第141話「悲惨!冒険者狩りと天然娘タバサ」
何故か男達は手に数本の武器を持っていた。
「では今日昇格試験を受けられた方の結果が出ましたので報告させて頂きます。……が、その前にこの方達が持っている武器に見覚えがある方は前に出る様に!」
「誰も出ませんか?それであればこちらから通達します。マーデン!ガービル!ウィズン!ローガル!次の4人は前に出る様に!」
「既に此処にいる事はギルド員により確認済みですよ?それに駆け出し冒険者を襲う所もギルド職員にて確認済みです!」
突然入り口から逃げようとする男性冒険者を門番の様な出立ちのギルド員が腹打ちで押し戻す。
殴り倒された冒険者が転げた先はタバサの目の前だった。
「あーーー!!貴方達……さっき私…目を覚まさせようと強めに叩いちゃいましたが……大丈夫でしたか?」
ミオがカッコよく言っているところに間の抜けた声で語りかけたのはタバサだった……負けずにミオは頑張って続ける様だ……
「ん……オッホン!!」
「貴方達はチェックを貰った冒険者を襲おうとしましたね?チェックを受けた者達から冒険者証を取り上げて金品や装備を巻き上げている冒険者の事は既に耳に入っています。」
「下層から上がってくる駆け出し冒険者を襲っているとも聞きました。」
「今日だけで3件の被害が報告されています!」
「銅級冒険者とも思われましたが、ダンジョン内部で駆け出しを襲うより依頼を受けた方が実入りがいいのでおかしいと言う事になり、長い間昇格試験で足踏みしている事が気になったので後をつけさせて頂きました。」
「まさか……女性冒険者のタバサさんを襲い返り討ちに遭うなんて……ある意味びっくりで拍子抜けでしたが!犯罪は犯罪です!」
「憲兵に突き出す準備もできていますので、犯罪奴隷としてこれからは鉱山で頑張ってくださいね!」
そこに憲兵が入ってくると、男隊は観念するどころか周りに居た駆け出し冒険者から武器を奪い憲兵に斬りかかろうとする。
ある者は駆け出す賊の横っ腹に蹴りを入れる銅級冒険者…
エクシアに至っては斬りかかる手を器用に掴んで武器を奪い転がす。
それをみた仲間の一人は憲兵から遠ざかろうとするも何故かソウマがラリアットする……もうプロレス好きなのがわかる一撃だった。
最後の一人は自分から剣を捨てて降参した。
その後憲兵はあっという間に冒険者4人を縛り連れ出していった…
「昇格試験発表に前に説明します。今の四人は駆け出し冒険者を狩るのが目的でダンジョンに潜っていた犯罪者達です。あの様な者はいずれもっと悪い事に手を染めます。皆さんもダンジョンの様な空間では充分注意してください。」
「あとタバサさん御手柄です!偶然ギルド職員が駆けつけた際に逃げる彼等の仲間を捕らえられたのはタバサさんのおかげです。有難う御座います。捉えた2人は既に憲兵に引き渡し済みです。」
「あれ犯罪者だったのですか?てっきりダンジョンに興奮して魔物と間違えて斬りかかられたのかと思ってました……たまにパニックになる冒険者がいるって今日のメンバーが言ってたのでてっきり……」
「タ……タバサさん……彼等は6人居ましたよね?」
「はい!居ました!皆さん『うぉぉぉぉ!』って言ってました!でも武器の使い方は素人でした。アレじゃゴブリンでも多分避けちゃうんじゃないですか?」
「…………ゴブリンが避けるかは今は置いときましょう……タバサさんは6人全員がいっぺんにパニックになると思いますか?」
「……………ハ!………………言われてみれば!」
「タバサさんはもっと人を疑いましょう!良いですね?」
「ハイ(シュン)………」
ミオのお母さんの様なそれを聴いていた周りは大爆笑だった………
◇◆ ◇◆ ◇◆ ◇◆
シュンとするタバサを尻目にミオは淡々と職務をこなし始める……悪気がある訳ではない仕事なのだろうサブマスターもこの場所に居るために変な甘やかしは出来ないのだろう。
「それでは本日行いました銅級冒険者昇格試験の結果を公表致します。呼ばれた方は窓口に向かい初級冒険者証を提示してお待ちください。後程『銅級冒険者証及び銅級認定バッジ』を配布します。
「バッジは魔法処理されており、専用のギルド書庫を使用するのに必要になりますので無くさない様に注意してください。ギルドカードも銅級冒険者仕様になりますので、階級が上がった場合速やかに『銅級冒険者講習』を受けてください。」
「銅級冒険者になったとは言えすぐに装備を買い集めない様に!自分の適正が正しいか確認が必要ですので……浮かれ過ぎて間違えた装備を見た目で買う冒険者が続出しています……装備には相応のステータスが必要なので、装備できない場合もあります注意してください。」
「それでは読み上げます。」
「プーロウ、ムーロン、ベラ、コテポ、ピョウ、レザー、ムント、ノース、ぺラント、ガジュ、レベッカ、マール、バーバラ、レジン、タバサ……以上です。呼ばれた順番に序列はありませんし、ダンジョンを退出した早い遅いは関係ありませんので注意してください。稀に早く呼ばれる事を自慢なさる方がいますが、全くそんな事関係ありません」
「次に申し上げる人は今一歩及ばなかった方です。呼ばれた方は引き続き昇級試験を受けることが可能です。何が悪かったのかよく考えて明日以降の昇級試験に活かしてください。」
「メルル、ワン、ドゥーイ、ゲッコウ、ダッコイ。以上の5名は引き続きダンジョン入場証をお持ちください。」
「今までに名前を呼ばれなかった人は仲間に依存して実力を見せなかった方や協力性が無かった方です。この試験は仲間を信頼しお互いを補う事を目的としてます。それらが行えない方は銅級冒険者としてはやっていけません。今回の結果をよく考えて行動してください。」
「尚、一度ダンジョン入場証は回収になり銅級冒険者昇格試験は出来なくなりますので、再試験資格を得られる様に頑張ってください。」
ミオの発表を受けて大喜びする冒険者や、残念がる冒険者。そして崩れ落ちる冒険者まで居た……多分協力しなかったのだろう。
先程から壁際で周りに偉そうにしていた冒険者は今は崩れ落ちていた……よく顔を見ると知っている顔だったが思い出せない……周りの2人は受かった様で抱き合って喜んでいた。
たまたま彼等の側に立ち回りを教えた知り合いがいたので寄ってみたら、そこそこ距離があるのにハッキリ声が聴こえるぐらい彼等の喜びは凄まじかった。
「俺たち頑張った甲斐があったな!お前のおかげだ!なんとか3階まで降りれたのは……耐久盾しか脳がないって言われてたけどお前さんが攻撃頑張ってくれたからだ!本当に受け流しを頑張った甲斐があった!」
「ああ!受かった!銅級だ!!とうとうなれた!銅級だ!お前の盾があったから3Fまで降りれたよ!俺なんか攻撃は普通!筋力も普通よりちょい上……うまくお前が誘導して後ろに流してくれたおかげだ!だからこそ俺でもトドメがさせたんだ!」
「なんで盾しか脳のない奴に……攻撃だってパッとしないコイツが受かって俺は昇格試験の権利失効なんだ!指示こそがリーダーの役目だとギルド職員の馬鹿ども何故気が付かない!攻撃や防御など全部格下の仕事だろうが!リーダーが指示しないとコイツら何もできないじゃないか!」
近くまで来て思い出した……コイツってばタバサを馬鹿にしたのに対人講習会でボコボコにされたババロアだ……いやそんな美味しそうな名前じゃ無かった……。
「あ、ヒロさんじゃないですか!教えてもらった立ち回りで協力し合って合格もらいました!ベラです!覚えてます?対人講習会の時お世話になった!あれ?ヒロさんどうしたんですか?……あれ?タバサの事を馬鹿にしてたベロロアじゃ無いですか?なんで座り込んで項垂れてるんですか……あ!受からなかったんだ!だからか!!ってそんな訳ないよね?」
ベラという子は興奮してたせいでデカイ声でベロロアが落ちた事を言うと、落胆して座り込んでいた彼は周りの冒険者から注目を一斉に集める……
「マジか……あんなにデカイこと言ってたのに落ちたのか……ボソ」
「なんか有力冒険者だから指示に従えとか言ってたよな……ボソ」
ベラの一言で昇格試験を受けた冒険者や、お祝いで声をかけていた駆け出し冒険者がざわつき始める……それだけ彼は大きな事を言っていたのだ。
「あれ?もしかして……横の二人ってベロロアが使えないって言ってたピョウとムーロンの2人じゃない?マジで受かったの?やったね!私も同じ銅級冒険者になったよ!私もアンタ達もお互いベロロアには馬鹿にされてたけど!!結果オーライだね!銅級冒険者になれたんだから!」
「落ちた人知ってる?二人は?あれ?どうしたのベロロア……まさか本当に落ちたの?まさかそんな訳ないよね有望株だって言ってたもんね……ギルドの窓口嬢全員が期待してるって言われたってベロロア言ってたもんね?……あ!ゴメン呼び方また間違えちゃった…『豪剣のベロロア』だったっけ?ついつい『受かった喜びで』アンタの二つ名言うの忘れちゃってたわ。」
「『豪剣のベロロア』早く冒険者証の引き換えに行こう!銅級冒険者になったら偶には私と組んでね!!」
ベラの嫌味は壮絶だった……
そして二つ名のそれを聞いた銅級冒険者は笑いを堪えるには辛かったのだろう……あちこちで笑いが起きていた……
まぁ理由はわかるが……スライム退治の時に大概彼女たちのパーティーはベロロアに邪魔されているのを対人講習会の時に聞いたのだ……その彼等を完膚無きまでに叩きのめした僕達に、貯水池のもう少し奥で戦うためにうまく立ち回りを教えてほしいとお願いされたので僕とソウマで教えたのだ。
といっても僕らの戦い方はそもそもベンとロズの受け売りなので……と言う事を教える前に付け加えていたので問題はないはずだが……
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