第133話「大盛り?山盛り?特盛?そんなのは牛丼だけで十分です!」
解体部屋に入った瞬間からサブマスターの開いた口が塞がる事はなかった。
理由は簡単で、既にゴブリンキャプテンの存在有りと言われていた上に個体総数全部で24体の討伐数と言っていたのだが、そこにジャイアントスパイダー4匹にバラスと衛兵が倒したゴブリンに加え、見るも無惨な肉片になったゴブリンチーフテンが特盛状態で居たのだ。
その上、今ここには部屋に取り出せる個体のみ出しているだけで帰還中に遭遇した別の群れはまだマジックバッグの中に収まっているとの事だった。
わざわざ取り出したあとキャプテン個体の群れとチーフテン個体の群れに仕分けをした様で、チーフテンの群れをバラスがその数をメモした紙を読み上げていく…
「ゴブリンスカウト4 ウォーリアー9 スパイダーライダー4 ジャイアントスパイダー4 アーチャー3 シャーマン1 ソードマン1 チーフテン1…読み上げた個体の一部が机に並んでおるが山盛りじゃろう?ちなみに蜘蛛素材は引き取りの為じゃ。」
「駆け出し冒険者にはもってこいの素材だからのぉ、今日の褒美に先に解体して素材だけ先に渡してやろうと思ってな。それに装備を作るにも時間がかかるし死んでしまっては装備もできんからな。ちなみに個体数は全部で51匹じゃ…因みにこの27匹の討伐には儂等は一切手を出してない。」
「な…何だと!?2つの連合とは言っても駆け出し冒険者にはゴブリンウォリアー1匹だって荷が重い数だろう?」
「嘘をついてワシに何の徳がある?ちなみにコレをしでかしたのは言い難いが…ほぼ1人で…と言うか巨軀蜘蛛を見てパニックになった坊主がな…全部片っ端から蜘蛛の頭を吹っ飛ばしていったんじゃ…それだけ相当蜘蛛が嫌いなようじゃ。」
「殲滅にはマジックワンドを使ったらしいが、今思うにそれが無ければ儂等は無事では済まなかったじゃろうな。」
「アイツ等に早く逃げろと注意した時は気がつかなかったんじゃが、森の中にシャーマンとソードマンがいたんじゃよ…奴等に何もさせずに倒せたのは運が良かった。シャーマンが狂乱の呪いでソードマンを強化してたら衛兵の1人くらい死んでいてもナンも不思議はなかったからなぁ…」
ゴブリンシャーマンとソードマンを倒したのが駆け出し冒険者と聞いたサブマスターは、目眩を起こし近くにあった椅子に座り込んで信じられないとばかりに衛兵に確認するも衛兵も頷くばかりだった。
しかしバラスの話を聞いたミオはレッドキャップの件を思い出し…『多分そうだろうなぁ』と思っていたが声には出さなかった。
レッドキャップの件はレガントが解体申請したので手柄として名前登録されたのはレガント達のパーティーなのだ。
レガントが報酬を受けた時皆から賞賛されていたが、その数日後ギルドの外で串焼きを片手に申し訳無さそうに謝っていた彼を見たので何かあるとは踏んでいたミオだったのだが…今回の起きた件は予想の遥か斜め上だった。
因みにこの情報は審査対象に繋がる為に冒険者には一切開示されないギルドの裏情報でもある。
「まぁゴブリン共も、まさか遠距離から破壊力抜群の攻撃魔法が飛んでくるとは思ってなかったんじゃろう…チーフテンの取り巻きは何もできず全て倒れた樹木の下敷きになって圧死してた…調べる此方としては樹木に潰されたおかげで粉々にならず損傷は少なくて済んだがな。」
前の24匹を加えて駆け出し冒険者の2チームで全て討伐したとなれば声が出なくなるのも当然だった。
ゴブリンの討伐依頼は基本的に銅級冒険者からになるが、その理由はこの魔物はある規模の群れを作りそれなりの知性があり更に状況に応じて仲間を呼ぶ特性があるからだ。
何処にでもいる魔物なのだが、ジェムズマインの街付近の目撃が多い場所としては魔の森の他には初心者が基礎経験を積む街から僅かの距離にあるダンジョンだ。
魔の森とダンジョンに入ることの無い駆け出し冒険者には、魔の森から出てきたはぐれ個体や斥候と出くわす位でその戦闘でさえもギルド側は出来る限りは逃げることを推奨している。駆け出しでは戦った場合それなりの怪我を負うし、下手すると命さえも危ないのだ。
その理由から群れとの戦闘など考えられない筈なのだ。
「…それにしても何だこの肉片は!元ゴブリン・チーフテンと言われてもギルマスになんて説明すれば良いんだ…そもそもどんな魔法を使えばこんな状況に出来るんだ…破片を見る限り焼け焦げた訳では無いのだが?状況から見て火系魔法では無いのだろう?」
「いや…サブマスターそれをワシに言われてもな…冒険者のスキルやマジックアイテムに興味を持っても聴くのは基本御法度じゃしな…そもそも冒険者が教えるはずも無いじゃろう…マジックワンド使ったと教えてくれただけでも良しとせんとな」
「それに粉々なのはさっきも言ったが?そもそもこのチーフテンが街に逃げようとした駆け出し達に蜘蛛をけしかけたんじゃ。坊主は蜘蛛が世界一嫌いだからパニックからの大激怒でマジックワンドの魔法弾全部使い1人で全て倒したんじゃ…といっても幾らかは森に逃げちまったが仕方あるまい。森の中までは駆け出しには荷が重いでの…」
「そうですねバラスさんの言う通り…アレは凄かったです…以前正門でファイアフォックスのゲオルさんの魔法を門の上から遠巻きで見たのですが、あの魔法に匹敵する魔法でしたよ。」
「あの杖はゲオルさんから渡されてたのかもしれませんね。確か彼はあの時一緒のマッコリーニ商団の列にいた筈なので。」
「何じゃと…それを早く言わんか!あの馬鹿げた攻撃はそれで間違い無いじゃないか。杖に込められた魔法弾の数が尋常じゃ無かったからの…それに聞いた話じゃが水魔法にはテロル様も世話になったらしいからな。
「それにしても噂に聞いた射撃型の水魔法とは極めると此処まで頼りになるんだな…ファイアフォックスに魔法のワンド制作依頼ができれば街周辺の定期討伐も楽になるんだがな…依頼が出来ないかギルド定例会議でエクシアに聴いてみるか!」
正門での一連の騒動を見ていた衛兵は、魔法からゲオルを結びつけてくれたので僕が魔法を使って殲滅した事がゲオルが作ったマジックアイテムと言うことに置き換わった。
水魔法が活躍する度にこの先もゲオルは自分の知らないところで勝手に英雄にされていくのだろう…そしてギルド定例会議で制作依頼がされた場合この話を知らない僕は絶対にエクシアに怒られる…
「兎に角皆が無事でよかった…チーフテンが居たと言う事は部族単位で移動してた事になるからな…君達衛兵もチーフテン出現の事を衛兵長にすぐに伝えて、巡回数と人員を増やす事も進言しておいてくれ。」
「私はギルマスが貯水池深部から帰ったら、すぐに危険地域の設定と銅級冒険者の討伐チーム編成特別依頼を設定するから…衛兵長が『個体状況の確認を』と言ったら解体部屋に各個体があると伝えてくれ。」
「分かりました。では城門付近において魔物の動きに今後何かあったらデーガン・サブマスターに一報入れるようにします。それでは私達は衛兵長に伝えたのち元の持ち場に戻りますので、何かあった場合すぐにご連絡を!」
「うむ…すまんな。今は鉱山のジュエルイーターの件もあり冒険者の数も少ないので衛兵の力を貸して頂きたい。双方密に連携を取ってこの街を守ろう!」
「あと、私が別働隊を率いて定期巡回を行うのでその件もな。ギルマスが帰り次第になるが創作範囲と別働隊の人員について話し合う為に彼と城門詰所まで向かうので詳しくはその時と伝えてくれ。」
「了解しました!それでは即座に我々は城門に向かいます」
そう言って衛兵達は持ち場に帰っていったが、サブマスターの話は終わってはいなかった。
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