第108話「初めての金貨に…ぶっ壊れるタバサ…早く帰っておいで!?」

「ヒロ様…ヒロ様…魔石の査定及び依頼完了報告の確認が終わりましたので、1番受付の担当員ミオまでお願いします。」


 アナウンスがあったので受付に行こうとすると、タバサも後ろをついて来ていたがカナミに抱き抱えられて椅子に座らされていた。


「特殊依頼は1回の完了報告につき報酬は銀貨1枚となっていますので、5回分報告になりますと6名様分で銀貨30枚の報酬になります。」


「買取価格は銅貨20枚で150個の魔石(小)になるので銅貨3000枚になります…両替させて頂きまして、銀貨30枚のお支払いになります。」


「両方の銀貨を合わせますと、銀貨60枚となりますので、金貨に両替が可能ですが如何致しますか?」


「では折角なので金貨でお願いします…約一名飛んで喜ぶ人が居るので…」


 そう言うと、察したのかミオさんは凄い笑顔になって…


「はい、では今お持ちしますね!あの娘を面倒見ていただいて有難う御座います。やれば出来る子なのですが…自信が余りにも無い物ですから…」


 そう言って金貨を6枚ミオさんは用意してくれた。


「それでは、パーティーメンバーの皆様の冒険者証をお持ちいただける様に言って頂けますか?これから内部処理をしますので順にこの受付にお並びください。」


「6人全員纏めて並んでくださいね。」



「皆さん、報酬受け取りだそうです…ミオさんの窓口に一緒に並んでください。」



 僕はそう長テーブルの話に戻ると、特殊依頼報酬と買取金額の銀貨を2枚貰ったタバサは眺めて幸せそうだった…既に終わった気でいたのだ…本番はこれからなのに…。


 ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー


 ミオさんから金貨をもらった後のタバサの行動は怖かった…まるで支配の宝珠でもでも手に入れた様な有様だった。


 金貨を眺めては二ヘラ…として周りを伺い大切なものを入れるポーチにしまい…その場に座ったままなのに落としていないか心配になり…またポーチを開けて確認する程だった…。



 一先ずはレッドキャップの討伐部位の査定が終わるまではここから離れられないので、結果報告と自己紹介を4人の冒険者にする事にした。


 4人は、レガント(タンク)、リーバス(タンク)、ゼロイック(戦士)、バーガム(戦士)と言うらしく、今はF級見習いだがクラスを決めて既に立ち回りの練習をしているらしい…因みにまだ登録できないパーティー名を既に決めているらしい。



 彼等のパーティー名は『シールド』だそうだ…ソウマの盾さばきを見て皆で決めた様だ



 僕らの自己紹介『偽名』を教える。



 ちなみに、僕は皆にヒロと呼ばれるので『ひろし』ではなく『ヒロ』に改名したが、ユイナ、ソウマは変わらずで、理由は面倒だったようだ。


 美香はミクにしていた…カ行のなんとか活用では無いらしい。


 美香は某キャラが大好きだったようで、名前も似ているので折角ならばそのキャラにしたようだ。


 雛美は僕の発案からカナミに変えたのだが、僕らの改名理由は周りの冒険者に伝える必要はないので変更後の名前で自己紹介した。


 自己紹介を終わりを見計らったかの様に魔物の部位査定が終わる。



「オウ!待たせたな!さて今回の買取査定だが、ゴブリン2匹は指と耳そして魔石ぐらいしか買えないな…食する肉の部位もないからな…まぁ全部で銅貨30枚ってところだ…」



「レッドキャップは綺麗に部位が残っているからな!まず部位だが、赤い眼玉に鉤爪、頭髪に心臓それに後は…えっと…曲がった鼻に魔石(中)だ!この魔石はなかなか良いものでな、属性魔石だった。ここまでが部位だな。」


「部位は纏めてだと、金貨3枚だ…個別が必要なら言ってくれれば査定教えるぜ?あとな、ちなみに魔石は別だ。」


「属性魔石は滅多に手に入らないし、サイズもデカい中サイズで状態も良い…だから金貨45枚だな。」


「次に装備品だが、珍しい能力付きの物は無かったが片手斧、鉄製の靴、魔杖、血塗られた帽子で、鉄製の靴はレッドキャップが自分で魔法かけるから敏捷になるだけで鉄製なだけで能力が無かった。残念だ…でも金属製の靴は高いからそれだけで期待できるぜ!」


「片手斧が銀貨2枚で鉄製の靴は銀貨15枚だ…魔杖は銀貨7枚で血塗られた帽子は銀貨2枚だ。血塗られた帽子は魔導士ギルドで呪詛アイテムにしてくれるが…呪術師にならない限り持ち腐れだからな…この街では呪術品は買取が安いぞ?」



 皆で相談した結果全部をお金に変える事にした。



 僕的に残念な事だが、属性魔石の鑑定はしなかった…万が一にもバレると僕が困るからだ。


 金貨48枚、銀貨26枚、銅貨30枚になったがこの値段の大半は属性魔石のお陰だ。ひとまず全員で分けられる様に計算しなおすと、それぞれ金貨4枚、銀貨10枚、銅貨63枚になった。


 今回参戦した11名中ハゲの人を除く10名計算だ…初めは含める話だったが、本来この場に居ないのは貰う権利を放棄したとみなされる…と解体員が教えてくれた。



 大怪我を負っている訳では無いのであれば立ち合わない冒険者が悪いらしく、それにそもそも届け先もわからないからだ。



 パーティー『シールド』の4人は、金貨がそれぞれ4枚ももらえる事になった時点で飛び上がって喜んだ…その様を見ていた周りの冒険者も参加すればよかった…と後悔しかなかった様だ。


 タバサに討伐部位報酬のお金が分配されてからは、頭の何処かが壊れた様で…なかなかリセット出来ず現世へ戻って来なかった…


 たまに…


「うへへへへへ…」



 と急に言う物だから物凄い怖かった…シールドの4人でも「オオゥ」って反応するぐらいアレだった…。


 何故か急にリセットしたタバサは徐に…



「わ…わたし!今日は踊るホーンラビット亭に並んじゃおうかな!お…お弁当…今日くらいは贅沢しても…良いですかね?」


 と言った瞬間4人の冒険者は何か強い意志で決めたらしく…



「俺等も今日だけは行きます!今から並んできます!」


 そう言って、また明日会えたら一緒に狩場で!って挨拶して4人で仲良くビラッツの店に向かって行った。



 僕達はこの後エクシアの所に顔出さねばならないのもあり、タバサはこれからどうする予定か?と聞いたら特別予定がない様なので取り敢えず途中までは一緒に連れて行く事にした。



 宿泊先もタバサは基本的に街営ギルドの設備を使っていたのと、自分たちの泊まる宿屋も空きが分からない。



 そもそも、この世界で生まれ育ったタバサは当たり前の生活をしているので、僕らの様な散財生活をさせるわけには行かないと思ったのだ。


 なんとも仲間外れ感もあり、どうにかしたいな〜でも雑魚寝部屋は避けたいなーとか思うと堂々巡りだった。



 一応僕達が泊まるところの話はギルドを出てからする事にして、今後の予定も話したい事もあった。



 折角この世界で出会ったのだから、仲良く行動しても良いと思ったからだ。



「実は僕達は『陽だまり』って言う宿に宿泊しているんだよね…これからそこ経由して知り合いのギルドに向かうけど、予定が有れば遠慮せずに言ってね?」



 そう説明して宿屋に向かう…実は朝方充電したまま置いて来てしまって時間の感覚がわからないのだ…携帯が無いと如何にも落ち着かないのは現代病だろう。



 一応皆にはその説明はしてあり、エクシアのとこに行く前に通り道だから一度宿に寄ると話してあるのだ。



 宿屋まで後少しと言うところでエクシアとばったり会った。

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