第79話「予定外……喜ぶテロルに苛立つギルド番犬」

「おい!テロルさん。あーいや…騎士テロル殿…男爵邸が見えたぞ!どう言う事だ…襲われている形跡なんてないぞ!」



「ロズさん!この際呼び方などどうでもいいですよ!気にしません!…それより無事でよかった!どういう事でしょうか?まさかあの魔物の別個体に本当に出くわして逃げたとかでしょうか?」



 男爵邸からまだ若干遠いが争っている様には見えず、皆陽気に笑い踊っている者までいる。



 ロズの言う通りウィンディア男爵邸は平和そのものだった。村人が陽気に踊る様は自分の村の現状を知らぬが仏というべきか…村が襲われていた事を知ればこうも踊ってはいられなかっただろう。



 男爵領のあの村を見た時点で僕はそんな事になるんじゃないかと思っていた…テロルさんを裏切って街まで戻って、それからかなり手薄になった男爵邸を襲い金目のものを物色した後に足のつかない経路で逃げ切るなんて日が登る前には無理だ…絶対に誰かの目に留まる。衛兵であり村人であり、農奴もそうだ…それも彼等にとっては予想外の村人の男爵邸への避難もあるのだ。



 まず彼らとしては絶対に目撃されてはならない。何故なら男爵に危害を及ぼすのだから知られていいはずがない、ならば陽の高いうちは絶対にあり得ないだから基本的にはやばい事をする人は夜襲という手を使うのだから…見られた場合にはその承認を消す必要も出る。



 わざと時間をずらして昼間にテロルの件を報告し夕暮れから夜にかけて男爵邸を強襲するなら分かるが、既に門の衛兵には報告済みなのだ…テロルの訃報を聞いた衛兵的には既に約半日にもなるのだ男爵邸から救援部隊や伝令が出てそろそろ門につかないと、衛兵が不審に思うとゲルゲは考えなければならい筈だ。



 ジェムズマインの正門で番犬のギルドマスターと数名が『閉まっている』門を開させて、テロルの訃報を話した事を僕は雑談がてらに衛兵から確かに聞いていた…であれば制限時間が限られる彼等が実行する時間は既に過ぎた夜中過ぎから夜明け迄になる。



 ゲルゲの行動が遅くなれば衛兵が心配して男爵邸に手の者をよこすのは目に見えている…何故なら男爵の令嬢が危険なのだ救出部隊を編成できない街側は男爵の指示を仰ぐのは当然だから。



 その上で今の時間で此処にいないと言うことは、もう逃げたか本当に無計画に別の村を襲っているかだ…あとは予定外の魔物に遭遇して大変な目に遭っているかだ…。



 もしかしたらゲルゲは本当にテロル達の身の安全を?との考えがよぎったが…男爵が所有する街の別邸と村が襲われていたのを思い出し、その可能性を排除する。



 あの村を襲った時点で彼等は無計画に経路の村々を襲っているとしか思えなかった…街の備蓄やら金目の物を漁る小悪党のやりかねない手口だ。



 そこで、僕はテロルさんにあの村に一番近い村はあるのかきいたら…男爵邸からはずれる位置になるが、あの村からは近い位置に他の村があると言っていたので…多分そっちに行ったのではないかと思ったのだ。



 そこで質問を変えて、その村には村人は居るのか、それとも前の村と同じく男爵邸に避難中かと聞いたら後者だと言う。



 男爵邸が無事なので、僕はその可能性をエクシアさんとテロルさんに思ったまま話す。



「他の村を襲っている可能性がありそうですね…多分ですが。他の村を襲っているのであれば、もうじき来るのではないでしょうか?夕暮れも近いですし…襲って逃げるなら暗い方が安全に逃げれるでしょうしね…多分直行した分僕らが鼻差で早かったんでしょうね…ロズさんが言ってた、『うっかり寝てくれた』のも今の僕らには有難い誤算でしたね。」



「そうだねぇ…ロズが言ってたように…バカの集まりで助かったね!」



 結果僕らが着いた時点では男爵邸はエクシアとテロルの思っていた様な事にはなっていなかった…僕らは軽く状況確認で話して男爵邸に急ぐ。



「テロル様じゃ無いですか!てっきりもう旅の途中かと!あれ?お嬢様方はどこに?」



 呑気にテロルを見て話しかける村娘にテロルは掻き分ける様に奥に進み男爵たちを探す。



「ちょっと通してくれ!ウィンディア男爵様!フロウティア様!どちらにいらっしゃいますか!テロルです!騎士のテロルです!」



「ど!どうしたのですか⁉︎テロル!貴方娘達と一緒に水精霊の村まで既に出た筈では?」



「おお!テロルでは無いか!村へはどうしたのだ?…娘達はどこだ?どうした何事だ⁉︎その様子…娘達に何かあったのか!」



 今までにこやかだった夫妻だが、テロルの必死の形相に異変を感じてすぐに奥に行くように促す。



 直ぐに男爵は奥の間に僕達一行を通しひと払いをする…村の住民もこの男爵邸に避難して居るのでテロルの様を見て若干騒ぎになってしまっている。



「フロウティア!村の者達を沈めるように!そしてこの事は他言せぬよう言ってまわれ…娘達の事も気にしてくれている村人が多いはずだ…心配をといてやってくれ…彼等も心配だろうが今は私がテロルから話を聞かねばならん!」



 そう言って男爵は妻に外にいる村人達の世話を任せる…妻は自分の娘達の身を案じながらも、親身に心配してくれている領民を宥めに行く。




 一部始終を話すテロルに男爵は耳を傾ける…




「な!何と!ウルフ8匹だと!逃げ去るとは…あのどうしようも無い奴を信じた我が愚かであった!では私達の可愛い娘達は!無事なんだな?怪我は無いのだな?」



「はい主人様、此処にいる大魔道士様がお助けくださいました…それは素晴らしいお手並みでした。それでその…その件でも一つお願いが御座います…。その…この方に関する一才を他言しない為の魔法の契約を…」



「何だ!ハッキリ言ってみなさい!娘達の恩人だ!出来る限りの礼はしよう!」



「いや!テロルさんまだそれより事件は解決してませんよ!今直ぐ手を打たねばアイツらは此処に押し入る気なのですから。」



 僕は男爵様には申し訳ないが、うかうかして居られないのでテロルさんの話を遮り男爵に話しかける。



「失礼を承知でお話しさせて頂きます。先程お話しをしました悪漢がこの男爵邸に押し入ろうとしているのは、現在進行形なのです。ですのでいち早く対処するべきかと…門前の村人は彼等に対抗する手段は持っていないので、一早い避難を。」



「奥様も何かがあってからでは遅いので…直ぐに此方に避難を指示してください。出来れば守衛に門の警護を!」



「そ!そうであった!男爵様!その通りで御座います。門は我も衛兵と共に固めますゆえ今は奥様を!」



「た!確かにそうだな、まだ解決してはおらなんだ…ここでも我は迂闊であった!では…門を閉めて兵に守らせねば…」



 男爵が奥さんを呼び寄せ、門を閉める指示をしたのだが入り口では既に状況は一転していた…僕らが奥で男爵に事情を話している間にゲルゲ達が到着していたのだ…。





 ゲルゲは男爵邸を見て内心焦っていた…何故か沢山の人間が居るのだ…兵士は出来る限り出兵させる命令だったので少ない筈だったなのに…この人数はおかしいと。




「オイ!ギルマス話がちげぇよ!何だあの数!勝ち目がねぇよ!」



「くそ!街の別邸やってれば稼げたのかよ!」



「お前が、あんなチンケな村に構ってたからこんなに人が来てるんだろう!衛兵が知らせたんだ!」




 部下3人の言い合う言葉に混乱するゲルゲだが…よく見てみれば衛兵はおらず全部村人のような格好だ…それも観察すればするほどよく分かる…全員女子供でそれも年寄りか子供だった。


==登場人物・用語集==


人物紹介1


野口 洋 学生♂高校3年生


石川 美香 学生♀高校2年生 金貨94


黒鉄 そうま 消防士♂27歳 金貨94


伊澤 結菜 看護師♀ 24歳 金貨94


遠野 雛美 学生♀高校2年生 金貨494枚 銀貨




『精霊』


モンブラン(性別不明) (聖樹の精霊)

水っ娘ノーネーム(水の精霊)


『ギルド』


『ジェムズマイン 街営ギルド』


テカーリン♂(ギルドマスター)

デーガン♂(サブマスター)


ミオ♀(ギルド事務員)(駆け出し)

メイフィ♀(ギルド事務員)(駆け出し)

バラス♂(解体担当)

イーザ♀ (ギルド事務員)(銅級)

コーザ♀ (ギルド事務員)(銅級)

オレンジ♀(ギルド事務員)(銅級)

フロート♀(ギルド事務員)(銅級)





『ギルド・ファイアフォックス ギルド等級 銀3級』


紅蓮のエクシア R「ギルドマスター」♀ (銀級2位)

ロズ(戦士・タンク)♂銅級3

ベン(戦士)♂銅級3

ベロニカ(弓使い)♀銀級3

ゲオル(魔法使い)♂銀級3


ザッハ「サブマスター」♂

リープ(事務員)♀

フィーナ(販売員)♀

ゴップ(解体担当)♂



『ギルド・番犬』


ゲルゲ(ギルマス)





『商団・商会・商店』


マッコリーニ商団


パーム(妻)♀(店長)

レイカ♀(娘)

ハンス(執事)

御付き1♀

御付き2♀


売り子A♀

売り子B♀

売り子C♂

売り子D♂






食事処「踊るホーンラビット」


踊るラビット欲張り弁当 銅貨55枚

(依頼報酬 弁当4個 額 銀貨2枚 銅貨20枚)


ビラッツ(支配人)



宿屋「宿屋 陽だまり」1日銀貨5枚(食事、風呂付き)

亭主♂



『貴族』



『クリスタルレイク家』


ウィンディア男爵(父)

フロウティア(母)


マッジス(執事)


アープ(長女)

イーファン(次女)双子

ウーファン(三女)双子


騎士 テロル

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