第102話「偽名でドキドキ!冒険者証の発行…できるかな?」

これも冒険者としてやっていくのに最低限必要な能力なのだろう。薬草があれば最低限その使い方さえ分かれば怪我の応急処置はできると言う事で、それが出来なければ冒険さえ出来ないとを意味してると思える。


 問題は買取価格が銅貨10枚で安いと言う事だが、宿屋一泊の料金が質素な部屋でも銀貨4枚〜5枚なのでとてもじゃ無いが賄えない皆はどうやって居るのか気になったので、ミオさんに聞いてみた。


 答えは簡単で、生活できるまでは冒険者共同の大部屋で過ごすのが普通だと言われた…今むしろ僕らが何処でどう過ごしているのかを聞かれる有り様だった。


 異世界から来た僕等には考えられない生活事情だった。


 それを知った今、僕達全員が個人部屋だと言い辛くなり依頼受注に話題を変えた…僕らが今受けられる受注はジェムズマイン貯水池のスライム退治だけだった。


 薬草を集めるか、スライム退治して魔石(小)を集めて売るか位しか無いらしい…スライムは洞窟でだいぶお世話になったので苦手意識は無いが魔石(小)の買取価格が気になる。


 ミオさんは他にもやるべき仕事があるのだろう、すぐに次の説明を始める。


「街営ギルド経由の連合討伐戦に参加することも出来ますが、その場合は救護員限定となります。戦場に行き傷付いた兵士と冒険者を救い冒険者キャンプまで連れ戻す係です。危険は伴いますが必要以上に無理に魔物に近づく必要はありません。」



「自分的に可能な限り、要救護者に近づき手を貸すのが役目です。周りの冒険者が負傷者に手を貸すので基本的には中継役になります。冒険初心者でも特殊スキルの使用も認められていますので、持っているスキルが回復師向きの方はキャンプでの回復に回られるほうが有利です。」



「この連合討伐戦の参加も昇格認定の判断材料となります。ただし、自己責任ですので怪我をして休んでいては結果的にマイナスになることもあるので、その点はご注意ください。」


 今までの説明で一番意外だったのが連合討伐戦の参加許可だった。


 危険な戦場だけに初心者なんて邪魔でしかないと思ったが、街営ギルドなりの初心者なりの使い方があるらしい。


 それならばエクシア達が参加するときに一緒に行っても良いかもしれない。


 自分たちに出来る救済であれば、街に残していくよりは安心して貰えるだろうし、銅級に上がる為の判断材料ならば僕たち自身の為になる。


 その為にも、出来る限り数日でG級からF級に上がる必要がある…エクシア達が連合討伐戦に招集する前が一番好ましい。


「すいません…GからF級に上がる為に必要な内容って何ですか?最短期間で可能な方法を聴きたいのですが…」


「随分急いでらっしゃいますが、此処に来る冒険者は皆同じことを言います。しかし、ちゃんと行程を経て冒険者のランクは上がる仕組みです。取り敢えずは東門から出て薬草を30束を集められる様になって下さい。」


「それが間違い無く出来れば、最低限G級は卒業されているはずでしょう。」


「雑草と薬草の区別もつかない様では冒険者とも言えませんので…安全に旅は出来ませんしね。」


 僕はミオさんにそう言われて、目的と関係ない方向に焦りすぎている自分に気がついた。


 そもそも僕等の目標は、討伐戦に参加する事でも一流の冒険者になる事でも無い。


 元の世界に戻る手掛かりを探す為に冒険者になった方が良いだろう……と言うエクシアのアドバイスが理由だった。



 僕は焦らず安全に冒険者を目指しつつ、まずは何も知らないこの街について調べて、冒険者として馴染むことから始めよう…ミオさんの言葉でそう思った。



「そうですね!焦りすぎてました。一先ずは彼等と東門に行ってみて、薬草採集から始めてみます。」


「頑張って下さいね。初心者は雑草と薬草の区別がつかない人が多いので、周りの人達とコミュニケーションを図り採集のコツを聞き出すのも冒険者が取るべき姿ですので。」


 話終わると担当のミオさんは受付カウンターに戻って行った。


 ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー



◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇

        冒険者証


階級 G見習い2位 ギルド 街営冒険者


名前 ヒロ クラス 見習い


種族 人間 所 属


発行 ジェムズマイン  担当員 ミオ

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 僕は革製のケースに入った不思議な銅色の薄い金属で出来た冒険者証を集まった皆で見せ合う。



 名前はもちろん『偽名』である。


 この世界でS級冒険者迄登りつめた雛美の今後の事もあり変えたのだが、この世界では僕達に名前は浮いていた……なので折角ならば愛称に変えようと言う事になった。



「さぁ、目的の物は無事に作れたからこれから如何しますか?エクシアさんに報告行きます?様子見に東門行きます?それか…街の様子を見ますか?」



「取り敢えず東門から出て薬草を採集しに行きませんか?ノルマの件とは別に東門にの所にどの位の冒険者がいるのか気になりますし、薬草の取り扱い知識をロックバード村で教わったので出来れば練習の為にも薬草を多く採集して置きたいんです。」


 珍しく美香が率先して今日の行き先について希望を言った。


 いつもは誰かが言う事に対して大概は賛成派に回る彼女だが、薬草といえば自分のスキルに大きく関わる事だから気になるのは当然だった。


 当然同じスキルを持つ結菜も、率先していく事に賛成し僕も同ランクの他の冒険者がどれ位いるのか気になったので、向かう事に賛成した。



 東門から外に出るのは簡単なチェックしか無かった。何故かと言うと、この先は鉱山から街へ続く搬入路が有るだけで他の街や村に向かう通路は無い為だった。



 衛兵に薬草の自生している場所を聞いたら、街を囲う壁の周囲に沿って3区格ほど作で区切られているので門から出ればすぐに分かると言われた。


 実際に出てみれば、もう一目瞭然で森の外輪部と街の外壁に沿う様に枠分けされていた。


 一柵には5〜10人程の冒険者が薬草を摘んでいた。


 僕は門を潜ってすぐ側の柵を離れた位置から見渡すと、柵の中はあたり一面に草が生い茂っていた。


 僕は普通に見るだけでも、それが雑草なのか薬草なのか見分けが付く…何故なら目の前にある薬草は全て表記があるからだ。


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     光草 栽培薬草 薬草類


        食用薬草

  人間、ゴブリン、コボルド等、etcの知

 能のある生物が使用にする薬草。

  食用した場合、体力の回復・傷回復を

 補助できる。


  成分には回復作用があり、成分抽出す

 る事で、塗り薬や傷薬に転換可能。


  薬草の根には毒素があり、葉の先端部

 に近づくにつれて薬草として効能が増す。

  葉の先端が青い薬草は中級素材に転用

 が可能、葉の先端が紫の場合上級に転用

 が可能。


  根の部分が赤い場合、強い毒素を持ち

 服用させると相手を猛毒状態にすること

 ができる。


  LV不足により表示不可。

  魔法への触媒にも使用が可能。

作成可能  塗り薬、傷薬(小〜大)


    回復系魔法触媒に使用可能。

    異常系魔法触媒に使用可能。

    防御系魔法触媒に使用可能。


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 目の前に広がる薬草の一つを鑑定すると詳細が判ったので、一応全員に教えると雛美がそれを聴いて驚いた顔をしながら僕らに聴こえるぐらいの声量で話し始めた。


「凄いですね!そこまで詳しい薬草の情報を聞いたのは此処10年で初めてです。と言うか…過去に一度鑑定スクロールを使った事がありますが、そこまで分かりませんでした。」


「根に毒がある事は書いてありましたが、葉の特性までは初耳です。今聴いた内容の特に薬効の高い葉を見つけた場合必ず回収して、後は薬草を冒険者ランクを上げる為に重点的に集めましょう!」


 僕はうっかりしていた。目の前に元S級冒険者がいるのだ、ランクを上げる注意事項は『事務員では無く彼女に』聞けば間違いない筈だ。

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