第104話「ビビるタバサ……出会った人が悪かったんDEATH!」

「ヒロ様、ユイナ様、ソウマ様、ミク様、カナミ様…買取金額の査定とノルマ完了報告がございますので受付までお越し下さい。」


「この度の納品は全部薬草で御座いました。其々の代金の銅貨300枚(銀貨3枚)に7日毎ノルマ、30日ノルマの完了を通達致します。お疲れ様で御座います。」


「次にタバサ様…買取金額の査定とノルマ完了報告がございますので受付までお越し下さい。」


「この度の納品は全部薬草で御座いました。代金の銅貨300枚(銀貨3枚)です。現時点のノルマは全て完了しておりますので引き続き計画的にノルマを完了してください。お疲れ様で御座います。」


 僕等は普通に買取金額の銀貨3枚を受け取り、今回分の7日ノルマと30日ノルマの両方の完了通知をうけた。

周りでは、「オーク娘のタバサが薬草を30束も納品して終わらせた」とざわめきが起きていた。


 しかし、僕達的には今日分の宿泊代には銀貨2枚ほど足りないのでこのままスライム討伐を受ける事にした。


 受付のミオさんに聴いたところ、この依頼は特殊依頼で単独で受けてもパーティーで受けても同じ報酬が支払われるので結果は変わらないとの事。


 そしてこの依頼条件は、登録した各メンバー分の討伐部位として魔石(小)を納品しないといけない依頼で、何度でも繰返し受けられる依頼だった。


 ソロで受ければ5個の魔石(小)が必要で、パーティーの場合は参加人数×5個魔石(小)だ。


 報酬は討伐報酬と魔石買取金額のダブルの儲けになり、勿論10個持っていればソロであれば2回依頼をクリアした事になる。


 討伐証明が魔石(小)なので提出する必要があるのだが、魔石だけに買取になっていると説明を受けた。


「それで本当に受けるのですか?もし今のメンバーで受ければ、スライムをひとり5匹の討伐が目標です…6人なので30匹ものスライムを狩る事になります。」


「万が一魔石(小)を購入し補填してと考えているならば、大きな赤字になりますよ?因みに魔石(小)はクズ魔石と呼ばれていて買取は銅貨20枚です。この値段はこの街で指定されている金額ですので何処でも買取価格は同じです。」


「クズ魔石の小売販売価格は店毎に異なりますが、平均銅貨25枚です。スライムと言えども魔物です少なからず危険はありますし、万が一依頼を遂行できない場合は罰則適用で4時進の奉仕活動になります。因みに内容は薬草採集ですよ?」


 何故ここまでスライムを危険視しているのかは分からないが、そもそもその場所にはスライムが30匹も居るのかが気になった…居ないのに討伐はできないからだ。



「はい…それは勿論わかった上で申し込んでいるし、スライムも魔物なので危険は分かるのですが…そもそも30匹ものスライムを倒せますかね。」



「そこを今言ったのですが…初心者なので一度向かって経験を積んでみて、必要数倒してから申請されてますよ?皆さん…」



「いや…そうじゃ無く…30匹もスライムがそこに居るんですか?…あ!そうか!その数がいない可能性があるって事なんですね!成程!早い者勝ちで狩る感じなんですね〜。」



「いえいえ…スライムだったら沢山居ますよ?貯水池の水質浄化の為に入れたスライムなので。今では物凄い数に繁殖してしまい初心者の戦闘経験になるので依頼にしているだけです。」



「成程!じゃあ依頼を受けて行きます。折角なのでこの際ちゃんとした形式で受けてみたいので。」



「皆もそれで良いかな?明日から交代で依頼を受けてパーティー用の依頼を受ける経験積むのには良いかもって思ったんだよね。」


 同郷の4人は問題無いが、タバサは急なパーティー討伐任務になり緊張で顔が青ざめている。


 受付のミオさんに依頼対象のジェムズマイン貯水池の事を聴いたところ、先程薬草採取で確認した東門からほんの少し北に行った場所らしいので、青ざめたタバサを連れて向かう事にした。



 幾らタバサがスライムを怖がっても、僕には妙案があったのだ…習うより慣れろだ!


 ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー


「ま…待って下さい!ほ…本当にそのスライムは攻撃しないのですか?消化液かけて来ませんか?」


「ひぃぃ…背中に!取ってください!誰か!溶かされちゃう!ひぃぃぃ…」


 今僕達はジェムズマインの街の東門から出て少し歩いた森の縁で、貯水池の討伐エリアから見て丁度中間地点にあたる…因みに今タバサの周りをスライムにぐるぐる回ってもらっている…勿論スライムは僕の使役しているスライムだ。


 このスライムにはタバサに攻撃しないように話してあり、基本的には好きな様に動いてタバサに好きなタイミングで好きな場所にへばりついて良い事を言ってある。


 その上で、それを避ける練習をタバサにはして貰っている。


 タバサには森で拾った枝を持たせている、武器のイメージとして長さもタバサの武器の長さに揃えてある。


 因みに枝ではスライムにはダメージは入らない…理由は本体がリュックの中で外の分体を動かしているからだ。


 リュックの本体はモンブランと戯れている最中だったので、スライムが気を利かせて?分体を出したのだ…モンブランに会ったせいで気苦労?が絶えないスライムだ。


 数刻程で流石のタバサも、消化液をかけて来たり溶かしたりしないスライムに危険を感じなくなり、観察できる余裕ができた様で動きを見切ってはスライムの飛びつきを躱して木の枝でツンツンする様になった。


 僕はタバサには木の枝をスライムに刺したら、すぐに引き抜き後ろに下がる様に言ってある…hit and awayの基本的な動きだ。


 ある程度動きが良くなったタバサを連れて、僕等はいよいよスライムが群生する貯水池外縁に着いた。


「おお…思った以上にうじゃうじゃ居るな…30匹ならすぐに終わりそうだね。」



 僕はそうい言うと、初心者のナイフを革製の鞘から引き抜き、リュックに引っ掛けておいたバックラーを装備する。


 辺りを見回すと、初心者と思われる冒険者が数人でスライムと戦闘しており、薬草採集の時に見かけたスキンヘッドの男もいた。


 どうやら、あの失礼な冒険者をどっかに運んだ後ここに来ていた様だ。


 スキンヘッドの男は手に持った棍棒でフルスイングする様に足元のスライムを薙ぎ払い、そして踏み潰し豪快に数を減らしていた。


 その男と僕は目があったが、男はズンズンと貯水池の水源の方へ向かって行ってしまう。


 男は一人で闘っていたが、周りは最低2人で戦い多いところだと4人もいる…まぁ僕達はそれより多い6人だが…。


 若干まだビビリが抜け無いタバサを囲む様に円陣を組み、貯水池周辺の数匹の群れに目標を定めて皆に合図を送る。


「おー?オーク娘が何しに来た?此処は薬草は生えて無いぞ?」


「「くっくっく!」」


「そうよー?スライムの消化液の傷は雑草じゃ治せ無いわよ?」


「「あはははははは」」


 男性3人のパーティーと女性3人のパーティーはタバサを見かけるなり彼女にひどい事を言うが、僕達は気にしない…寧ろ実力不足すぎて相手が可哀想だった。


 まさかのスライム相手に3人で取り囲んで倒していたのだ。


 多分手足に消化液を受けたのだろう…所々袖の部分や皮の小手の表面などが焦げていたり溶けていた。

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