第107話「貯水池外苑での共同戦線…共に立ち上がる戦士達」

続いて4人には…


「4人は今足にまとわりついて居るスライムを先に駆除を!」


「すまん助かる!」


「「「オウ!」」」


 ソウマの盾のいなし方が上手いのが分かったのか、すぐさまスライム剥がしを始める4人…太ももまで絡み付かれて消化液攻撃を喰らったのだろう…火傷の様な状態になって痛々しい。


「そっちの猛打してた人!僕と一緒に攻撃を。相手の攻撃の隙を突いて、腕メインであの足は鉄製の長靴です武器が弾かれる可能性があるので腕さえ上がらなくすれば、武器も杖も使えません!」


「分かった!俺が右腕やるぜ!ヒロって言ったな…アンタは左腕頼むぜ!」


 意思疎通を図った後両方一辺に攻撃する。


 レッドキャップが対処するために向きを変えれば、片方に背中を向けることになる。


 僕の攻撃が腕に突き刺さった時に、こっちまで伝わる激しい殺意で僕に攻撃を繰り出して来た。


 バックラーで一撃目をいなした後、相手の斬撃を受けない様に持っていた武器で攻撃を頑張って弾く…ベンさんに教えてもらった技だ…死ぬほど撃ち込まれ青痣だらけの辛い思い出だが…ビックリした事に今役に立っている。


 そのチャンスを見逃さない、スキンヘッドさんとソウマさん。


 スキンヘッドさんはガラ空きの背中に猛打を繰り出す…太い棍棒だがその様はまるでオーガの様で、その猛打を受けてレッドキャップは僕への攻撃が出来なくなる。


 レッドキャップが身を翻して反撃をしようと身構えると、今度はソウマのシールドバッシュで顔面を強打され後ろに吹き飛ばされる。


 僕の合図で、スキンヘッドの人がレッドキャップと距離を取りソウマが盾を構えて腰を落とすと、そこに2人のタンクが合流するさっきスライムに絡まれていた彼等だ。


 足に傷薬を振りかけたのだろう…歩ける様には若干痛みは治まっている様だ。


 僕は後退りながら距離を保つ…レッドキャップは半腰状態まで起き上がり、手持ちの斧が無いので殴った相手であるソウマに組み付こうと睨んでいた。


 レッドキャップが、ソウマに組み付くために一歩踏み出した瞬間を狙って、アナベルのロングソードをクロークから引き抜き回転しながら一閃する。


 回転の勢いのままロングソードの血を払いクロークにそそくさとしまう。そして反対の手で持っていた初心者のナイフをあたかもそれで切ったかの様に見せる為に持ち替える。


 レッドキャップの斬られた首は、動いた反動で前に放り出されてソウマの盾に当たり地面に転がる。


 突然頭部を失った身体は前に2、3歩少し歩き出すも、糸の切れた人形の様に倒れ込みソウマの足元に倒れ込む。


「お…終わったのか…?」


「おおおお!やったぜ!俺達はレッドキャップ倒したぜ〜!」


 大喜びの4人の冒険者、やっと落ち着いたので周りを見ると距離を保ってこの戦闘を冒険者達は見ていた。


 今までここでスライムを狩っていた冒険者は勿論、新たに貯水池の狩場の依頼を受けた者や倒してから報告しようとしてる者も含めれば先程よりは多かった。


 周りを見ると周辺のスライムは殆ど狩り終わっていた…。


「あ…あのオーク娘タバサがスライムを1人で…何匹も…」


「嘘だと言ってくれ!オーク娘に出来るはずがない!俺等がアイツより劣ってるはずがない!」


「悪い夢だ!絶対に!悪い夢だ!オーク娘がこんな簡単にスライムを次々に倒せるなんて夢以外ありえない!」


 そう言った出来損ない3人組は、レッドキャップ討伐を共闘した4人の冒険者にしこたま殴られて蹴られていた。


「お前等クズにタバサのことを悪く言う権利は無いぞ!彼女がスライム倒してくれて無ければ俺達も負けて、もっと怪我人が増えていた!何がオーク娘だ。前から思ってたんだ…どうしようもない屑ども!馬鹿にした奴は全員同罪だ!」


「そうだ!オークはお前等だ無能な冒険者が!彼女を見習え!あの子はずっと悪口言われてたのに…それなのに頑張ってサポートしてたんだぞ!能力を隠しているのと、能力が無いのでは全く別物だ!彼女は前者でお前達は後者だ!」


「彼女の見事な攻撃を見たか!一撃で仕留めて距離を保ち他の敵を見る観察力!見てみろ!お前達と比べてあれだけ倒してほぼ無傷だ!それにな俺達は今でも忠実に彼女の教えてくれた方法で薬草を採取している!無能なお前達とは採集スピードが違うんだよ彼女は!」


「お前達…ゴブリン相手の時一番最初に逃げたよな?『お前達が』連れ込んだ魔物だと忘れてないか?それもタバサに馬鹿にされたのが原因では無い!彼女は何も言ってないだろう!それで自分が優秀だと見せつけたいから森に入ってこのザマだろうが!」


「それなのに彼女は討伐を手伝って!お前たちが連れ込んだゴブリンの1匹にトドメを刺したのは彼女だ!礼の一つも言わずに…オーク娘だと?次言ったらお前たち全員レッドキャップに喰わせるからな!」


 4人はずっと我慢していた様だ…タバサが文句を言わない以上自分たちが言うのも筋違いだし、何より彼女が一番困ることになるのは分かり切っていたからだ。


 スキンヘッドの兄さんはそのやり取りを見て、ウンウンと頷いていた…多分タバサの事を良く思っている冒険者なのだろう。


 僕達はそれからレッドキャップとゴブリンの討伐部位を分け合う話をしようとしたが、ハゲの兄さんはいつの間にか居なくなっていた…4人に「俺は討伐部位は要らないからタバサにやってくれ」と言い残したそうだ。


 それについて、タバサが(ハゲの良い兄さん)と言ったので彼女達の間では彼の名前はこうなった様だ。



 ちなみに『ハゲ具合が良い』のか、『良いお兄さん』なのか論点になって、皆にタバサは意外と酷い人と揶揄われていた…一先ずは皆から『ネーミングセンスが最高だった。』と褒められていたので一部の人だが仲良くなれた様で良い傾向だ。



 僕は落ちていた片手斧と魔杖と鉄長靴だけは鑑定してみたところ、どれも普通のアイテムで特殊な能力は無かった。



 どれも錆びていて汚らしかったので、呪われていたら危険だと思い一先ずは知らせるためだったが…ちょっと残念な気分だった。



 結局討伐した魔物は、彼等4人が街営ギルドまで運んでくれる話になりその関係を作ったタバサには感謝だった。


 ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー


 一先ずは部位の解体に出している間に僕らは報告をする事にした。


 結局スライムの魔石は156個にもなった…辺り一面狩尽くした結果だが、明日には今日倒した数の半分くらいのスライムが押し寄せているはずだと言われた…どれだけ繁殖しているのか…街は本当に平気なのか気になった。


 魔石の端数6個は『頑張ったで賞』という事で、タバサにご褒美だ。


 6人で依頼を達成するには4人の女子が一生懸命戦ったのだから僕とそうまが貰い過ぎだと話したら、皆からマッコリーニの時の話を蒸し返された…金貨には遠く及ばないと言われて引き下がるしかなかった。


 タバサがそれを聞いた時、未知の生物を初めて見た感じで僕を見るものだから凄く傷ついた…因みに話したのは金貨を渡した部分だけで詳細は秘密だ。


「ヒロ様…魔石150個納品で…間違いありませんか?え…えーと…特殊依頼は6名様なので30個の魔石が必要です。」


「そうですね!なので特殊依頼は5回分6名でお願いします。30個を5回なのできっかり150個ですね。」


「はい…ちょっと長テーブルでお待ち頂いて良いですか?」


 大量納品に若干引き気味の担当員ミオさんだったが、職務には忠実の様で長テーブルで待つ様に指示された…戻ると一番期待で眼を輝かせていたのはタバサだった。


 どうやらワクワクが止まらないらしいので、待つ間に6個あった魔石で1回分の依頼報告が可能なので特別依頼を完了報告する様に言ったら、脱兎の如く飛んでいった…。

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