第139話「物騒なエクシアと知らない内に巻き込まれる男爵」

「マジックバッグは売らずにタバサが持っててもいいかもよ?誰かがタバサを襲ったら私がぶっ殺す!!!って私が言えばテロルも助けるしテロルが言えば男爵が兵隊出すからそれを借りて関わった奴はまるっと皆殺しだ!」



「エクシアさんは物騒です………男爵様を巻き込まないでください!」



 ユイナの一言で大爆笑するエクシア



「まぁぶっ殺す話は置いといて!!皆さんがソロならこれを機に一回皆でパーティ組んで冒険するのもありですね……皆で得た物なのでタバサの必要なものだけ分配すれば残りのものを持ち帰って皆で話し合えば決まるし!持って帰っても5人で常に行動してれば襲われる心配も減るでしょう?」



「ほう……面白いことを考えるな……でも何故タバサは別なんだ?」



「サブマスター……タバサさんは元々ヒロさん達にパーティーメンバーなんですよ……だから共通アイテムにするより分配してた方が後々問題にならないと言うことです。」



「それに、5名で各50枚の金貨があれば総枚数250枚になるので彼等は無茶をしければ手頃な『拠点を借りれます』宿代とか心配しなくても良くなるんです。」



「それに加えて今回ダンジョンで取得したアイテムも自由にメンバーで使いまわせるので、『コレは自分のだ!』と言うことが少なくなります。メンバー共通の武器になるんですよ……ギルドにある武器貸し出しのパーティー版みたいな感じですね」



「マジックバッグは大きさで価値が変わりますが、この5人でパーティ組んだ場合アイテムのほぼ全てを彼等が得ることが出来る上に得た武器を好きなように使い分けできるメリット考えればマジックバッグを手放しても問題ないとの判断じゃないでしょうか?」



「そしてポーションの大ですよね……アレ……かなりの買取価格ですしそれも……3個。アレは………何のポーションですかね?」



「さっきヒロが万能薬って言ってたぞ?なぁ?レガントそう聞こえたよな?」



「だな!所で万能薬って何だ?ヒロ?」



「状態異常を全部祓うポーションですよ?死亡以外はほぼ治せる筈ですけど?」



「「「「「…………………………」」」」」



 ミオの知らないポーションを知っていて、見分けのつくヒロのその説明に黙り込んでしまう外野達……その空気を変えるようにサブマスターが



「おお!そうかそうすればここに根を生やす冒険者になれるし、安定した冒険ができるな!金ができたらそのアイテム買取すれば専用にできると言うことか!買い取った金はパーティー共通資金になるし良いことづくめだな!」



「「「「「さ…流石タバサさんの師匠……考えたこともなかったです!」」」」」



 ……僕だってそこまで考えてません……優秀すぎます……ミオさん。



 僕が考えたのは彼等がどう襲われないで済むかだけなんだ…とは今更言えない。



 愛想笑いで誤魔化すのは……できる人間の証拠と言う事にして笑っておこう!



 ただ問題はマジックバッグの取引価格がわからない……この様なアイテムは高額だと相場は決まっている。



 その為お金に変えてしまえばい問題にはならないと踏んだのだが……



「マジックバッグはタバサさん受け取りで私はいいと思います!だってタバサさんが居なければ5Fのフロアボス撃破なんて私たちでは夢のまた夢だったじゃ無いですか?」



「俺もそう思う…周りのゴブリン抑えるのがやっとだったし…」



「アレはゴブリンのレベルが高かったんですよ!だからステータス差で押し負けたんです!ロズさんが前に教えてくれました。皆で協力するのが冒険だとも教えてくれたので皆が居たからあそこはクリア出来たんです。」



「5Fのフロアボス倒せば地上までのゲートが出ると調べてくれてたのはモーリーさんですし!皆の功績です!」



「成程…ロズの奴も意外と教えてやってるんだな?まともに……単に鼻の下伸ばしてただけじゃないんだな……タバサ見習ってロズも早く銀級に上がって欲しいんだがな……」



 エクシアの皮肉とも思えるそれを聞いた皆は大爆笑だった。



「それでは皆さん初心者ダンジョンの報告を受け付けましたので、審査完了までしばらくお待ちください」



「ヒロさんとレガントさんのアイテム査定及び審査の後になりますのでご了承ください」



「一応先程引き取りと言われたアイテムを鑑定させていただきますね?呪われて無ければお渡し出来ますが呪われていた場合消失しますのでご了承願います。尚アイテム鑑定は通常対価を戴きますが、今回は国王陛下への献上品を考慮して無料となります。」



「ご自分の伝手で鑑定される場合は今お渡ししますがいかが致しますか?」



「「「「「「全部鑑定でお願いします!」」」」」」



 5人とも既に当分パーティーを組む方向で話が進んでいたので決定は早かった。



 マジックバッグは呪われていないが僕が手に持ってタバサに渡してしまうと、勘のいい冒険者だと鑑定持ちやそに手の能力持ちと気がつく可能性もあるので手は出さずに知らないフリをしつつ任せることにした。


 ◇◆ ◇◆ ◇◆ ◇◆ ◇◆ ◇◆ ◇◆ ◇◆


 駆け出し冒険者フロアの中では未だにダンジョンで獲得したアイテムの話で持ちきりだった。



 銅級冒険者達は新しく同じ階級になると思われる宝箱を持ち帰った冒険者の6人と自己紹介を交わしている。



 皆がそんな話をしているのを横目に待っていると、ニ人の男が大きな荷物を持って初心者窓口フロアにに入ってくる。



「ミオさん!踊るホーンラビット亭のビラッツで御座います!本日御依頼の夕食のお弁当をお持ちしましたよ!」



「え?ビラッツさん!今日はオーナー自ら配送ですか?どうしました?配送係の人にまさか何かあったのですか?」



 ミオはホーンラビット亭の担当なので薬草の処理を他の受付嬢に一時任せて、お弁当が入った大籠を受け取りに為に飛び出てくる。



「いえいえ!今日はタバサ嬢の晴れの日な上に、ヒロさんのパーティーとしてもおめでたい日になるかもしれないじゃないですか?店で待ってなんていられないですよ!なので早くお弁当持ってきたかったのですが……早過ぎると冷めてしまいますからね!」



「所でこの賑わいどうなさったんですか?あれ!あそこでもみくちゃでいらっしゃるのはタバサ様?もうお帰りなんですね?この賑わいの元はタバサ様達なのですね!と言う事は……無事帰還で結果は上々と言う事ですね?もしかして……もう銅級冒険者にはなられたのですか?」



 ファイアフォックスでも何度も顔を合わせている為ワクワクが止まらないのか、ミオさんに喰い気味で聴きまくるビラッツさん……結構近くに僕が居るが気が付いていないようだ。



 ミオさんは手早くお弁当を受け取ると、メイフィにバトンタッチしてお弁当の管理をさせ自分は窓口に戻って行く。



「いえビラッツさん。今はヒロさんとレガントさんの受付が先なので、その後タバサさん達の査定調査になります。まだもう少し先ですね……結果がわかるのは。担当員もまだ不在ですし。」



「そうで御座いま………ヒロ様がいらっしゃるんですか!うわぁぁぁ!!ヒロ様!それにエクシア様!!すぐそこにいらっしゃるなら声をかけてくださいまし!お人が悪い!」



「ミオさん、パーティーリーダーのヒロ様……私もこのままタバサ様の結果を聞いていってもよう御座いますか?気になって仕事に身が入らないので料理長に此処で結果が出るまで待ってろと追い出されまして……」



「私は構いませんよ?……というかこの場は誰でも出入り自由ですから、止められませんし……ヒロ様もお断りになることもできませんよ……此処は街営ギルドなんですから!」



 そんな会話をしながらも流れ作業のように手早く確実に薬草の判別をするミオさんの手際は見事だった……もしかしたら薬師のクラス持ちなのかもしれない…



 そんな中ミオさんによる納品された薬草に束に魔石数の確認は速やかに終わり、僕はリーダーとして呼ばれる。

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