第42話「ダメっ子はやっぱりダメっ子や!」

それはからもう……ミミが付き纏って大変だった。


 僕は上位精霊と話していた憧れの存在になった様だ……彼女の契約の後も多くの中級精霊と話し、上級精霊と笑いながら水っ子Aの魔法の話もしていたので致し方ないかもだ。



 ミミのその様は、自分のパーティーと僕の元を行ったり来たり子犬の様だった。



 それはそうと…



 ここの汚れの主が居なくなったので、封印していた中級精霊と上級精霊達が失った力を回復する為に精霊界に戻る事になり、新たな中級精霊がこの地底湖に来ることになった。



 中級精霊が来る理由は封印の為だが、この場所は多くの上級精霊がここで封印を繰り返し、引き継ぎ消えていった様だ。



 暫くは中級精霊が取り仕切って、持ち回りでこのダンジョンがこれ以上酷くならないように深化封印を続けるらしい。



 僕は話の流れで上級精霊のお願いを聴くことになった。



 まず穢れを抑制する方法を考えて欲しいと言う事と、たまにで良いので最下層の状況の確認をしに来てくれとの事だった。



 僕が最下層を確認?と思ったが、中級精霊では流石に力を蓄えた穢れの主のような敵には敵わないらしい。



 通常最下層が3F位のダンジョンであれば中級精霊1人でも階層主は討伐できるが、穢れの主くらいの敵になれば上級3人でもやっとと言う事だった。



 どの位の感覚で?と聞いたら一先ずは一年以内に見に来て外部から強い魔物が最下層へ侵入してないか見て欲しいとの事だった。



 本当に危険があれば精霊を通じて、知らせてくれるとの事なのでこの地底湖に居座って監視しなくても良いらしい。



 このダンジョンはコアを封印している以上深化はしないので、ここの魔物が総じて脅威になる事は今の時点では無いらしい。



 たびたび上級精霊がこちらに来るには人との契約が無い今かなり大変だと言う事で、元の世界に帰る時に必要な力があれば貸す事を条件に強制でお願いされてしまった。



 精霊界での回復力はこっちとは比にならないらしく、数年で元通りにはなるらしい。



 因みに僕は何故だか上級精霊に契約を切り出せなかった。



 穢れ抑制の手段は此処が洞窟である事にして、精霊へのお供えは入り口付近にお供え用の祭壇を作る事にした。



 そうすれば信仰者は中に入らず外で祈りを捧げるはずだ。



 水精霊への祈りと願いは世界のどこでも精霊に届くらしいので、これで少しでも人間の穢れを防げるだろう。



 なのでその事をエクシアさんに告げ、「この(洞窟)は水精霊の信仰で持っているので」って所を重点に村長へお話すると言うお願いをした。


 そしてここはダンジョンではなくこれからも洞窟扱いにして貰い、村人が奥の階層主まではいかない様にこの村では常に何人かでこの洞窟の秘密を共有して監視して貰う事になった。



 精霊の存在を知り精霊契約をする為に万が一にも多く人が訪れてしまえば、穢れが一気に溜まれり先程の二の舞になるので、最下層の精霊の事はうまく濁して貰う様にお願いした。



 エクシアとその説明をする時にミミが割り込み中級の水精霊と契約した話になったが、興奮が収まらないミミは僕が上級精霊と話していたことを皆にばらしてしまった。



 エクシアにしっかり釘を刺されていたのにもかかわらず……ミミはすごいうっかり屋さんだった。



 バラした場所がこのダンジョンの最下層で本当に良かった…3組のパーティー以外に聞かれる心配がないのだから。



 ミミは…リーダーとエクシアに、それはそれは……みっちり怒られた。



 どうやらエクシアはレッドアイズのリーダーにはミミの精霊魔法の話していた様で危険性も充分話したのだが、本人の自覚の問題はリーダーではどうしようもない。



 ファイアフォックスのメンバーは薄々気が付いていたが口には出さずにいた、しかしミミの前例もあるので3組のパーティーにはエクシアが緘口令を出した。



 破った場合、ギルドでお説教(こっ酷く怒られる)で最悪放逐されるとロズが言ったので皆青ざめていた。



 ギルドからの放逐は他のギルドでは活動不可にもなる重罪をした事を意味する…御触れが組合から出て全てのギルドに行き渡ってしまい冒険者としての死を意味する。



 因みに、彼らの様な加入申請を出しているだけで、現状ギルドメンバーでは無いパーティーも情報だけ収集して悪用する恐れがあるので、これに含まれ処罰の対象になる。



 そのロズの懲らしめ発言にエクシアは笑いながらも、もっと怖い話を始める。



「国家間・冒険者協同組合は多くの冒険者にギルドを開く許可を出す元締めで、許可された冒険者はギルドを開設し冒険者を抱えることもできて、国家間特別任務を組合から受注できる。」



「個人ギルドには等級があり功績により組合から…昇格、降格、現状維持を毎年通達され、上位ギルドになれば、様々な国の王から直接依頼がきて、褒賞もその分大きくなる。」



「国もしくは組合が決めた秘匿情報に故意に逆らった場合、ギルドメンバーにその家族も漏れ無く投獄される。」



「ここからが銀級ギルドにおける最大の問題だ…」



「精霊魔法が使える(この世界の)冒険者は現時点では金級ギルドでも誰も確認されてなく只唯一、数多くある国々とそれら国家間からなる冒険者協同組合が把握して一般冒険者には秘匿しているのが…」



「ユニークスキルと言う(流れ)が持つスキルで、S級の(異世界からの来訪者)の二つ名を持つ冒険者だけだ。」



「この情報は銀級ギルドから開示される情報で、(いかなるギルドも彼(彼女)を専有してはならない!)と言う魔法契約まで交わされる。理由は無理に抑え込んで怒らせたら国さえも破壊する力があるとの事だった」



「しかし、それはヒロのことでもミミの事でも無い。別の精霊魔術師さ…そいつは自分も周りも守れるから良いけどね!」



「わかるだろ?力を持つ者なら自分は守れるが、そうじゃ無い場合巻き込まれるのは、家族に友人に知人、力のない者だ。迂闊でした…じゃ済まないのさ。」




 その説明をこれから加入する三組を含めて、改めて全員に事の重大性をエクシアは説明したのだった。



 エクシアは…この情報をギルドが銀級になった時に聞いた時は、眉唾だよ!まさか…と思ったらしいが、僕の魔法を見て悟ったらしい…精霊魔法まじヤベェって事を。



 その力の一端を持つに至ったのが、僕とうっかり者のミミだった。



 そしてこの力が知れ渡れば、現状の僕とミミはその冒険者組合法に守られない穴になるので、争奪戦の末僕らは最悪な事になるのは火を見るより明らかだと言う事だった。




 自分自身の力で自分を守れない以上……絶対話さないか、皆で協力して守る!しか無いのだ。




 契約の力を得たミミの中級精霊は、少しの間絆を強める為にこのままミミの側に残ることになり精霊界とこちらを行き来する様だ…そこで僕はエクシアに言われた様にやたらに人前でその事を話したり、精霊召喚(化現)しない様に話す。



 攻撃魔法だけなら自分で唱えれば良いのだから…。



 一般の人間には精霊は見えないが、見せようとすれば見えるのだ。だからぼく自身も注意が必要だ。



 念の為にうちの水っ子の宝箱爆破事件を伝え、万が一にも町や村でそれをやったら如何なるか…と言ったら水っ子Bと何やら話していた…因みに水っ子Aはうちの水っ子だ。



 地上に上がるまでに、ミミは水っ子Bと悪戦苦闘して水攻撃魔法の初歩のウォーターが使える様にはなっていた。



 そして僕は初歩のウォーターを知らない…これは水魔法で唯一飲料水としても使える攻撃魔法らしい…何故だ?水っ子Aよ?



 地上に戻る際に、キャンディーアソートを鷲掴みで皆に配ったのだが、理由は糖分が欲しかった…流石に疲れて身体が甘い物を欲していたのだ。




 業務用は一袋200個もあるので消費しないと邪魔で仕方ないのと、まだクロークの中に400個(2袋)残っているのだ。



 ロズを含めファイアフォックスメンバーは歓喜して喜び、貴族の嗜好品をまさかの鷲掴みで貰った3組のパーティーは…「何か用事があったらすぐに言ってください!駆けつけますから!」とまで言われた。



 特に女性組はこの手のお菓子を食べたことがないらしく、口にするなり物凄く驚き僕から異様に距離が近い場所を歩き始めた。



 美香と結菜とそうまは、前に食べてからそんなにまだ経っていないのに…懐かしそうに食べていた。



 歩きながらもエクシアに何故奥に進んだのかを聞かれたので、順を追って(宝箱爆散事件を強調して)話していたら終始笑っていた。



 ボス戦の思い出を話していたらクロークに入れた罠付き宝箱を思い出した。



 クロークの中にある罠がかかった宝箱の事をエクシアに相談したら、エクシアが共闘した3組に相談してくれてスノーベアーのピックとアイアンタンクのルーナが明日の朝にでも共同で開けてくれることになった。



 鑑定の巻物で宝箱を鑑定した場合、ランクや罠の種類は判るが詳しい箱名までは分からないとエクシアが耳打ちしてくれたので色々と注意が必要なようだ。




 お礼は出たものの1割程度?かとか思ってエクシアに聞いたらそんな事はしなくて平気だと言われた。



 同じギルドメンバーだから助け合ってナンボだとロズが口を挟んできたので、それを聞いたピックとルーナも頷いていた。



 どうやら新メンバーは確定な様だ…よし…宝箱開けてくれたら飴ちゃんマシマシであげよう!と思ったのは秘密にしとこう。

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