第113話「ギルド受付嬢の憂鬱……悲痛な顔のその理由」

相部屋は全部で5個ありその他に6人用部屋が1つあるらしい。



 その内3部屋は埋まっていた。ロズとベン、受付をしているリープとフィーナそしてザッハとゴップらしい。



 タバサは気がついてなかったが、エクシアとザッハの策略にまんまと絡み取られていた…まぁ彼女としては非常に良い結果になった様だ。



 残った9個のお弁当は、必然的に僕達5人は無条件で渡され僕だけは2個になっていた…端数で喧嘩にならないように強制で渡された。スライムの今晩のご飯にしようかな…。



 ローリィとエイミィとタバサを引き込みたいエクシアは3人にお弁当をこっそり渡すと、もらった瞬間から3人の呼び方がエクシア姉さんになっていた。



 そうこうしていると、マッコリーニがエクシアを訪ねてきた理由は先程の武器制作の件だと言う。



 エクシアの期待を他所にサブマスターのザッハが魔法契約の追加の件を話し、製作話はまたもや宙に浮く事になった…



 結局我慢が出来ないエクシアはローリィとエイミィとタバサを引き連れてマッコリーニの店に行く事になった。



 慌ただしく3人とギルマスそしてサブマスターが出ていくが僕達は呼ばれなかった。



 輝きの旋風の契約も当人の立ち合いでやらねばならないので、先に追加の3人に説明と書類サインを終わらせるらしい。



 『各店が営業終了後する夜にファイアフォックスで魔法契約の締結説明をする』とマッコリーニから説明があり、万が一にもファイアフォックスに依頼人が直接来た場合などの為に気を遣ってくれているらしい。



 一緒に行こうとしたら街を巡ってくると良いと言われた。



 ソウマは今日の戦いで思う事があったらしく、ロズに新しい盾の使い方や立ち回りの方法を教わるべく珍しく自分から誘っていた。



 ユイナとミクとカナミは傷薬用の瓶と軟膏用の缶を買いに専門店へ行くらしい…タバサの作った薬効の高い薬をゲテモノ扱いしたことを引きずっている様で、ちゃんとした知識を付けたい様だ。



 カナミは2人が薬師の素質を持っているなら、やるだけやればそのうち自分もできるかもしれないと思った様で、薬草の擦り潰しから始める気になったらしい。



 僕はソウマと一緒に行こうと思ったのだが、水っ娘とモンブランに質問があったのであえて別行動にさせて貰った。



 例の洞窟の件があったので、この人間が多くいる街にいる事で人間の穢れが2人に対して何かの悪影響がないか心配だったのだ。



 そして、それはあまり人が多い場所で聞ける事では無いのと、カナミ以外は多分2人を認識できないので敢えて僕は別行動にした。



 日暮れにはファイアフォックスに戻ろうと約束を交わして、僕はひとまず宿屋の自分の部屋を目指す…


 ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー



 ファイアフォックスのギルドを出ると、見知った顔の人が悲壮さを漂わせて歩いていた…ギルドで受付をしてくれたミオさんだ。



「あれ?ミオさん?どうしたんですか?すごい元気がない様ですが…?」



「え?…ああ!新人のヒロさんじゃないですか?如何したんですか?こんな所で…。」



「いや…すぐそこの宿屋に宿泊してて戻る所だったんです。そしたらミオさんが何やらすごく落ち込んだ様に見えたので声をかけたんです。」



 僕がそう説明すると、ミオさんは今までの話をしてくれた。



 ちなみに今は踊るホーンラビット亭のお弁当を買いに行ったらしい…夕飯には何としても欲しかったらしく店まで行ったらしい。



 当然限定数量販売の為手に入れることなど出来ず撃沈して帰ってきたそうだ。



 どうしてこんなにも欲しがっているかと言うと、今日から始まった銅級冒険者窓口で受け付けのコボルドジンジャーの依頼の件で、同じ受付の業務に当たっている窓口員の何人かが既に報酬のお弁当を冒険者から貰い食べたらしく凄く自慢していたらしい。



 実は担当者は初心者受付と通常受付に来る自分の担当を往復しているそうで、新人を主に担当するミオさんは他の人に比べておこぼれに預かれないようだった。



 ミオさんが主に新人対応をしているのかは、言うなれば説明が丁寧で愛想が良いからだそうだ…しかし今朝はお弁当の件があり他の受付員の自慢の嵐だった為かなりご立腹だったらしく、その結果口調が冷たくなったそうだ。



 ミオが窓口で担当変更が出来る話をしたのは、彼女のメイン業務が初心者窓口なので銅級に上がった場合は自分が望まない限りは他の人に担当を変更しないとならないらしい。



 そんな日に受付を済ませた僕達が山程納品するわ、普通じゃない完了報告を纏めてするわ、レッドキャップを討伐するわで新人窓口がいつもに比べて遥かに多忙だった事もあり、それを知ったギルドマスターに状況報告を…と細々せざるを得なくなった。



 だからお弁当の列に並べなかったそうだ…大変申し訳ない…


 半休を貰いラビット亭へ行くつもりが、僕達が新人登録をしたため休みを貰えず台無しになった様だ。



 彼女は踊るホーンラビット亭の熱烈なファンで、新メニューの食事は必ず朝から並んででも食べてきたらしい…それ程までにあそこの味に執着を持っているファンだった。



 今日朝から行けなかった理由は夜遅くに新メニューの発表があったので、今朝ギルドで新商品の話を聴いて呆然とした様だ…もちろんコレは発表でも何でも無い…騒ぎの張本人は僕らだ…。



 僕達がギルドを出た後、ギルドマスターに再度呼ばれて報告と確認を複数する羽目になったらしく、其れ等を急いで終わらせダッシュで夜食販売を狙って店に行ったが売り切れだったらしい。



 そんなこんなで、怨めしそうな目で僕を見るミオさんは童顔なのに怖かった。



 そうしているとビラッツが飛んできた…。



「ヒロ様〜!良かった!今ファイアフォックスのギルドに行ったら出られたと言われまして、大変申し訳ありませんが用事がお済みになったあと味見にお店に来ていただけませんか?料理長がユイナ様とヒロ様は絶対に呼んでくれと言われまして!」



「夜でも良いなら行きますが…もしかすると結構な時間に…この間ぐらいの…今からは宿でちょっと用事があって…」



「全然!構いません!御二方が来て頂けるまで店は閉めずに待っていると料理長が申してまして。」



「それが出来なければ新メニューは後日確認が出来たらだと…あの者は腕が確かで頑固なのは良いのですが…それに店以外の人を巻き込むなと言ってるんですがねぇ…いやはや…」



「ユイナ様には先程、小物問屋前でばったり会いましたので内容は伝えてあります。一度ファイアフォックスで合流してからになるから、と伺ってますので大丈夫です。」



「いやー助かります!…ん?」



「あー!ギルド受付員のミオさんじゃありませんか!すいませんお話の邪魔をして。またお時間がある時にでも是非お店にお越し下さい!」



「あ!ビラッツさんミオさんも後で連れて行っても良いですか?」



「…実は僕達の冒険者証の登録業務でお店のお弁当買えなかったらしくて、これから色々とお世話になる人なので…ちょっとポイント稼ぎしたくて!ははははは…」



「ええ!全然構いませんよ。ポイント稼ぎ結構じゃないですか!」



「このビラッツが出来る事なら何でもさせて頂きますよ。それと、ヒロ様が連れてくるご友人だったら誰であれ全然構いませんよ。」



「あっ!すいません…もう夜の部の開店時間が…お店の用意がありますのでこれにて!後でお待ちしてますね!」



 そう言ってビラッツはまたもや凄い勢いで店に戻っていった。

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