第80話「悪質ギルドの悪巧み『襲撃』」

「オイ!よく見てみろ!アイツらは!あの襲ってきた村にいるはずの村人で、女子供だけだ!兵士は門番2人じゃねぇか!それも!あの門のとこにいるには!男爵の妻だ!捕まえれば誰も手が出せねぇよ!運はこっちにある!」



「いいか!お前ら…俺が全部うまく話をするから、合図したらあの門番の意識を奪え!まだ殺すなよ!やっちまったらあの村人どもが騒いで逃げられたら後々厄介だ!」



「宝を頂いたら、全員奥の部屋に閉じ込めて外から施錠して屋敷に火を放てば火事で死んだことにできる!」



「本当じゃねぇか!少し焦ったがついてるな!ギルマスの言った通り男は全員鉱山で魔物狩りだ!これならやれるぜ!」



「それにみろ!お誂え向きに馬が留められてる!3頭だ!宝奪ったらあの馬でトンズラできるぜ!ツキの女神が俺らについてるぜ!」



「それに俺らが殺すんじゃない…火事だからな!たまたまあの篝火が燃え移っただけだ!俺らのせいじゃない!いいか!門番との会話は俺に任せろ!口開いてヘマすんなよ!」



「大丈夫だ!話は任せるぜ!ギルマス〜俺は右の兵士をオネンネさせるぜ!」



「わかった!じゃあ俺は左の兵士な!オネンネさせるのは慣れてるからな!任せとけ!頼んだぜ!ギルマス!」




「じゃあ、俺は誰かがあの馬を逃さないように牽制しとくぜ!」



「そうだな!馬が大切だ…逃げ切るには…絶対村の女共には触らせるなよ!じゃあお前等行くぞ!」


 ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー


 男爵邸から様子を伺う4人は打ち合わせをして、陽が高い時間なのに男爵邸に近づく…一切の事情を聞いていない上にテロルの慌てふためく様を見ていたフロウティアは何の疑いもせずに男達に話に耳を傾けてしまった。



「大変だ!お嬢様が大変な目に!」



 衛兵の2人が彼等を止めようとするも、その言葉に我を失ったフロウティアは無用心にも衛兵に下がる様に促す…それを見たゲルゲの部下2人は衛兵の側にそれとなく寄っていく…。



「何ですって!無事なのですか!娘は!」



 無用心に近づく様を見たゲルゲは、フロウティアが手に届く位置まで近くのを確認してから仲間に合図を送る。


「「グア!ガハァ!」」


 衛兵2人がゲルゲの部下2人の強打を浴びてその場に倒れ込む…その兵士の手を器用に時間の無駄なく縛り上げる部下2人…そして直ぐに剣を抜きフロウティアの喉に剣先をむけてゲルゲは言う。



「悪いな!アンタの娘は既にウルフの腹の中だ!まぁ心配するな!直ぐに逢えるさ!金も無くなり落ちぶれて遭わざるを得なくなる!」



「俺等はアンタ達が住む屋敷の金に興味があってな!それを頂いたら大人しく消える!下手に騒げば周りの奴から死んでいくから…大人しくしてろよ?」



「周りの奴らもわかったな!お前等が騒いだらこの女の耳がまず無くなる!順番に色々無くなるぞ!耳の次は綺麗な目玉で次は鼻だ!黙って言うこと聞いてたらコイツもお前等も生かしておいてやる!」



「わかったら!さっさと全員屋敷の奥へ行け!そこの執事みたいな奴!空いてる部屋にこいつ等全員連れて行け!宝の無い部屋に連れて行けよ!1Fの出来るだけ狭い部屋だ!」



 執事が奥へ村人を誘導していくと、その後を距離を置いて着いていくゲルゲとその仲間達…同時に僕らが異変に気がつきドアを開ける…テロルとゲルゲは最低な再会だ…。



「なぁ!何で!テメェが!ここに居る!テロル!」


「そうか!あの子供達を見殺し死したな!お前も俺と同じじゃ無いか!1人だけ生き残ったんだろう?勝てないと見て逃げてきたのか?何だ…こっち側に来るか?今人員募集中だぞ!お前ほどの装備と力量があればこれから向かう国で新しいギルド作ったら特別にサブマスターの席を用意してやるぜ⁉︎」



 その言葉を聞いてびっくりして声が出ない男爵夫人…今にも殺しそうな目でテロルを睨んでいる…多分見殺しにしたと本気で思っているのだろう…あの狼狽した姿を見れば仕方ないかもだが…ちょっと可哀想だ…この2人に話が終わったら後で助け舟を出してあげよう。



「ゲルゲ!お前自分がやっている事が分かっているのか!男爵様に奥様その2人に手を出せば縛り首だ!観念しろ!フロウティア様をすぐに離せ!」




 テロルは男爵夫人を何とか救いたい様で、挑発に乗らず何とか自制している様だ。




「おっと!そうはいかない!最高の手駒があるんだ!俺の手にはな!宝と金目のものを門のところまで持ってこい!お前ら!予定変更だ!門まで引くぞ!宝を受け取ったら馬に乗ってトンズラだ!」



「「「おう!」」」



「娘達を見殺しにしたお前達など!許しておくわけがない!地の果てまでも追いかけて!八つ裂きにしてやる!貴方!お金など1鉄貨さえも渡さない様に!そのお金で娘達の無念を!絶対に!」




 おおっと!やばい…待ちすぎた!奥様死ぬ気だ…決して入口などに行かせぬものか…と言う口ぶりでこの場に引き留めている。




「娘ちゃん達なら今頃ファイアフォックスのギルドで山盛りの何かを食べながら、沢山の飴ちゃん頬張って幸せになってますよ?お母さんとお父さんに逢いたいって言ってたからもうすぐ会えるんじゃ無いですか?後ろの人さえいなければ?」



 僕が咄嗟に言った言葉に…エクシアが大笑いするも咳払いをしながら説明し直す。



「申し訳ございません。私共は冒険者なのでマナーが行き届いておらず…失礼の程お詫びいたします。」



「奥様ご安心を!御令嬢ならもう既に安全を確保しています。私たちのギルド、ファイアフォックスにて護衛中です。」



「夫人もご存知の『飴』を食しながら奥様がいらっしゃるのをお待ちしていますのでどうぞご安心を!」



「後この者の話し方にご無礼があった事はご容赦願います。男爵夫人のご様子から急いでお知らせした為つい話し方が雑になった様です。」




 さすがエクシア姉さん!フォローがうまかった!



「嘘だ!幾らファイアフォックスの冒険者でもフォレストウルフの巨躯8匹の群だぞ!そう簡単に倒せるものか…それも!日が落ちてあの足場で!相手などできるものか!」



「嘘ではない!現に我もこうして生きている!あの場に居たもの全員無事だで、誰1人死んでなどおらんわ!」



「ゲルゲ!お嬢様達の護衛を請け負っておきながら…護衛を拒否し!その上、男爵夫妻に危害を及ぼすなど!我に騎士爵位にかけてお前は生かしてはおかぬ!覚悟しろ!」




「えーと…ウォーターバレット?…どう?信じた?」




 僕はテロルが無事講釈を終えたのを見計らってお仲間3人の肩口に水魔法を撃ち込む…信じていなかった様なのでせっかくなので見せてあげよう!



 ゲルゲには抱える様にしているので万が一剣が夫人に刺さっては大変だから撃ち込めないが…あの3人なら角度的にも誰も側にいないので平気だ…両手で拳銃の形を作って撃ってみる。



 右手に2発左手に1発を水の弾丸最小で生成して肩に撃ち込めば、命までは失わないだろうし骨位はいっちゃうだろうから武器は振るえないだろう…と思ったが失敗だった…男爵家の部屋を血で汚すことになるのを忘れていた。




 3人が突然の水魔法を肩に喰らい若干後ろに吹き飛んだ後のたうち回る…エクシアもロズも(何してくれてんの!って顔で見ている)男爵と夫人は突然の有様に声も出ない様だ…先制攻撃って言うからアリかと思ったら無しだった。



「お!お前やりやがったな!…くそ!この夫人がどうなってもいいのか!お!お前ら!さ!さっさと起きろ!門まで引くぞ!」



 門のところまで下がっていくゲルゲとその仲間達…仲間達の肩は防具があったので意外とひどい状況ではなかった…防具がひしゃげて少し痛々しい傷が覗き出血が若干多い感じだがそれで死ぬことはないくらいの裂傷だ。



 奪ったポーションでもかければ平気だろうと思っていたのだが…ポーションを使う気配がない…まさかテロルの所に同行した輩とは別なのだろうか?



 しかし、僕らが予想してない状況に発展する…門付近には新たに4人の冒険者が居た…その顔を見たゲルゲは驚きながらも不敵に笑い始めた。

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