第39話「切なる願い!」

彼女に即戦力となる武器を勧めたせいか……それから何かあるたびに薬師の子が後ろをついて回ってダンジョンを出るまでずっと側にいた。



 そのせいで僕はヘマして身元がバレないか地味に困った。



 鑑定もとい呪い装備のチェックが終わったのでそのことをエクシアに告げる。




「ここで皆にちょっと相談があるんだが、この階層主の特定素材は申し訳ないがこのヒロにあげたいんだが……どうだろうか?」



「元々は、始めから此処でこの魔物と戦っていたのは彼だし、多分私たちが参戦しなくても……あの魔物は…」




 エクシアが突然そんな事を言い出したので、僕はびっくりした。



 あの水槍衾を思い出したのだろうか……そしてどことなく哀しそうだ。




「いえいえ!皆で倒した魔物なので山分けで大丈夫です。」



「それに危険を冒してまで戦った相手です。この素材だって何かに使えるかもですし!」




 僕はそう言って指差した素材は……何処となく触るのを辞めたくなる。



 穢れた各部位に、ヌメリがよく見て取れるジャイアント・オクトパスの各部位そして、でろんとしたタコの身そのものだった。



 この見てくれの悪い素材を、エクシアさんは僕に渡して何をさせるのか正直怖かった。



 一応先程宝箱と一緒に全部鑑定をかけてあるが、呪われる心配はない。



 ジャイアント・オクトパスの身にしても可食できるどころか、とても美味と書いてある。



 名前は日本語に言い換えれば、巨大ダコで単にでかいタコだから食べられて当たり前だ。




 他の3組のパーティーはエクシアが言う事に全く異論がない様で、村でいち早くエクシアについて行くと言い出したスノーベアーのリーダーが他2人のリーダーの代表として話始める。




「自分たちは仲間を守っていただけで、実際闘っていたのは、エクシアさんとヒロさんと遠距離スキル持ちですし、そもそも宝箱まで頂いたのです。これ以上は貰い過ぎです」



 と…彼は遠慮気味だが、汚れた各部位以上にジャイアント・オクトパスを見る各パーティー女性陣の目は何処となく「あれだけは触りたくない」と目が訴えていた。




 エクシアが皆に、




「言い方が悪かったな…通常個体であり、水棲魔物のジャイアント・オクトパスは遠洋で出会う魔物でもあり、各部位はレア素材だ。あのレアランクの部位は君達に分配するので問題はない…」



「だがあの階層主の特殊素材は、ヒロのスキルに必要不可欠なものになると思われるので、そこだけは皆に了解を得たいのだ!」




 と逆に女性的に特に触りたくない方をエクシアが押してきたので、女性陣が特に(いやーーー)っと意思表示のために首をブルブル横に振っていた。




 オクトパスの衝撃が強過ぎたのか、僕のスキルの部分はボヤけて助かった…




 しかし、そのエクシアの言葉に、アイアンタンクのリーダーダウがモノを申す。



 僕は魔物の各部位は高値でやり取りされると、馬車の移動中エクシアさんとマッコリーニさんに教えて貰ったので、階層主の素材の上、特殊素材だけにそんな簡単には引き下がれないのでは?と思ったが、彼等は別の形でエクシアに報酬を求めてきた。



「我々としてはたしかにダンジョンボスの特殊素材や、レア素材の各部位と聴けば高額でやり取りされていますし、自分達の力量では今後手を出せる敵とは思えず…その手前、喉から手が出るほど欲しいのは確かです」



「しかし、先程スノーベアーのリーダーが言っていた様に、俺たちは何も出来なかったのです。遠距離や回復師達には確かに権利もあるでしょう。でも十分過ぎるほどの報酬は既に頂きましたので気になさらなくても平気です」



「それでも万が一に今後、我々が風潮するかも…と気にされているのであれば、我らアイアンタンクとしてはファイアフォックスにおけるギルドの特殊依頼参加や迷惑でなければギルド加入のチャンスを希望します」



「自分達は銅級で銀級冒険者のエクシアさんやヒロさんや皆さんの様に力量も冒険者として経験値も高くありませんが…やる気はあります!!役に立って見せます!」




 そう言って、アイアンタンクのリーダーはチラッと僕を見るが、エクシア的には比べるところが間違っていると言う目でダウを見ていた。




「「自分達も!それでお願いしたいです!!」」




 レッドアイズとスノーベアーのリーダー二人がアイアンタンクのリーダーの言葉に追随する。




「特別任務の件はわかるっちゃわかるが…私たちのギルドに加入って。たかが銀級3位の下っ端ギルドだよ?アンタ達なら王都や帝都に行けばもっと上のギルドだってテストにさえ受かれば行けるじゃないか!」



「王都や帝都のギルドの事は考えてましたし、実際見にも行きました。ですが…あそこはギルドという名の別物な気がしました…冒険者は駒でしかないという考えですし、エクシアさんの様に現場に出ないのに言葉だけかというか…l




 マウニーがその言葉を聞いて嫌そうな顔をしながら激しく同調する…何かあったのだろうか?




「そうね!あの…女は言うこと聞いとけって言う感じがすごく嫌だわ!回復師は回復だけしてろ、ギルドの方針に口を挟むな…とか…回復できる総量も決まってるってのに策も何もあったもんじゃなかったわ!」



「口だけ達者で、ギルマスだか銀等級だか知らないけど、横通る度に人のお尻撫で回すしか出来ない能無しのギルドなんか!!…」




 エクシアの目の前で暴言を吐いたマウニーはハッ!として誤ってくる。




「ファイアフォックスがそうと言ってるわけではないのです!前に居た、ギルド・神秘の猟犬と言うギルドの話です」




 エクシアにすごいペコペコ謝っているマウニーは、前のギルドで相当嫌な思いをして…ギルドを抜けて今のパーティーに移ったのだろうか?




「いやいや!構わないよ。言う事は言わないとね!背中を預ける仲間なんだ信用がなけりゃ任せられるわけがないだろう?パーティーはそんなもんだ、ギルドメンバーだって喧嘩して時間をかけて信用を勝ち取るもんだそう言うのは!」



「それに勘違いしてるかもしれないが、ロズはハゲていつも自分の頭撫でてるいるけど女のケツは触らないよ!だから安心していいよ!」



「あ!姉さん!酷いっすよ!」



 そう言われたマウニーは、大爆笑しながらもエクシアを元から陶酔していたらしくその後もニコニコが止まらない。



「わかった!私たちのギルドに来る特別依頼の参加許可を3組へ与える」



「ギルド加入に関してはテストがあるから、街の拠点に来てギルドテストを希望した時点でそれをこなして貰う。最低限の冒険者マナー的な物だと思ってくれ。マウニーが言ってた様に冒険者側も最低限のマナーが大切だ!仲間には背を向けないね!」



「ギルド特別依頼参加への許可証も街に戻ってからになる…此処では書けないし、その処理をする事務員もいないしな。街に来たら、時間があるときにギルドに寄ってくれ!事務員にはその旨伝えておく。ベロニカ!頼んだよ!」



「はーい!姉さん!3組、スノーベアーに、レッドアイズに、アイアンタンクで総人数13人ねー。一気に増えそうだね利用者が!ヨキヨキ!」




「「「ありがとうございます!頑張ります!」」」



 見事に3組のリーダーの声がハモる。後ろでは各パーティーのメンバーが「やったー!」と大はしゃぎだ。


 エクシアさんのレア素材だって話で、階層主の特殊素材なんてそんな凄い物貰わなくていいのかと思い、手近なレア素材のジャイアント・オクトパスの討伐部位を再度鑑定したらこの僅かな間に表示される項目が増えていた。


 追加3箱したので鑑定のレベルが上がったのだろうか?


 素材として使用できる内容や、作る場合の情報が若干増えていたがレベル不足で足らない情報もある。


 しかしながら情報量は圧倒的に増えていた。


現状今まで表示されていない情報が増えている以上、レベルが上がった場合に表示されたり一部開示…的なものも有りそうだ。

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