第44話「懐かしき出会い・忘れない想い」

村長が気がついてから、兼ねてからのお願いを僕とエクシアで話す。



 もう水っ子見られたので変に隠すより、全部話して見なかったことにして貰う作戦(勿論多言不可)だ。


 30分ほど費やして要点のみを掻い摘んで説明して終わる。



 村長は混乱しながらも真横の石を光らせて遊ぶ水っ子をまじまじと見て、快くと言うより……進んで手伝うのを了承してくれた。


 エクシアが説明したのは…


 ・ダンジョンではなく(洞窟として)扱う事。

   何人かで情報共有し、その者だけには真実を話し村ぐるみで洞窟管理する事

 ・精霊の加護と力を強める為に、水精霊の信仰に村ぐるみで力を入れてもらう事。

   ただし、ダンジョン内部に人が入ると穢れが溜まるので中には極力村人も入らない事。

 ・1F〜2F階層主に近づかない事、子供が1人で中に入るのを防ぐ事、見回りで管理する事…etc

 ・最重要としては決して、何があっても最下層に近づかない事


 要は穢れを溜めず、信仰を重じて水精霊の力を増やせる努力をすれば精霊が封印はもっとしやすくなる。


 破って人が流入すればダンジョンが深化して魔物が強くなり、水精霊がこの地をさる…と僕は更に掻い摘んで話す。



 この条件を飲んでもらった時点で、僕は最下層にいる中級精霊10名がダンジョンコアを封印している事実を村長に伝えると、村長は泣きながら横の水精霊に祈りを捧げ始めた。



  …しかし唐突に水っ子Aは念話で話しかける。




「久々なのに!何泣いてんのさ!?レン坊主。デカくなったね〜ってか老いたねーヒゲモジャジャン!私はアレからずいぶん小さくなっちゃったけど!」



「私があげた水輝石大切にしてくれてたんだね〜ありがとうね。漸く最下層の気色悪いのをヒロのお陰で倒したから!約束は果たせたよ!だから当分この村は大丈夫。だからレン坊主も約束守れよ!私達を祀る水神祭!やってよね!」




「あああ!まさか〜まさか〜またお会い出来るとは!父はこの話をしても!決して信じて頂けなかった!私はあなた様がくれた石を人と精霊の共有の証に!語り継いで来ました……死ぬ前にまた会えて本当によかった〜あああああ!」




「まさか!?レン爺様が言ってた精霊様って!ヒロの言ってた水っ子ちゃまの事だったんですか?」



 数十年を経て村長は夢の再会だった。



 水っ子はまさかの村長の知り合いだったらしい。




 少し精霊と村長が語り合ったのち、エクシアは村長と昔話をする為に少し村長の家で話してから食堂に向かうと僕に告げて、エクシアの父親と精霊の昔話をし始めていた。


 これは当分帰ってこないな!と思ったので、僕はエクシアさんと村長に軽く会釈してからマッコリーニが手配した村の食堂に向かう。



 多分もう既に皆居るだろう……下手すると食べ終わって自由時間かもしれない!万が一待っていたなら結構長くかかったので痺れを切らしているのではないだろうか?



 今日中のノルマの1個目がやっと終わった!



 村長宅の30分くらいで終わる内容が……何の因果か…1.5Hもかかりかなり今後の予定を押している…。



「この後は飯を食べてから、ステータス鑑定だ……なので疲れていてもまだ寝られない…」



「そう言えばエクシアさん言ってたな…多分この飯の後、G・オクトパスの分配もあったはず…ステータス調べるのは更にそのあとか!ううう一筋縄では行かなそうだ!」



 僕は食堂に向かいつつも愚痴をこぼす。



 しかし実際のところ、僕の知らないところで動き出していた話の、フォレスト・ウルフ・ジャーキーマッコリーニ販売計画及び水の精霊村ウルフジャーキーレシピ計画もあったのだが…この時の僕が知りようも無かった。




◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇


 食堂は村の建物の割にはかなり大きな作りで、はじめは酒場と併設か?と思ったのだが単独の建物だった。


 理由は、街から一番近い最初の休憩地点ともあり、この先にある村とは色々と規模が違かった。


 その上ファイアフォックスのエクシアが育った村ともあり、この周辺の様々な駆け出し冒険者が立ち寄る村でもあり、ファイアフォックスでの組合特別任務目当てに、多くのパーティーがここの村長に一筆もらいに来るのだ。



 一筆と言うのは要は推薦状だが、その推薦状を書くには条件がある。



 この村周辺の30km範囲に生息する魔物を最低5匹は討伐して村に納める事だ。



 こうする事で冒険者の力量を測り、村周辺の魔物を駆除し更に村の安全も確保できると言う……一石三鳥の村長の妙案だった。


 エクシアも面倒ごとを少しでも端折れるので助かっていた。


 面倒ごとの良い例が力の乏しい冒険者の討伐任務参加であり、個人ギルドであれば決まりが緩く組合討伐任務などに気軽に参加して名声を得られると初級冒険者は勘違いしがちなのだ。


 しかし組合討伐任務となると、通常より遙かに驚異な魔物を数組から時には10組を超える冒険者で狩るのだ生半可な経験では、魔物の咆哮だけでビビって動けなくなる。


 なので村長の一筆は結構な頻度でお願いされていた。



 更にこの妙案のお陰でこの村で助かった事が冒険者がくれば飯を食い、アイテムを買いお金を落とすのだ。



 それだけでは無い。更にこの先にある他の村の物資の調達依頼も村営ギルドに依頼を出せば一緒にお願いできるのだ。


 この村にも小さいながら村営ギルドがある。


 冒険者はそこの依頼をこなす事で収入を得られる上に名声稼ぎもできる。


 そして念願の一筆任務もこなせ冒険者的には一石二鳥の好条件の狩場でもあった。




「遅くなりました〜エクシアさんは村長と積もる話があるそうで残りました。」



「夕飯食べに来たのですが……まだ有りますか?」



「遅かったじゃ無いか!半時進くらいで来ると言ってたから心配したぞ!また村長連れてエクシア姉さんと一緒に洞窟行ったのかと思ったぞ!」


「流石に行きませんよ!お腹ペコペコです!」


 ロズが軽口を叩くので僕も軽く返す。仲間と言う感じに思えてなんか嬉しかった。


 僕はレイカの手招きで、マッコリーニとレイカと異世界3人がすでに座っている長椅子に向かう。


 空いてた場所は何故かレイカが目の前で左右は美香と結菜だった…レイカの隣はエクシアさん用みたいですでに予約席済みだ。





「お!やっと来たね!コレが噂の問題児の登場かい。問題児って顔だね!これでやっとご飯用意して良いんだね?マッコリーニさん?」



「すいません女将!お願いします。」



マッコリー二が女将さんに飯のお願いをする。



「はいよ!すぐに出すからね!ちょっと待っててくださいよ!」


「あんた!1番テーブルの予約開始だよ!あと2番、3番テーブルもね!」



 先に来ていた皆は、長机に座って摘みとエールをちびちび飲んでいた様だ。


「すいません女将さんこっちもお願いします!」


「すいませんこっちも良いですか?お願いします。」


「ああ!じゃあ女将こっちもお願いするよ!」



「はいよー!今日は稼ぎどきだよぉ〜アンタ!冒険者4組に商団様一行だ!早く作ってどんどん出さないとね!」


「おうぉ!すぐに美味いもの出すからな!待ってろよー」


 あの共闘した三組のパーティーも一緒に晩飯を食うらしい…真横の長テーブルに三組の姿がある…すでに仲良くなった様で和気藹々だが、だいぶ待たせて申し訳ない。


 威勢の良い女将さんと旦那さんの声に、食堂が更に賑やかになった。

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