第36話「予想の斜め上を行く男…それは暴走中なだけでした!」

目の前で見たこともない魔物と呑気な顔で戦っているヒロに唖然とするしかない4つのパーティーに、今までジャーキーしか焼いてなかった僕がとんでもない事をしている様を見てしまった…結菜と美香とそうま…。



「ヒロさんてジャーキー燻したり、焼くだけじゃ無かったんですね…レイカさんに…ちゃんと強い人ですって言っておかないと…」



「異世界の水って消防士の特権的なイメージあったんだけど…ぶっ壊れてるなぁ」



「ヒロシクンは…怪我がなくて何よりだけど…異世界に慣れるの…早くない?」



 3人ともヒソヒソと話す…。



 僕と、水っ子が手数で触手を消していく、減ったところにウォータースフィアで酷く穢れた存在に確実にダメージを与える。


 ロズとエクシアが加勢に入ろうとするが、穢れた触手に触ると痺れて動けなくなり逆に追い討ちを受けそうになる所を、水精霊の激流で攻撃を堰き止める。



 回復師と薬師が総出でエクシアとロズを回復させる。



「皆駄目だ!ここは遠距離特化のヒロに任せよう!あの触手は近接では対処できない。戦士とタンクは回復師と薬師の護衛を!薬師と回復師は回復メインで、皆いつでも避難できるようにしておいてくれ。」



「遠距離武器のレンジャーと魔法使いはヒロの援護であの気色悪い本体を狙え!」



「シーフは持っている限りの遠距離武器で援護を!」



 そう言うと、エクシアは何やら祈り始めた。



「ア…アネさん…それを使う敵ってことですかぃ?あの敵って!」




「ああ!アイツは全力じゃ無いとこっちがやられる!」




「焼き尽くせ!焔蛇!!」



 エクシアの右手に焔の蛇の様な痣が浮かぶと、エクシアはまるで鞭を振るう様なそぶりをする。



 僕はびっくりして、ウォーターバレットを撃ち込むのを忘れると、水っ子がそれを見て



「焔の精霊の焔蛇ね〜人間なのに使えるのね〜あれはね精霊が気まぐれで力の一部を貸し与えた証よ。私達水の精霊もたまに信仰の証に貸してあげるけど…1時進しか持たない力よ。あなたとはだいぶ異なる期限つきの力ね。」



 どうやら、精霊は気まぐれに色々な事をするらしい。信仰の証に貸してくれる様だ。

因みに今更だが、1時進というのはこっちの僕らの世界の一時間を意味する単語で、ひととき進むから来る単語らしい。



 そんな会話の最中、エクシアがその鞭を振るう様なそぶりに変化が現れる、手に巻き付いた焔の蛇の痣がエクシアの動きに沿って焔の鞭になり巨大な蛇の尻尾の様に荒れ狂う…穢れた触手を薙ぎ払いながら、酷く穢れた存在にも焔属性のダメージを与え始めた。



 凄まじい攻撃力だった。



 どうやら紅蓮のエクシアの異名はこの攻撃にあるのだろう…髪の毛も今までにも増して赤々と燃えている様でとても美しい。



 エクシアの振るう焔の鞭の火は一度相手に燃え移ると消える様子は無い…対象を燃やし続ける攻撃の様で、水の削り取る攻撃とはこれまた違う感じだ。



 僕はエクシアの(焔蛇)の掛け声に…ああ!中二病みたいな事がこっちはまかり通る!ってかイメージ大切って水っ子言ってたな!って再確認するほどの凄まじい威力だった。



 これがイメージの力か!と納得せざるを得なかった。



 それも、鞭なので触れる触手を次々なぎ払う…一旦最後の一本までエクシアが薙ぎ払ったので僕の魔法で触手を狙う必要がなくなった。



 エクシアのお陰で本体を直接狙える様になり、僕と水っ子は次に生えるだろう触手をエクシアさんに任せて魔法を切り替える。



 

「水槍撃!!」



 僕は水槍に日本的な攻撃名をつけ直して撃ち出し、水っ子は今まで通り水魔法を打ち出す。



「ウォーター・スピア!」



「って!!何よーーーーーーーー!それーーーー!」



 水の精霊が見えない人にしてみれば、その様は見た事のない和槍とこっちの世界での慣れ親しんだ槍を二本同時に撃ち出すような様だったらしい。


 しかし水っ子が撃ち出す巨大な水の槍が、すごいスピードで酷く穢れた存在の上半身を消し飛ばす、その直後に僕が付け直した名前の水魔法が残りの部位を消し飛ばす。



 僕のイメージは水の槍での槍衾…酷く穢れた存在は跡形もなく消し飛んだ。



 周りの水の精霊が目を見開き…僕を見る。



 エクシアの目も水の槍衾を見て、今は焔蛇の鞭を振り切った腕の向きとは別の方向である、ほぼ90度に首が捻れている…僕の方へ…




 見事に酷く穢れた存在を倒した僕らは感無量!とは行かなかった。



 まず、水っ子は水の上級精霊にこっ酷くお叱りを受け、僕はエクシアさんにこっ酷くお叱りを受けた。



 しかし、3組の一緒に来てくれたパーティはそれどころでは無い…まず、憧れのギルドのエクシアさんの本気が見れた上に、見たこともない魔物を共闘で倒し、その討伐した証の宝箱が目の前にあるのだ…ソワソワしない方がおかしいだろう。



 お預け状態なので、ロズが口を挟む。



「エク姉さん…お気持ちはわかるけど先にこっち処理しましょうや!酷いですよ手伝った3組にしてみれば!」



 この一言のおかげで、お説教は帰ってからになった、僕はロズがお気に入りの飴を帰りにこっそり渡そうと思った。



 そして水っ子のお説教はモンブランが止めてくれたらしい、なんでも水魔法を人間に教えて最下層まで行き水の精霊の助力を約束させ、独自進化させた魔法でこのダンジョンの深化を防いだ、その上このダンジョンコアの始末を僕がするらしい。



 モンブランよ…何故そうなった?



 それはそうと、今目の前に酷く穢れた存在の宝箱が…何故か5個とそれは山盛りの討伐部位がある。


 とりあえず目の前の宝箱と部位を、小声でコッソリ鑑定する…レベル上げに勤しまなければ。



◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇


  宝箱 (酷く穢れた宝箱) (罠無し)

       (A+ランク)


       入手方法


 ダンジョンの階層主個体を倒した場合

 に入手。



 箱にはランクがある。

 ランクが上がる程、良品が詰まっている。


 この種類に宝箱には罠は無い。


 解錠方法は箱ごとに異なる。


◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇



◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇


穢れた宝珠 1個

穢れた衣  1個

穢れた触手 20個

穢れた吸盤 40個

穢れた嘴  1個


Gオクトパスの嘴  1個

Gオクトパスの吸盤 40個

Gオクトパスの眼球 3個

Gオクトパスの足  5本

巨大な墨袋     2つ

粘つく墨      10瓶


オクトパスの身  60kg

外洋の水      5瓶

魔石(大) 1個



◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇



 倒した、階層主は1体なのに…触手の分かな?とか思ってエクシアさんに質問したら、階層主や守護者、ネームドの討伐に参加したパーティー毎に宝箱は出るらしい。


 パーティーは多い時で30人位になるらしいが、実は6人パーティーを5グループで30人になり、そのグループのリーダーから一人が総大将になるらしい。



 総大将は大概、ランクの高いギルドがやるとの事。



 なのでそんな時は5個宝箱が出るのだが、目が血走って今の状況な様なのほほんムードじゃ無いらしい。



 なら何故5個なのか?エクシア、3組のパーティーで合計4個かと思ったのだが、最初に戦っていたのは僕だからだそうだ。



 因みにスノウ・ベアーとレッド・アイズにアイアン・タンクは僕らが宝箱を選ぶのを待っているらしい。



 かく言うエクシアでさえも、僕が選ぶのを待っていると言われた。



 そんなルール知らないし、今聞いたので若干戸惑いそして焦る。




 ひとまず、鑑定を小声で全部にかけると意外に意外、この宝箱には罠が一切なかった。

しかしランクが存在した、5個中2個がA+ランクで、残る3個がAランクの宝箱だった。



 コッソリとエクシアに相談すると…



「実は、この宝箱A+が2個とAが3個なんだ。私にはそう言う力があってなんとなくわかるんだが、手伝った君たちで先に選んで構わないよ!」



と…言ってのけた。



 すごい心理戦だが、意外に意外3組のパーティーからすれば棚ぼたで手に入った宝箱で、中身の1つでも運良く手に入れば!的だった様で3組ともAの箱を選んで、欲しい物は持っていってください!とまで何故か僕に言われた。



 しかし…



「お前たち命かけて戦ったんだ!胸張って持って帰れ!それが冒険者だろう!」



 って…ロズがニカっと笑いながら言っていた…怖いハゲだがやっぱり面倒見がいい。

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