第101話「駆け出し冒険者窓口・受付嬢ミオ」
僕等はギルドを出るときにエクシアさんに雛美以外は初心者装備に着替えていくように言われたので一度宿屋に戻って初心者装備に着替えて向かう事にした。
理由は簡単で、初心者が手に入れるにはおかしい装備だからで、これから冒険者登録する状態でレア物装備していればカモでしか無いと言う事だった。
ギルドにいる冒険者は全員が『いい人間』じゃ無く寧ろ危険視するぐらい用心した方がいい…人気の無いところで襲われても困るのは僕達だったので、初心者講習が終わりちゃんと銅級冒険者になって近隣の討伐依頼を受けてから装備したほうがいいと言われた。
僕の着ているクロークは初心者装備の外見とほぼ変わりが無いのでそれだけは羽織っていく事にした。
「すいません…冒険者登録をしに来たのですがこちらが受付でしょうか?」
「はーい…ここは銅級冒険者の受付なので貴方が行くべき場所は右向け右してー見えた入り口から入った所の見習い登録窓口ですねー」
「はい、じゃあ次の方ー」
とても事務的だった…皆で列を抜けて右手の扉の無いドアを潜る。
そこには見習い受付の看板が付いた受付が5個並んでいた。
どうやら初心者が受ける窓口は個別になっておらず、見習い登録も依頼も報告もそして買取や解体も全部子に窓口でやるらしい。
僕らが来た時間は、初心者達が利用しない時間だったらしく、ちょうど窓口が5人分空いていたのでそれぞれ並ぶ事にした。
「すいません、冒険者の登録をしたいのですが、こっちだと言われまして…」
「はい、そうですよ。ではここに名前を書きましたら、登録料及び冒険者証の発行に銀貨5枚必要になりますのでお納めください。」
「はい、確かに銀貨5枚頂きました。ではそちらのテーブルでお待ちください…処理したのち初心者説明をさせて頂きます。」
そう言って、事務のお姉さんは淡々と事務をこなす。
僕がテーブルに向かい椅子に座って待っていると、受付の窓口を戸板で閉めてこっちに来て初心者冒険者の注意事項を説明する。
因みに僕の担当は(ミオさん)と言う若い女性で、名前は渡された僕の冒険者証の担当者欄に名前が書かれていた。ショートカットですごく童顔な顔つきで実年齢はわからないが、もしかしたら僕や美香そして雛美と同年代かもしれない…
「こんにちわ、私は初心者冒険者証を発行したミオと言います。よろしくお願いします。」
「まず初めに、冒険者証を無くした場合の発行権限は私になりますので、無くした場合は速やかに申し出てください。紛失時は再発行手数料5銀貨に、前冒険者番号の抹消に銀貨5枚で合計10枚必要になります。」
「尚、担当者が私から別の者に変わる場合は、そちらに書いてある私の名前は自動的に変更されます。」
「この冒険者証で使えるのは、依頼受注、依頼完了報告、ギルドショップの利用、討伐魔物の解体及び買取、依頼発注、掲示板利用、初心者用ギルドフロアの利用、模擬戦場の利用、訓練場利用、装備の修理、初心者講習再受講、適正武器判定、臨時パーティー募集、街営ギルド連合討伐戦の参加です。」
「銅級冒険者より上位の使用権はそちらの冒険者証にはありませんので、ご注意ください。」
僕は矢継ぎ早に言われて若干混乱したが、要は僕の冒険者証で出来る事と、再発行の件だ…冒険者証を無くさなければ必要ないし、担当者が変わる部分だけ注意すれば良いだろう。
使える項目はこれから必要になり次第その都度確認しよう…ミオさんは僕の事などお構いなしに質問を受けるそぶりも無く続ける様だ。
「次にノルマの説明ですが、見習いの場合守るべきルールがあります。破った場合はゼロからやり直しになるので要注意ですので必ず覚えていて下さい。因みに、初心者冒険者には7日に一度のノルマ、30日に一度のノルマがあります。」
「このノルマをこなす事でポイントが付き、ランクが上がります。ランクと言うのは冒険者の格の事で、見習いは、G級、F級と上がります。GからFに上がる際は実力テストは有りませんが、F級から銅級冒険者に上がる場合は冒険者に相応しい行動ができるか複数の審査があります。」
「毎日ノルマを熟すべく計画して活動して、最低限30日間ミス無くノルマを熟せば誰でもF級迄はなれますが、F級の冒険者見習いから銅級へは審査が数回に分けて行われます。」
「その審査に受からなければ何日過ごしても銅級冒険者には上がれませんので、F級になった場合にはそれなりの冒険者になる為の学習と判断と経験を積むように行動してください。」
「怪我や病気などで日を開ける場合は、必ず受付に一時停止期間の申請をして下さい。一時停止申請の様な報告は今後も冒険者を続ける上で必要な基本事項となりますので、必ず報告の癖をつける様にしてください…そして決して忘れないようにして下さい。状況報告も冒険者の義務なので。」
「ノルマがこなせない場合は、連絡ミス3回でF級に居てもG級に降格されます。銅級冒険者は見習い冒険者のランクに降格する事はありませんが、状況によっては登録証抹消になり最初からやり直していただく事になります。尚、G級からの降格は有りません一番下なので。」
「銅級からの登録抹消の場合、登録料は金貨5枚になります。冒険者不適合者扱いなので非常に高いですが、あくまで不適合認定での罰金適用なので、そのほかの再発行費などに至っては通常通りの銀貨10枚です。」
ここで、注意するべき内容を話のトーンを変えずにミオは淡々と話し始める。
冒険初心者にはノルマがあるらしく、主に基礎的な実力などを付けるためだろう…ゲームで言うとチュートリアルに当たるのではないだろうか?
問題は当面一週間のノルマだろう…それを熟さないと30日のノルマに差し支えが出そうだ。
銅級ペナルティの登録抹消については特別理由を言わなかったので質問してみたら、銅級に上がった場合の注意事項なのでその時担当者から別途説明があるそうだ。
僕の質問に答え終わるとミオはどんどん先に話を進める…マイペースな娘だ。
「先ほど話した各ノルマの件ですが、あの掲示板に常に張り出されています。」
「初心者への毎日の基本依頼は、『薬草1束の採集』です。」
「薬草は採集すれば分かりますが、3〜4本纏まって必ず生えています。それを10本に纏めたものが依頼の1束です。」
「そして7日に1度のノルマは薬草7束採集で、毎日1束忘れずに納品すれば7日目には完了です。そして30日に1度のノルマは薬草30束の収穫です。此方も毎日必ず納品すれば完了しますが、纏めて30束持って来れば1日で完結する内容となっています。計画して頑張るか、纏めてやるかは冒険者としての判断で構いません。」
「因みに万が一1日で30束を纏めて持ってきた場合は、7日に一度のノルマとしてもカウントされますが、7日ごとのノルマを4回分完了した事にはなりませんので注意してください。なので必ず7日ごとに納品する癖をつけて下さい。」
「一度に30束に近い数を納品すれば、早くノルマが完了となるので1日かけて多くの薬草を採集する方も多いです。薬草はこの街の東門から出た場所の柵分けされた区画で採集できます。採集場所は街の外なのでたまに魔物も出るので注意して採集してください。」
「中には雑草もあるので、『薬草と雑草を間違わずに採集』してください。採集後此方に持ってきて依頼の完了を報告して頂ければ私共が選り分けます。雑草はカウントされないので出来るだけ多めに採集することをお勧めします。」
「尚、採集した薬草についてはギルドにて買取になります。薬草は1束につき銅貨10枚で、雑草は鉄貨1枚の買取金額です。」
薬草の採集が初心者がやる一番最初の基礎特訓であると言う事は説明されなくても分かった。
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