第43話「村長に無理をさせちゃいけません!」

そんなこんなで地上に出てきて村長宅に向かうエクシアさんと僕……内心何故僕も?と思ったが一番事情を知っているだけに仕方なかった。




「ヒロしゃまー!えぐえぐ……生きてたーーー!ふぐぐぐぐ!おいし〜です〜」



 レイカが大泣きで特攻してきたので、泣く子には飴ちゃんだと思い上手いこと口に放り込んだら本当に泣き止んだ。



 一先ずは、村長と水の精霊のいるダンジョンの使用方法の見直しをして、そのあと食堂で飯を食べて…宿屋でステータス鑑定して本日の業務完了という流れ…。



 なかなかに異世界はハードだった。



 やっと洞窟と思われたダンジョンで思わぬ事件に巻き込まれたが、結果としては水の上級精霊に力を借りる約束も取り付けられたのは…方向性は良かったはず。



 上級精霊の力が弱まり、回復まで時間を要する為に長期間精霊界に帰る事になり契約には至らなかった。


 その為、近々に何かあった場合に上級精霊の力を借りれる可能性はゼロになったが…。


 あの時に契約をお願いしていれば、あの上級精霊は多分間違いなく契約をしてくれたはずだ…しかし僕は何故か精霊契約をしない方がこの精霊の為だ。……とあの時確かに思った。


 地上に出る帰り道に水っ子と話していて分かったのだが、上級精霊は礼儀を重んじるために契約してたら帰らずにこのまま地上に居たはずだと言っていた。


 水っ子的にはあの上級精霊をおねぇ様と呼んでいたので、帰って欲しくは無かったのだろう。


 しかしそんな事をすれば、回復する間も無くあの地底湖で村を守るために力を更に使い、僕が呼び出す事でいろいろな事に巻き込まれて力を使い果たすのは目に見えていた。


 そもそも僕と契約を結んで上位精霊を目指してくれると言ったこの水っ子も望んでいないと、そんな気持ちが何故か伺い取れた。


 力を使い果たし消えた精霊はどうなるのか聞いたら、精霊は長い年月をかけて同じ精霊として再度生まれ出るが、同じ精霊でありつつも何処か違う存在になるそうだ。


 記憶を共有しつつも実経験的にはゼロに等しいので、姿形そして記憶が同じであっても前と同じにはできないらしい。


 しかし精霊は自由奔放な為前の事はそこまで気にしないらしく、多少違くてもそれさえもどうでも良いそうだ。



 要は相手と今を如何に楽しく生きるかが重要らしい。



 そして僕とエクシアさんは村長宅でダンジョンの話をしている…洞窟ではなくダンジョンとしてだ。



 エクシアは村長が、僕のために村人を洞窟内に派遣してくれた事を教えてくれた。


 僕はそんな人間味のある村長にあの洞窟がダンジョンである事を包み隠さず話して、精霊の件も酷く汚れた存在の階層主の事も話すべきではないか?と思いエクシアに相談したら、「全て任せて欲しい。」と言われたのでここはエクシアさんに任せる事にした。



 確かにここはエクシアさんが生まれた村で、父が眠る場所で思い出の詰まった村なのだ…異世界からの来たばかりで何も知らない僕が軽々しく決める立場にはない…と思ったのだ。



「村長今帰りました。彼が今回この村にご迷惑をかけた私のギルドのメンバーです。」



「村長のこの度は申し訳ありませんでした。僕の軽はずみな行動で村の皆さんのお手を煩わしてしまいました。」



「いやいや!無事で何よりですよ!万が一のことでもあったらこうは笑って話せませんしな!若い時は少しくらいの無茶はするもんですよ!ホッホッホ。」



「それで、エクシアちゃん……その父親に叱られたときの様な顔からすると…些か宜しくない状況なのですな!」



「そ!村長!今は私はギルドを束ねる主でもあるんです!そんな昔の時の様な顔は…」



「何年…いや…何十年君たち親子を見てきたと思うのですかな?お父上がこの村のために戦い尊い命を投げ出した後、私の孫の様に一緒に暮らした時期もあるのです…わからない方がおかしいでしょう?ホッホッホ。」



「…レン爺様には負けます。お見通しなんですね…あの洞窟はダンジョンになっていました。地下3階層、水精霊様が深化を防ぐ封印の地になっています。」



「なんと!水精霊様が!この村をお守りになっているのか!いつからなのだ!一体いつから!」



「歴代の上級精霊様があの地の奥底で何代にも渡り深化を防ぎ、魔物を封じておられました。」



「そして、その魔物の名前は…(酷く穢れた存在)と言う化け物でした。危うく解き放たれそうな所を、この者が一早く気がつき討伐に向かい、後に向かった我々も共に闘い討伐したのです。」



「な!なんと!では……既にもう討伐された?…と言うのですか?階層主の魔物が?一日で?いや!4時進あまりですぞ!」



 僕はその言葉を聞いて、クロークの中から(穢れた吸盤)を一つ出して討伐証明として見せる。



「なんと!禍々しい!そんな魔物を……だからあの様に時間がかかったのですな!あの洞窟と思われていたダンジョンに……たったお一人で…」



「そんな禍々しいものを纏う魔物がいる場所で3時進も…本来であればこの村の村長たる私がいち早く感じとり、王都なり組合なりに申し出ねばならない所を…」



「知らずは罪と申します……この老いぼれに免じて…平に…平にご容赦ください!勇者殿!!」



 頭を下げようとする村長を僕が止めようとしたとき、僕の方を見た村長の目が見開かれて顎が外れんばかりに開いていた。



 僕の後ろで暇していた水っ子が、小さな瓶の水を吸い上げ化現して部屋にあった水輝石に水を通して遊んでいた。


 ちなみにエクシアの話もあり、暇しても何も村長にはしないでね!と言ったら村長宅の石で遊んでた……



 そうじゃ無いんだ!水っ子!と言いたかった。



 水輝石は、水精霊が水を用いると光る石の様で水精霊はその色を好むらしく暇を持て余した水っ子は水輝石を光らせるためにわざわざ瓶の水全部を使って化現し石を水に沈めて光らせていた。



 僕が村長の手を取ろうとした時に僕がしゃがんだせいで、僕とエクシアを目隠しに隠れて遊んでいた水精霊が丸見えになったのだ。



 それを見た僕は…



「な……何から何まで本当にすいません!今すぐやめさせます!」



 と言い辞めさせようとするも、



「け!結構でございます!水精霊様が我が家の水と!輝石を用いて頂けるなど!夢の様でございます!」



「ま!まさか!あ……貴方様は!水精霊様の契約者!…様!」



  …………バタン……… 



 老人に精霊はインパクトが強かったのか、長老が気がつくのに30分かかり……エクシアは初めての水精霊の化現の有り様に口が開いたまま動かなかったので、僕一人で村長の寝室を探し寝かせてきたので二重につかれた。






◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

==登場人物・用語集==


『精霊』


モンブラン(性別不明) (聖樹の精霊)

水っ娘ノーネーム(水の精霊)


『ギルド』


ギルド・ファイアフォックス  ギルド等級 銀3級


紅蓮のエクシア R「ギルドマスター」♀ (銀級2位)

ロズ(戦士・タンク)♂銅級3

ベン(戦士)♂銅級3

ベロニカ(弓使い)♀銀級3

ゲオル(魔法使い)♂銀級3


ザッハ「サブマスター」♂

リープ(事務員)♀

フィーナ(販売員)♀

ゴップ(解体担当)♂



マッコリーニ商団


パーム(妻)♀(店長)

レイカ♀(娘)

ハンス(執事)

御付き1♀

御付き2♀


売り子A♀

売り子B♀

売り子C♂

売り子D♂


水精霊の洞窟村


レン爺 (村長)♂

バフゥ (武器屋の親父)♂


飯屋の女将 ムイムイ♀

飯屋の料理人 ドムドン♂

飯屋の娘 メイメイ♀



冒険者パーティー


スノウ・ベアー


銅級4人組冒険者、R戦士(ショウ3位)、タンク(ペタ3位)、シーフ(ピック3位)、レンジャー(ゼム3位)


男4人標準パーティー



レッド・アイズ


銅級5人組冒険者、R戦士(ルーム3位)、タンク(バウ3位)、魔法使い(ゼムド3位)、回復師(ルーナ3位)、薬師(ミミ4位)


男3人、女性2人の回復特化パーティー



アイアン・タンク

銅級4人組冒険者、Rタンク(ダウ3位)、タンク(ガウ3位)、回復師(マウニー2位)、シーフ(ルーナ3位)


男2、女性2の重装型パーティー

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