第35話「ラスボス感は出させませんが?だって…危険ですそれ!」

僕は石造りの緩やかな傾斜を降りてくると、目の前に巨大な地底湖があるのを見て神秘的な素晴らしい場所だと感動した。



 その空間は傾斜を降りてすぐは結構な広さの岩造りの地面が続くが、そこから緩やかに傾斜して地底湖に繋がる。

地底湖は素晴らしく澄んでおり、湖底が見えるくらいだが水中には魚の様な生き物の気配はない。


 地底湖全体は奥行きが深く見通しが利かないが、真ん中にはそこそこの広さの場所がありそこへと続く太い道があり、その突き出た真ん中には禍禍しい何かが見える。



 そして水の中級精霊に似た精霊が何人か居て、その中央に一際素晴らしい水の羽衣の様なものを纏った精霊が居る。



 多分あれが上級精霊なのだろう。僕のそばにいる水の残念精霊とは何もかもが違う。



 水の中級精霊はそっちの方へふわふわと寄っていく。



「ヒロー早くおいでよ〜上級精霊様にお願いしないと!私が外に出る許可とか!出来るかわからない契約とか!」



 僕は水精霊に急かされて寄っていく。




「に!人間が!なぜ此処に!いけない!」




 水の上級精霊が気を逸らした瞬間だった…その穢れは精霊の力が衰え結界が緩むのをずっと待っていたのだ…水の上級精霊を蝕みながら。



 勝機と見た瞬間…黒い触手の様な物が立ち上り、一気に吹き出す穢れた瘴気…間一髪だが周りの中級精霊は捕まらずに済んだ。



 上級精霊は異変に気がつき、いち早く周りにいた5人の中級精霊を僕がいた方へ避難させる…その様は空間魔法だろうか?瞬間移動の様だった。



 しかし中級精霊達を助けていた為、その場にいた上級精霊は全身に瘴気を全身に浴びる。



 あの禍々しいのが、水の精霊が言っていたダンジョン・コアだろう…今その禍々しい球体から水の上級精霊に似た黒い物体が這いずり出て来た…一見は禍々しい球の目の前にいる上級精霊の様だが身体中からおびただしい数の触手が生えている。



 見てくれは、上級精霊とタコを掛け合わせた感じだ。



 目の前の上級精霊は瘴気をもろに浴びたせいで、一時的にだいぶ弱っているようだ。



 離れているが、とっさに僕は鑑定をかける…完全に戦闘前の流れ作業の一環だ。




◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇


      酷く穢れた存在


     ユニークモンスター

        (中型種)


    LV.15 系統進化最終形態


       使役負荷


  

  ステータスには個体差、系統差あり


  ステータス 鑑定LV不足により失敗



       全系統使役不可


  ジャイアント・オクトパスの死骸を取り込

  んだユニーク個体。


  穢れた触手で捕縛する。

  穢れと怨念の複合体で、常に身体から

  瘴気を発する。


  瘴気に触れた如何なる存在も弱体化。

  人間種は確定麻痺。


  瘴気を羽として羽ばたかせ、自在にホバリ

  ングする。


   体躯を切り裂いた場合、周囲の穢れを吸

  い込み稀に肥大化する。

   最大まで肥大した場合爆散し周りに穢れ

  をばら撒く。


   その際個体はその後死亡するが、周りの

  瘴気に侵された個体を蝕みながら別個体に

  再生する。


   自分の触手を切り離し自由に操ることが

  でき、この触手から本体を再生させること

  も可能


  穢れた宝珠、穢れた衣、穢れた触手、穢れ

  た吸盤、穢れた嘴、etc

  は様々な用途に使用される。


  上記部位は呪具、武器、防具、etcの素材

  に使用可能。


       系統変化先 無し。


  穢れた宝箱を一定確率で落とす。



◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇




「お前ら人間のお陰で!グボァァァッァァ!」



 僕は何か話そうとしたそのヤバい階層主の顔面に、超巨大なウォーター・スピアを打ち込んだ。

見事胸から上が消し飛んだ…上級精霊に似ているので…なんか居た堪れない感じだ。



 こんな暴挙に及んだ経緯は…「相手が話す→攻撃に移る→僕ピンチ」だったので先制攻撃させて頂いた。



僕は今はまだ冒険者でもない、良いところ「異世界から来た元の世界を焦がれる帰りたがりAさん」程度だ。



 お前ら人間にーとか言われても困る。




 僕の周りに飛ばされて来た水の精霊は口を開けたまま停止している…モンブランは大爆笑で、水っ子(区別する為に今だけはこう呼ぼう!)は僕と競う様にもっとデカい水の槍を生成していた。




「人間め!これぐらいで我が死ぬとでも!



「ウォーーーーーターーーーー!!スピアーーーーーーーーーーーー!」



 グボァァァッァァ」






 水っ子がわざわざ再生するのを待ってから相手に撃ち込み僕に自慢する。



ちゃんと相手が何か話そうとしている所を狙うのは僕と変わらない様だ。




「師匠である私の方が!ダメージでかい!魔法はイメージが重要よ!あと名前もね!ちゃんと意思を込めて撃つべし!」




 水っ子がそんな話を僕としている間に、そそくさと上級精霊のやった瞬間移動と同じことをするモンブラン…水の上級精霊を加護で包みこっちに連れてくる。




 水っ子に近づいて質問する水の上級精霊…




「あ…貴女…その魔法は…ナニ?」



「え?ウォーター・スピアです?」



「あ…あら…そう…そう?…そうか…私が知らなかっただけね…」



 なんか…なし崩し的に水っ子の魔法が上級精霊に認識された瞬間だった。




◇◆ ◇◆ ◇◆ ◇◆ ◇◆ ◇◆ ◇◆ ◇◆ ◇◆ ◇◆



 僕たちが、穢れたナントカと闘っている(一方的に撃ち込んでいる)時にエクシア達は地下二階層の階層主まで来ていた。



最下層で穢れたナントカが出現したせいもあり、二階層の階層主に変化があった。



 本来であれば討伐後こんなすぐには生まれては来ないが、本来のダンジョンの主が現れた事でダンジョンが深化する封印が外れて、一時的にダンジョンの魔物にも影響が出た様だ。



 しかし、エクシアもロズも深化していないダンジョンの魔物など物の数には入らないらしく危なげなく魔物を討伐する。



「く…この階層にもいないって事はだいぶ前に此処を過ぎたって事っすね姉さん!俺たちだってここまで1時進かからないんです…あの壁ぶち抜いたヒロならもっと下までいってるって事っすよ!」



 ロズは半分自分に言い聞かせて、半分エクシアを励ます様にそう言った。



「ああ!そうだね。この先に岩造りの下に降りる傾斜があるみたいだ。さっさと雑魚狩りに行こうじゃないか!」



 そう言って4つのパーティーは最下層に降りていくが、エクシア達はこのダンジョンが3階層しかなく水の精霊が深化を防いでいたことを知らない。



 そしてこの下の惨状も知らないのだ…そう…世の中知らないことがあった方がいいことを彼らは今日気がつく。




◇◆ ◇◆ ◇◆ ◇◆ ◇◆ ◇◆ ◇◆ ◇◆ ◇◆ ◇◆



「ウォーター・バレット!」



「ウォーター・スピア!」



「ウォーター・スフィア」



「ウォーター・ジャベリン!!」




 僕と水の精霊達が口々に水魔法を酷く穢れた存在に撃ち込む様がそこにあった。



 この、酷く穢れた存在は自分の触手を切り離し、一斉に襲いかかって来ていた。



 そこで僕は手数の多いウォーターバレットに切り替えて、水っ子はウォータージャベリンに切り替えた。

当たれば穢れた触手は消えるのだが…なにせ数が多い上に次から次に生えてくる。



 僕はウォーターバレットを最大連射数5発で撃ちだし、水っ子は3本の水の槍を作り出す。




 そこにやって来たのがエクシア達4パーティだった。




「ヒロ!ここに居たのか!大丈夫か!怪我は・・・・・・・」



 エクシアの目に移ったのは僕の周りに浮き上がる無数の…水槍にウォータースフィアにウォーターバレットの弾…



 水の精霊は基本的に人間には判らない…その結果僕の周りに浮き上がっては階層主に飛んで行きく水魔法、そして敵の攻撃は巨大な水の激流に阻まれるの図になった。



 その数…ウォータースフィア5発、ウォータースピア3本、ウォーターバレット5発、防御には水精霊の激流(上級精霊)



 しかし僕は、水の精霊が見えないことなんて知らないので、普通に受け答えをしてしまった。



「あ!ちょっと待ってて下さいね!今ちょっと危険なので!ウォーターバレット!!」






◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

==登場人物・用語集==


『精霊』


モンブラン(性別不明) (聖樹の精霊)

水っ娘ノーネーム(水の精霊)


『ギルド』


ギルド・ファイアフォックス  ギルド等級 銀3級


紅蓮のエクシア R「ギルドマスター」♀ (銀級2位)

ロズ(戦士・タンク)♂銅級3

ベン(戦士)♂銅級3

ベロニカ(弓使い)♀銀級3

ゲオル(魔法使い)♂銀級3


ザッハ「サブマスター」♂

リープ(事務員)♀

フィーナ(販売員)♀

ゴップ(解体担当)♂



マッコリーニ商団


パーム(妻)♀(店長)

レイカ♀(娘)

ハンス(執事)

御付き1♀

御付き2♀


売り子A♀

売り子B♀

売り子C♂

売り子D♂


水精霊の洞窟村


レン爺 (村長)♂

バフゥ (武器屋の親父)♂


飯屋の女将 ムイムイ♀

飯屋の料理人 ドムドン♂

飯屋の娘 メイメイ♀

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