるので、それ以外にも仕掛けがあるのだろう。

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