第140話「予想外の昇格試験と凹むレガント』

今日討伐したゴブリンの事について何か言われるかと思ったのだが、ミオさんはその事には一切触れずいつもの様に『報酬の受け渡しと冒険者証の記録の為に皆を読んで下さい』と言う言葉で締め括ると思われたが、最後の一言がいつもと違う形で終わる。



「連日の事なのでもう慣れてしまいましたね!あとはいつも通り皆さんに冒険者証の記録と報酬受け取りに来ていただければ終了です。」



「…と言いたいところですが!」



「今日はまだヒロさんには報告があるんです!ナント!いよいよヒロさんも銅級冒険者昇格試験を行う事になりました!おめでとう御座います!」



 一番近くで聴いていたビラッツとエクシアにレガント達のパーティーが拍手喝采で喜んだので周りの銅級冒険者から注目を浴びることになった……



「やったな!ヒロ。これで銅級冒険者だ!ってか早いな!?なんでこの俺より早いんだよ!俺より後に冒険者登録して……ちょっと待て!まだ30日も経ってないだろう!!ミオさんソレってアリなのか!?」



「レガント!確かにそうだ!ってか……そもそもつい数日前に段位上がったばかりだろう?それで銅級昇格試験?……」



「レガント……リーバス……今日の彼を見たでしょう?彼にとってはゴブリンもスライムも一緒なのよ!唯一違うのはジャイアントスパイダーだけよ!アレは『見せるな危険』よ!!」



「「「「「こっちが危険だったなぁ〜」」」」」



 ヒーナが今とても酷いことを言ったが……アレは僕が彼等を守った事にはならないのだろうか?

しかし周りを見ると異世界組も激しく首を縦に振っている……赤べこ人形の真似でも流行っているのだろうか?相当元の世界が恋しいようだ……。



「あ!ジャイアントスパイダーの件で思い出した……有難うな!ヒロ!お前良い奴だな……お前のアレで俺らの評価が鰻登りなのは間違いない……恐れず向かい合った事をバラスさんが見てたらしくて高評価になったってさ!」



「連合リーダーは先にあの場で戦ってた俺って事にしてくれたのには感謝しかないよ!また何かあったら一緒に是非戦おう!早く俺も昇格試験受けられるように頑張るよ!」



 レガントが言う感謝の言葉にミオさんが



「皆さんの言う通り、彼の行動は自分本位で動かず相手も思いやっての行動が高評価であり、魔物に恐れず立ち向かう点も高評価なのです。ヒーナさんが言ってたように『スライムもゴブリンも彼には同じ魔物程度』にしか思ってないのです」



「無謀に突っ込むのと、確実に戦い勝てる魔物に戦いを挑むのでは全く意味が異なります。彼は後者であり状況を見る力があり、パーティーリーダーとしての経験もしました。そんな彼を此処で遊ばせておいても経験が上がるとは思えないと言うのが上の判断です」



「薬草の採取も雑草抜きで毎日30束確実に持ってきます。スライムは毎日欠かさず30匹を駆除します。魔石換算なのでスライムだけとは限りませんが、魔物を駆除している事には変わりありません」


「駆け出しが行う事を毎日最大まで行い、パーティーリーダーとして行動し、連合パーティーでもちゃんと活躍する。魔物を恐れず、冒険者達に上下をつけない。その様な部分が評価された結果『銅級冒険者昇格試験』を受ける許可が出たのです」



「当然『許可が出た』だけなのでこの後も審査が続きますので気を引き締めて試験に挑んでくださいね!」



 そう言ったミオはタバサにした内容と同じ『銅級冒険者昇格試験』の概要を教えてくれた。



 ただ今回からは仕組みが若干変わるらしく、『出発の際必ず冒険者窓口に通達した後向かう』と言う内容が追加されていた」




「詳細は後日になりますが、今街の外には異変があるかも知れないのでギルド員がそちらに出向く都合です……必ず行く前に確認して出る様にしてください」



 本来は東門付近にもギルド員が在中しているらしいが、街の外に起きた異変対策で人員が割かれているようだ。




「あと、私は明日から銅級窓口も兼任になるので居ない場合は他の者が対応する場合もあります。なので出発時の報告や受付員の指示は確実に受けておいてくださいね。」



 ミオのその言葉を聞いた冒険者は俄かに騒ぎ始める…



「マジか!ミオさん俺たち銅級に窓口もやってくれるのか〜よかったぜぇ!ダンジョンに最近潜れなくて困ってたんだよ!」



「お前達もか!俺担当者がオレンジさんなんだけど受付タイムスケジュールが原因でいつも昼過ぎに来るから置き手紙するんだけど……総括が置き手紙渡すの忘れたとか平気で言われてさー困ってたんだよ!」



「お陰でペナルティとかあってよぉ……2日間ダンジョン入場禁止とかさ……俺のせいじゃねぇのにだぜ?それ揉み消すのに弁当持ってこいとか意味わかんねぇし!」



「お前なんかまだ良いじゃねぇか……俺なんかミオさんに担当から銅級上がった時、『総括の担当に切り替えないと討伐依頼は受けさせません。』とか言われて止む無く担当替えしたんだけど討伐報告してもカウントされてないとかザラで評価漏れになってたり大変だったんだぜ!」



「んー?って事は……もしかして……ミオさん銅級総括になるのか?」



「ハイ!でもこのまま初級冒険者窓口総括も兼任するので両方行き来する事になるのですが……一応そのあたりは他の受付達と相談しながら適切に対応するので安心してください!」



「マジかー!!これでまともに討伐依頼できるぜー!」



「俺!ダンジョンペナルティなんとか出来ませんか?あと1日残ってるんです!俺んせいじゃないのはオレンジさんも知ってるので!彼女に聞いてもらえませんか?明日は彼女に合わせて昼から俺出るので相談乗ってくださいよ!」



「オレンジさんにその話は先ほど聞いたので既にペナルティは解除させてますから。確認してくださいね?多分彼女は今ちょっとサブマスと打ち合わせが多くて話せなかったんだと思いますので。」



「あ!そうなんすか!他の銅級冒険者もなんか特別依頼とかでウハウハしてたんですよね……て事は俺もオレンジさんに言われるかな?」



「総括とはいえ窓口担当を蔑ろには出来ませんので、詳しくは彼女に聞いて見てください。担当を超えて話せませんので。」



 どうやらミオさんは銅級冒険者も押す素晴らしい受付員さんだった様だ。



「すいません銅級の皆様今は昇格試験の話が先なので、お話は後ほど聞きますのでお待ちくださいね。と言う事で、ヒロさんすいません話を突然変えてしまって……お待たせしました」



「えっと…と言うわけで万が一私からの伝言を伝えなければならない場合は、窓口に申し伝えをしておきますので……と言う事です」



「ハイ!わかりました。一応行く前はタバサちゃんの時の様に寄るつもりだったので問題はないです。時間もタバサちゃんと同じ時間で動く予定なので」



「わかりました。いつも私同じ時間に此処にいますので多分送り出しは私な筈ですから」



「では次にレガントさん…」



 僕はレガントの報告を聞きたかったが、エクシアとビラッツそして今日行動を共にした皆にお祝いされたので内容は把握出来なかったが、かなり長い話をしている様だった。


 そんな中、タバサとそのパーティーも話の輪に加わると、当然の如く自己紹介が始まる…しかし何故か銅級冒険者達もワラワラと後をついて来て僕とソウマに自己紹介を始める。


 戦士系(特にタンク)はほぼソウマに偏り集まっていた。


 理由はタバサが直向きに僕とソウマの事をダンジョン内で説いた事を、そのメンバーが此処で話した事でその人物誰かと話題になった様でまさか駆け出しが出てくるとはおもわかった様だ。



 魔法契約済みのタバサはしどろもどろだった様で、言わないように頑張ったせいで疲れ切って顔には悲壮感が出ていた。



 そしてミオの報告が問題なく無事に報告が終わったレガントはションボリしながら戻ってきて、僕に一言『お前だけずるい』と恨言を言われた。



 どうやらレガントは昇格試験許可は降りなかった様だ。



 レガントは納得いかない訳では無かったが、僕に追い越された事で俄然やる気が出たらしくミオさんに自分の足らない部分を質問した様だ。



 リーダーとしての素質もあり、最近幼馴染以外のメンバーを増やしたのは良いしかしそれをしたのはヒロと行動を共にした後からなのでまだ判定には至らない。



 などなど言われたのが全てクリーンヒットしたらしくゲンナリしてたが、ミーナとヒーナが『そんなんだから許可が降りないんだ!シャンとせいシャンと!』と言われて二人にケツを叩かれその様を見た同級冒険者に笑われつつも『頑張れよヒヨッコ』の一言でやる気を出していた。



 レガントは単純だった。



 そして奥から数人の男性冒険者が入ってきて窓口が若干慌ただしくなると受付嬢が集まり始める。

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