第38話「残り物には福がある!」

「エクシアさん?呪いの効果って色々ありますか?呪われた装備かどうかは判りますが、呪いに様々な効果があるならば…効果まではわからないので。」



 呪い装備は呪われているという意外に表記がないので僕は率直に聞いてみる。



 それを聞き漏らさないようにしていた回復師の女性が、エクシアさんの代わりにいち早く答える。




「わたしが知る限り呪われてる装備は、装備者に呪いをかけて外せない状態になります。装備能力に万が一乱心効果がある装備の場合…仲間を速やかに捕縛せねば…その瞬間パーティーは全滅する場合もあります。」



 聞いて正解だった…この武器は乱心ではなく狂乱・憎悪だそれが乱心よりも上か下か判らないが…



「では、この武器はダメですね。呪われた装備と感じるのでとても危険です。」



 僕はそう誤魔化しつつ…ペインブレードを指差すが、距離を保って決して触らないようにする。




 エクシアがそれを見て、




「もしかして…これはペインブレードかもしれないな…もしそうだとしたら、触るのも危険だ…回復師の祝福で消滅させた方が安全だろう。呪われてるなら消滅するはずだ。」



 僕はびっくりした、エクシアさんが武器を見るなり名称までぴったり当てたのだから。




「マウニーすまんが祝福使ってもらえるか?先程の戦いの後でさらに祝福かけると消費魔力はそこそこかかるが…さっきヒロさんが言ってたように仲間の命には変えられない。」



「そうね…ダウ!その通りね。エクシアさんの言う通り祝福なら聖属性だから不浄の呪い装備は消滅させられるわ、万が一にも呪い装備なんて触らせられないわ。それにこの武器を使うのは、ソード系の貴方の弟のガウだものね。」



 そう言ってもう一人のタンクを見やる…どうやら兄弟揃ってタンクのようだった。



 確かにダウと呼ばれた兄は大きなフレイルのような武器を持っていて、ガウと言われた弟の方は直剣を持っていた。



 回復師は、すぐさま祝福魔法の詠唱に入る。



「光を司る、天神よ!不浄なるものを滅する力、その御心を今ここに!祝福!!」




 マウニーが祝福をかけた呪われた武器は、急激にボロボロになりまるでそこになかったかのように消えてしまった。



 半信半疑だったマウニーは…それを見て…



「は…初めて呪いの武器を消滅させました!危なかったです!万が一にもガウさんが触っていたかと思うと!」



 ダウも半信半疑だったのだろう…ボロボロになり消えた武器を見て…ガウの肩を叩きながら良かった!触らなくて本当に良かった!と弟の顔をまじまじと見ていた。



 弟のガウは手に持っていた武器を落として拾い上げようとするも上手く掴めないようだ…相当動揺しているようだ。



 それ以外は呪われていなかったので、そのことを伝えても誰も触ろうとしないので僕が手に持って見せる。



 それを見たマウニーの僕への尊敬の目が怖い。



 その後、経験値稼ぎで全ての詳しい鑑定を終わらせる。



 アイアンタンクのメンバーはそこからリーダのダウが上手く配分しているようで、和気あいあいの様子を見せた。



 エクシアが…



「どんな内容だったんだい?呪い装備の内容は?」



 アイアンタンクのメンバーに聞こえないように僕に話して来たので…



「エクシアさんが言っていた武器で狂乱・憎悪の付いていたものでした。」



 と…伝えると、



 「本当かい…今までわたしが見た、最低最悪の効果付き武器だねそれは…万が一彼等だけでそれに触ってたら全員この世にはいれなかっただろうね。」



 と言ったら、聴こえてないはずのガウさんがブルブルっと何故かしていた。



 それから僕は、申し出のあった順のスノーベアー、レッドアイズの順で同じ様に鑑定して回る。

ただ、まじまじと説明や内容を読んでいる時間はないので経験値回収としての流し読み詳細鑑定だ。



 スノーベアーの内容は…なかなか数が多く可もなく不可もなくと言う内容だった。

一覧にするとこんな感じだ。


◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇


金貨袋(250枚) 1袋

初級ポーション 6個

中級ポーション 1個

+3カイトシールド 1

+4ゴールドメイル 1

マギのソードブレイカー 1

レイジ・ボウ   1

風の指輪     1

癒しの腕輪    1

万能薬      1


◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇



 4人パーティーなので装備は山分けが上手くいくだろうが、ポーションに端数が出るのでそれは話し合いか買取にするようだ。


 問題はポーションの種類が2種類あるので中級は奪い合いになるか換金しかない。


 呪い装備はないが名前が怖いレイジ・ボウと言う弓があった。


 てっきりレイジ(怒り)と言う意味の怒りの弓と思ったら…違かった。


 レイジと言う弓師が作った名作の弓だったようで、エクシアと笑って話していたのをスノーベアーのレンジャーにうっかり聞かれて彼は名作の弓に驚いていた。



 逃げ口上は、エクシアが一度見た弓にそっくりだ多分そうだろう…と誤魔化す事で難を逃れた…銀級冒険者の言葉の説得力はすごいと思った。



 短剣を手に入れたシーフの青年が、僕に本当に呪いがないのかビクビクしていたので僕は手に持って振って見せた。


 軽く振るとソードブレーカーと言う武器な癖に、刀身から火球を打ち出したのでビックリしたが、名前付きの武器だったのでちゃんと魔法の部分まで鑑定したら注意して扱うべきだと…マジックウェポンの扱いを学んだ。


 そんな時エクシアは「マギの短剣じゃないか!大当たりだよ!アンタ!」と笑っていたのでシーフの彼は注目を浴びて小躍りして皆を喜ばせていた。



 そしてレッドアイズの宝箱の内容は、お金が多い結果となった様で…箱を開けてそれを知ったメンバーはすごい嬉しそうだった。


 田舎の家族に仕送りが出来ると、特に薬師と回復師の女の子組が手を取り合って喜んでいた。


◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇


白金貨    1枚

金貨袋(600枚) 1袋

銀貨袋(200枚) 1袋

女神のワンド 1

+3スパイクシールド 1

+6マン・ゴーシュ  1

祝福されたマジックボウ 1

マギの捻れたスタッフ 1

高級ポーション 5


◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇


 頼まれたので、ほかの二箱と同じ様に鑑定してみるが伝える内容は呪われているかどうかだけだが、呪いの武器は最初の一箱だけで、この箱には入ってなかった。


 総数は少ないものの、金貨や銀貨そして白金貨の存在も大きく気にはしていない様だ。


 メンバーで誰が何を貰うか話し合っていた様だが、いまいち話は進展してなかった。


 僕的には鑑定結果が祝福されたマジックボウの効果は絶大だったのでそれ一択だったが、見てくれはただの弓なので一番はずれとしていたみたいだ。


 一択の理由は…この武器は弓なのに矢が要らないのだ。


 常にこの弓には祝福がかかっている為、魔法製の祝福の矢が撃てる代物で近接する職業以外だったら有効に扱えるのだ。



 更に祝福ネーミングがついていた為に常に使用者に祝福をかけ、続け撃ち出す矢も祝福されている不浄なものには恐怖武器だ。



 状態異常には掛からなくなるし、呪いは全て打ち消してくれて祝福あってもMP要らず…装備者制限が一切無いのもありがたいALLクラス装備だ…なのでこの箱では実はこれが大当たりだった。



 僕がじっと…その弓を見つめていたせいで勘違いされて、ただの弓に見える為もありそのパーティーから譲られそうになったので、


「僕には水魔法があるので平気です。薬師か回復師がいいと思います……その弓」



と伝えると、さっき僕の話に感動した薬師の子が、一番に挙手しそれを欲しいと言うことでまとまった様だ。



 装備品が5個だったので、パーティー自己鑑定ハズレ品を誰が貰うかは…装備者から消去法をしてほぼ決まっていたが、薬師の子は気持ち納得いかないのもわかる。



 確かに、女神のワンドは回復師と薬師向きの装備で欲しい人が被っていて、回復師を強化したい皆はそれを言い出せず…回復師の子は優しい子の様で欲しい…とも言いづらいと言う悪循環だったので、自分にワンドが来た時点で回復師の子にも感謝された。



 このワンドは回復師の方が間違いなく良い、神聖魔法が強化されるので薬師だと神聖属性の薬製作時にでも薬効強化のために借りれば済むからだ。



 その事も伝えようと思ったが、鑑定できることがバレるので黙っていた。



 スタッフは魔法使いが使うには持ってこいだったので反対なく決定した。



 マンゴーシュとスパイクシールドは結局話し合いで決めていたが、マンゴーシュの方が実は価値もランクも何もかもが上だった。



 薬師の子が誤解し今回の討伐戦の意味も込めて僕が勧めたのだと思ったせいで、弓の訓練をギルドで受けると言い出した。



 僕はひとまず壁に向けて弓を打つそぶりして見せると、薬師の子がその弓を引いて真似してみていたので指を離してごらんと言った次の瞬間、目にも止まらぬ速さでマジックアローが壁に3本突き刺さった。



 弦を弾いた指の数だけ矢が撃てる物で、親指と人差し指と中指の三本の指で弦を支えて引く以上、三本は必ず打ち出される仕組みだ。



 弦の引き具合で矢のスピードは調整されるので、祝福の効果が上乗せされて普通に思い切り引くと、非力な女の子でも目に見えない矢の速度になるみたいだ。



 それを見たメンバーは眼と口を開いたまま僕を見ていた…目玉が落ちて顎が外れなければいいのだが…。

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