第130話「ゴブリンの生態環境……慌てる街営ギルド」

そこから統率を失ったゴブリン達は、今までの様な動きの精密性が無くなったので盾で上手く受け止めては後ろの層で攻撃という安定策を取った。



 ヒーナは弓の使い方が上手く主に射撃武器持ちを狙っていた。



 クルッポーが衝撃波で吹き飛ばした斥候を狙って矢を撃ち込みトドメを刺す感じで遠距離から確実に魔物の数を減らしていた。



「コレで最後!ゴブリンウォーリアーだ。頼んだぜ!ゼロイック!」



「こっちも今矢を撃ち込んだゴブリンの斥候で終わり!ありがとう〜クルッポーちゃん。助かったよー!」



「見事に全部倒したな!18匹だぞ!ゴブリン18匹…連合とは言え大勝だ!なぁ?ソウマ!」



「レガント!オツカレー!間に合って良かった。俺達よりコイツらが先に来てたらヤバかったなぁ!」



「マジでそう思うよ!今日は結局運が良かったんだな俺達…多分レベル上がってるはずだ…ゴブリンこれだけ倒したからな…スライムとは経験値の桁が違うからな…お祝いつっても何時ものタコ部屋だが今から楽しみだ!ギルドの売店で鑑定紙買わないとな」



「そうね!多分私の弓スキルのレベルも上がってるはず。途中から狙いが凄く付けやすくなったし、倒した時の手応えが分かる様になったしね。」



「って事は俺たちの盾スキルのレベルも上がってるかもだな!上がってたらソウマみたいな大きめの盾が欲しいな!それ筋力いくつ必要だ?」



「皆さん18匹じゃなく24匹ですよ?さっき倒した6匹も居るんで!」



「「「「そうだったーーーーー!!」」」」



 彼等はゴブリンを合計24匹も倒したので相当嬉しかった様だ…僕達はゴブリンの遺体を1箇所に集めた後ミーナとヒーナに護衛として怪我をしていないソウマが付き添いギルドまで報告に行くことになった。



 理由はゴブリンキャプテンが街付近に居た為で、運が良ければこの遺体全てをギルド解体担当が解体部屋まで運んでくれるそうだ。



 解体が理由ではなく街のそばで急激に増えた理由を知る為だそうだ…突然群れが増える場合、個体に通常とは異なる特異点が発現するらしい。



 その発現個体数が多ければゴブリンキングの発生率が高まるので討伐したゴブリンの細部の調査が必要らしい。



「ソウマの奴…二人に手を出さないだろうな…(ボソ)」



 ソウマ達が出てからずっとソワソワしていた彼等4人は何かにつけてそんな一言を付け足す…彼等にとって今ではゴブリンキャプテンよりソウマの存在の方が脅威の様だった…



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「ミオさん!ヒロからの伝言です。『ゴブリンキャプテンと遭遇しシールドのパーティーと連合で討伐しました。街からかなり近いところで出会したので報告します。』との事です。」



「ちょ!ちょっと待ってください!ソウマさん。今日は確か魔の森外縁まで行きましたよね?東門から出てどの程度行ったあたりですか?それにゴブリンキャプテンだと断定できる根拠は?」



「私がヒロさんに言われてコレ持ってきました…ゴブリンキャプテンの首です。もし証拠が必要だったら鑑定してください。」



「ヒーナさん鑑定紙使わなくても解体担当に渡せばわかるので…コレは…頭だけでも通常よりひと回りは大きな個体ですね…」



「メフィちょっとお使いをお願いします。これを解体部屋のバラスさんに持っていき伝言を…『ゴブリンキャプテンで間違い無いでしょうか?』と聞いて来てもらえますか?…」



 ミオはメフィにバラスと言う解体担当へゴブリンの首を持っていく様に伝える。



 突然ギルドに戻り窓口に来たソウマが、ゴブリンキャプテンが街のそばに出現したと言われて慌てふためくミオに証拠となるモノを出すミーナとヒーナ。



 彼女達が慌てて説明に割って入る理由は当然で、本来ゴブリンの上位個体や指揮個体が居る場合、その周辺には多くのゴブリンが群れをなす…その時の状況を詳しく説明するのも冒険者の役目で、遭遇者は彼女達が行動を共にしたレガントのパーティーだからだ。



 それに冒険者の管理をするミオが慌てるのは仕方ない…彼女は駆け出し冒険者を管理する身であり、自分の担当している冒険者がいつなん時その群れに出会すか分からないからだ。




「それは私たちが説明します。私達が先に遭遇してたのですが、救助に向かったので報告が遅れました。はじめに遭遇したのはゴブリンウォーリアーと斥候からなる9匹の群れでした。場所は東門から出てジェムズマイン街壁が切れるジェム平原の入り口です。」



「群れの数を見て私達だけでは危険だったので、盾2人と戦士2人で戦線を維持している間に一番近い東門の衛兵に知らせる予定でした。しかし私達2人は3匹のゴブリンに追い付かれてしまい私は脚を矢で射抜かれ…そこにゴブリンウォーリアーの一撃を受けてしまい瀕死だったのですが、結果としてヒロさん達に救われました。」



「ひ…瀕死だったのですか?見た感じ何処にも異常も無いようですが…何故今は何ともないのですか?…ミーナさんは『回復が得意』とは言え瀕死な怪我までは直せませんよね?」



「そ…それは…私達は回復アイテムを持っていたんです…私が実家から持ってきた特別製の…母からは万が一の時は迷わず使いなさいと言われていたのでそれを使った迄です。そ…そんな私達の事よりゴブリンキャプテンのことが重要です!」



「そうじゃな…今はたしかにその娘の言う通りじゃミオ。アレは間違いなくゴブリンキャプテンの首だったぞ…どう言う事だ?街の近くに出たのは分かったが。まさか本当に駆け出し共で倒したのか?」



 ヒーナとミーナの説明にミオは不思議に思ったのだろうが、突然話に混ざって来た男の言葉で安否の真偽より報告を優先するのが賢明だと思ったようだ。



「バラスさん…そうですね2人が無事な以上は現状では報告が先ですね。話を遮ってすいません…ミーナさんにヒーナさん報告の続きをお願いします。」



「そ…その後、私たちを含めてレガント達の救出に向かいました…その場に居たのは6匹のゴブリンでソウマさんが助けに入り討伐出来たのですが、暫くした後に森から新しい群れが来ました。個体数は18匹のゴブリンウォーリアーが多めの群れでした。2つのパーティーで協力して18匹の群れも討伐済みです。」


「因みに私達は森の中に入ってまでは確認していません。力量不足で魔の森外縁水路の周辺が関の山なので…」


「いえいえ…ヒーナさん魔の森外縁で充分です。中に入った場合の危険は未知数なので幾ら街が近いとは言え駆け出し冒険者の皆さんは絶対に入らないようにして下さい。」



「…報告の詳細は今の説明で分かりました。そうですね取り敢えず指揮個体が居る以上、確認した周辺は危険な状況かもしれません…早速個体確認の為に解体担当の派遣依頼をします。一応ギルドマスター及びサブマスターに連絡義務があるので、そちらも同時で行いますのでそちらのテーブルでお待ちを…」


「あと先程の瀕死の件ですが、ヒロさんがリーダーされているパーティーメンバーであるソウマさんが現在一緒に行動をしている以上、嘘とは考え辛いので…それにしても無事で何よりです。」



「このゴブリンの首も言われた通りゴブリンキャプテンとの事ですし、この度の討伐貢献度を鑑みて念の為ポーション(小)の支給を人数分します。このポーションは無償で支給するものなので、怪我が完治していない場合は遠慮なく使って下さい。」



「解体担当バラスさん緊急特例事項の発生です。こちらの特大マジックバックを預けるので全個体の回収をお願いします。」



「その回収した群れの中に特異個体が居るか直ちに確認して下さい。因みに発生個体は城壁付近にゴブリンキャプテンで、ゴブリンキングに繋がる恐れがあるか周辺含め至急確認お願いします。」



「マジか…魔の森に近い貯水池深部じゃ無いのか…何て事じゃそんな近くか…すぐに用意して向かう。その他の個体の群れは見かけたのか?同行する衛兵派遣も必要か?」



「今の話では個体討伐済みです。ヒロさんのパーティーとレガントさんのパーティーの連合パーティーで討伐済みです。全部で個体数24体との事です。一応衛兵の同行を3名つけておきます帰りに一人では危険なので。」



「またヒロ達か!この間のレッドキャップといい…駆け出しなのに挑むなんて強者だな…それとも単なる馬鹿なのか…レガント達も前関わってたよな?お前らは運が悪いんだか良いんだか…あまり会わない魔物との遭遇率が多いな…まぁ無事で何よりなんだが…」



「バラスさん。今からサブマスターに報告してきます。一応サブマスターの指示が追加されるかもしれませんので用意して待っててください。行き違いになると二度手間なので。」



「おう分かった…サブマスターにギルマスの事を聴かれたら貯水池だろうと言ってやれ…ギルドマスターは今日は中型種減らすと言ってたからなアイツの言ってたことが本当なら多分貯水池の最奥部にいるぞ。」



 そう言ってミオは足早にサブマスターの元へ向かい時間にして10分そこそこで戻ってきた。

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