第75話「焦るテロル…泣き出す三姫…こんな時はそうだ!飴ちゃんだ!」
そんな事が起きているとは知らないエクシアは…到着後マッコリーニの商店前まで同行し黒落花生の主人と一悶着した。
「それではエクシアさん!これでサイン完了です!大変お世話になりました。妻にレイカの元気になった姿を見せたらすぐにファイアフォックスへ向かいますので、今暫くギルドでお待ちください。」
「長旅の疲れもありましょうが、今暫く…それでは後ほど!」
マッコリーニさんしっかり書類にサインしてお礼を皆に言ってからレイカ達と店の暖簾をくぐり入っていくと…奥さんを呼ぶ声と楽しい談笑が外まで聞こえていた…。
「パームゥ!パーム!帰ったよぉ〜………」
「おかーさん!ただいま戻りました!これお土産です!綺麗な貝殻浜辺で集めました!」
「レイカ!大丈夫なのかい!気分は!まぁまぁ!こんな元気になって!」
僕らはマッコリーニさんの奥さんが切り盛りするお店へ荷馬車を無事届けたので、ファイアフォックスに向かう。
僕らにとってはじめての冒険者ギルドだ。
よく映画や異世界小説などで見るが、実際見るのは緊張が入り混じり変な感じだ。
外見は一見有名チェーンの珈琲店の様な作りで……こう……もっとファンタジーなイメージ予想だったが中に入ってみるとスタイリッシュな感じだった。
「びっくりしただろう?実はこの物件飯屋だったんだよねーもともと…でもね店長が辞めるって言うんでさ、そのまま酒も提供できるしちょうど良いじゃ無いかって事でそのまま看板つけて使ってるんだよ!机も買わなくて済むしな!カウンターも既にあるからそこに新しくチョイチョイっと付けるだけで済むし」
エクシア姉さんはめっちゃ適当だった……しかしそれより気になったのは何故か奥の席にテロルが座っている…。
「待ってたぞ!どうした何故こんなに時間がかかったんだ!エクシア・フレンジャー!門を潜ってすぐに帰ってくると思ったぞ!」
「ん……んな!何言ってんだい!あんたもう男爵のところに帰ったんじゃ無いのかい?何でここにいるんだ!それもお嬢ちゃん3人も一緒に!」
エクシアは黒落花生事件をかいつまんで説明する…刺客が送られてきた所からついさっきまでの流れを……その話を聞いてテロルは納得はしたが焦燥感は消えていないし、3人の令嬢は今まで泣いていた様で目が腫れている。
「その詳しい説明は後だ!男爵が危険なんだ助けてくれ!頼む!」
「お父様が危ないって!今衛兵の人が来て教えてくれたの…お父様に会いたいぃぃぃ…ううう…えぐ…ぅぅぅぅぅ」
「おかぁ様は何処にいるんですか?……えぐ…ぅぅぅぅぅおかぁ様…ぅぅぅぅぅ」
「おかぁ様…ぅぅぅう…お父様………うううぅぅぅ…えぐ…ぅぅぅうえぇぇぇ…」
「オイ!テロル!騎士だろう!情けない顔してんじゃ無いよ!番犬の奴らはもう男爵邸まで押し入ったって事かい?」
「この街にある男爵別邸が襲われたんだ。あそこはこの街の衛兵が守衛として護っているからなんとか3人は捕らえたが……7名の行方が掴めない!問題はそこだけじゃ無い!」
「衛兵が早馬を出してクリスタルレイク領の男爵邸に知らせに行ったんだが、途中に魔物が居るらしいんだ……並の衛兵では太刀打ちできず大怪我を負って帰ってきた。」
「だから……空でも飛べない限り男爵邸の様子はわからない!」
「な!なんだって!どう言う事だい!魔物が?なんて魔物なんだ?あそこは平野が続くはずだろう?確かに魔物は平野にも出るが…衛兵が敵わないって…アタイらも番犬の話を少しは話を門で聞いたが…あ!門の事はありがとう助かったよ!」
「助かって何よりだ!アレがなければもっと遅くなっていたな…本当に言っておいてよかった…いやそれよりもだ!その魔物の事だがウルフ系でもゴブリンでも無いらしい…衛兵が言うには見た事もない魔物だったそうだ!」
「何か知らないか?特徴は確か…」
「緑色で体躯は細長く気色悪い三角形の顔をしていたらしい!そして何より素早く兵士はやっとの思いでそこから逃げたらしいんだ!フォレストウルフに効く煙玉の効果は全く示さなかったらしく…」
「今はポーションを使い傷は癒えたが…一撃で鎧のない部分は見るも無残な傷が…」
「急がねば番犬の件もあるし…万が一そんな魔物があのクズを追っていき…邸宅を襲ったら!ひとたまりも無い!今あそこには村人が避難しているはずなんだ!」
「番犬のやつが喰われても自業自得だが…男爵を救えなければ!…く!…」
テロルの話を聞いた3人娘の泣き具合がより一層酷くなる…余程父と母が心配なのだろう…この年であれば仕方ないのはわかるが流石に空を飛ぶ事は僕はできないし…。
「空なんて魔物か鳥くらいしか飛べないしね…困ったもんだ…なんにせよ装備整えていくしか無いね!」
エクシアのその一言でギルドメンバーの皆はそれぞれの用意を始める。
すると…
「身勝手なお願いだと十分承知の上でお願い致します!大魔導士様!何卒!何卒!前見せて頂いたお力で!我領主をお救いいただけませんか!お願い申し上げます!」
いきなり僕の前で土下座し始めるテロルに兵士も一緒に跪く…そして3人娘も真似しようとするので…
「大丈夫です!手伝いますよ!僕でできる事なら!」
そう言ってテロルさんと兵士の間を縫って3人娘の所まで行くと、跪こうとしている3人をすっとお越して椅子にすぐさま座らせる…僕はクロークの中から必殺飴ちゃん業務用袋を出す。
「いいかい?僕が帰ってくる頃にはちゃんとエクシアさんとテロルさんが全部綺麗にやっつけてくれるから!コレ食べて待っててね!いくら食べてもいいけど、食べるのに飽きたら〜ちゃんと歯を磨くんだよ?わかった?」
取り出したのは在庫豊富な200個も入っている色彩豊かなフルーツミックスアソート袋だ。
見た事も無い綺麗な飴と膨大な数に目を輝かせる3人…そして泣き止ませる為に袋ごと出してしまった事に僕は気が付かないでいた…。
「そうだよぉーこのお兄ちゃんはちょーっと変な事やってあっという間に全部ぶっ倒しちゃうから大丈夫!緑色のよく分かんないものなんてお兄さんが前に見た黒いグチャグチャの魔物より全っ然!怖く無いから!緑だしね!」
何故か酷く穢れた存在の話をし始める…そうま…それ言っちゃいけないやつ…
「よし!お姉さんがまた美味しい夕ご飯作ってあげるから!ここで待ってようね?今日はそうだな〜フォレストウルフの(胡椒ありますよ!良ければ?)…」
「うぉい!なんでもっと早く出さないんだよ!アレだけ調味料がぁって!言ってたのに最高の調味料持ってるじゃ無いか!あとこの飴こんなにあるなら溶かして砂糖に代わりに風味豊かな甘味に使えるじゃないか!帰ったら…しばく!」
「「「オネェちゃんが怖い〜うぇぇぇぇぇぇぇん」」」
結菜さんは食事のことになると豹変するらしく怖かった…子供も怖かった様だ…そして何より僕が一番怖かった。
僕らのその話を聞いていた美香は、自分の無力さに何を言おうか考えて俯いていたところにクルッポーがしきりに美香の指輪をつつく…
クルッポーの様子で僕はあることを思い出して、声に出さずに美香のつけている指輪を鑑定する。
◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇
フラウのサモナーリング (⭐︎⭐︎⭐︎)
(アクセサリー:リング) 防御(10)
マジックアイテム
特殊効果
テイム 鳥類・鳥類種(魔物)1個体のみ
サモン 鳥類・鳥類種(魔物)契約種のみ
鳥類 鳥類系(魔物)と契約可能
鳥類・鳥類種(魔物)と契約を交わす時に
必須。
鳥類・鳥類種(魔物)の絆が深くなると意
思疎通がしやすくなる。
フラウは生前多くの動物や魔物と心を
通わせて絆をつくった。
相手の気持ちを理解する事でよりその
個体のポテンシャルを解放することがで
きると知った彼女は各動物を模した1つ
のリングを作った。
鳥類・鳥類種(魔物)のリングは彼女が
2番目に愛する動物の為に作った指輪で
ある。
◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇
「あ!ありがとう!ファイアフォックスの皆様に!魔導士様!本当にありがとう!この礼は必ず我が騎士の名に掛けて!」
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