第16話「聖樹の威厳が台無し?そもそも、そんなもの有りません。」
取り敢えず2人に順番の説明と、精霊が見えないエクシアさんのフォローをしてからモンブランが見えないエクシアさんから飲ませる。
…すると、モンブランは真横で飲む姿をガン見してる。
エクシアは『聖樹様を差し置いて!』と遠慮していたが、飲める分だけ飲んだら残りはこの聖樹に振りかけて行こうと思った……と説明したら、モンブランが『それが良い!』と言ったのだ。
エクシアさんが口に入れて何かを感じ取ったのか、キョロキョロし始めて……
「なんか飲みにくいからやっぱ、聖樹様にあげてくれるかな?見られてる感じがしてさ……一口でも飲めれば、アタイはそれでいいから。」
……と言われたので、僕はエクシアさんの真横をみて苦笑いすると、エクシアさんの首の向く速度が尋常じゃない素早く横を向いた。
え?って顔で真横を見ているが、エクシアには見える訳がない。
そのモンブランはと言うと、万歳三唱中だった。
『おお!やった!私もらっていいの!私この人好きだ〜!』
そう言うと、モンブランが再度万歳した時に、数枚の聖樹の葉がエクシアの頭に降ってきた。
「ふぁ!せ!聖樹の!聖樹の葉っぱ!え?え?貰っていいって事?え?3枚も!」
一瞬エクシアの驚き口調にレイカが混じったが、異世界人は一口でもスポーツドリンク飲むとこうなるのだろうか?
本来、毟るとその場で枯れる聖樹の葉は本当らしく貴重な素材らしい。
エクシアも銀級冒険者なので、その事は知っているのだろう……驚き方が尋常じゃない。
実態の無いモンブランにどうやって飲ませれば良いのか分からなかったので、直接聞いたらすごい簡単な返答だった。
聖樹の根に沿って振りかけてやれば飲めるらしい。
言われた通りに、残っている量の半分程を根に向けて撒くようにかけてみると……若干クレームを言い出す。
『珍しい味で美味しいけど……生暖かいね……ねぇ!ちょっと冷やしてよ』
「いや……冷やせと言っても氷もないし無理だよ。」
『氷結の魔法で少し冷やせば良いんだよ〜』
「え?聖樹様と話してるのか?あたしゃ氷系の魔法使えないから……誰か呼んでこようか?あ!でも聖樹と話せる事が知られるとまずいか!」
『エクシアちゃん行かなくても平気〜』
モンブランとのやりとりを聞いたエクシアは気を使うが、聴こえるはずのないエクシアにモンブランは話しかける……仕方ないので通訳を開始する。
「エクシアさん、モンブランが言うには大丈夫だそうです」
『ヒロに氷結魔法のやり方を今から教えるから〜……って言っても聞こえないか』
「俺が氷の魔法で冷やすそうです…え?俺が?」
「え?ヒロが?」
そんなこんなで、聖樹の魔法講習会が始まる。
『『アイス』って唱えると凍りま〜す。その時凍らせたい対象と範囲をどの位凍らせたいか頭で考えながら、掌が凍るイメージを強く持ってね。そんで氷の精霊さんに感謝するのを絶対に忘れずに!』
「あ!そんな簡単にできるんだ?」
何故かモンブランは正座だ、なので僕も正座するが、何気に根がゴツゴツして痛い。
エクシアはと言うと………
聖樹の魔法講習会など受けられた人間は、エクシアの知る限り未だかつて居ないので……勿論正座だ。
確かにマッコリーニの御付きの人が凍らせてたもんなと思いながら、僕はペットボトルを持って言われた通りにやる。
イメージはペットボトルの内側数ミリが凍るイメージで、氷の精霊がどんな形をしてるか分からないので、雪の結晶が舞うイメージに対して………最後に『毎年雪山でスキーをやらせてくれてありがとう!』と念じる。
「アイス」
「いやいや…『アイス』じゃ無いよ!詠唱呪文が無いのに出来るわけ………って凍ってる!え?無詠唱…え?」
エクシアの驚きが尋常じゃないので、マッコリーニのお付きの事を話す。
「え?マッコリーニ商団で、レイカさんの御付きの人がやってたじゃ無いですか」
「いやいや!!アレは事前に準備してたんだよ。無詠唱呪文じゃなく『発動待機』させてただけって…かぁ…言っても分かんないか」
モンブランに聞いてみたが、分かんなーい、魔法ってこんな感じでやってるから……人間が使う方法までは〜って軽く言われてしまった。
モンブランの判定では僕は人間では無いらしい。
どうやら本来の習得方法とは違うらしい。
強いイメージの部分は合っているが、全てが雑だと言う……魔法使いのゲオルに詳しく聞かないと、エクシアは専門外だから詳しい話は出来ないそうだ。
そして、レイカの御付きがやっていたのは『発動準備』なるものを事前にやっていただけで、僕の様に魔法を無詠唱でやっていたわけでは無いらしい。
驚いた事に、凍らせたペットボトルの氷の付近に薄い青色の光がふわふわ浮いている。
『凍った〜凍った〜カッチんコッチん〜』
『珍しい水だねーでも凍った〜』
『美味しい匂いのする水を凍らせたった〜』
『でも溶けちゃう〜僕らも溶けちゃう〜』
氷の精霊は凍らせると喜ぶのだろうか?口々にそう言って次第に消えていく。
口々に『まったね〜』って軽いノリで消えていく。
聖樹の精霊が陽気なので、こっちの氷の精霊もイメージに反して陽気だ……
そりゃ……溶けて消えるのも速いはずだ。
正座のエクシアを最初に発見したロズとベロニカは、珍しいものが見れたとしばらく黙っていた様で、僕の『アイス』の無詠唱呪文を見て、驚きの余り絶叫した。
そのせいで、その位置をエクシアに悟られた。
結局はロズとベロニカに聖樹との事を話す事になり、エクシアの横でガン見してた所までかいつまんで話すと、ロズが……
「聖樹様ってなんか近寄りがたいイメージがあったんっすけど、村娘みたいっすね!馴染みやすい感じがいいです!」
と言った一言で、モンブランは自分の順番を最後にした……ロズを信者1号に認定した様だ。
当のロズは、軽口をついた為にエクシアとベロニカに本気で頭を叩かれていた。
彼の髪は……頻繁にこうされて無くなったのだろうか?
冷たくなったスポーツドリンクをエクシア、ロズ、ベロニカ、僕と順に飲んでから、残りを全部聖樹に撒いたらペットボトルは空になった。
『やっぱり冷たい方が美味しい!初めから教えてれば全部飲めたのに…』
2回連続でたらふく飲んだ聖樹の悪巧みに、言われるまで気がつかなかった。
しかし、自分からうっかりバラす残念な聖樹の精霊のモンブランは『順序の件』で3人の冒険者に敬われてたので、ウッカリやってしまう間抜けさは『信仰の妨げにならない様に』黙っておいた。
倒したフォレストウルフの可食部位と素材と魔石を、手際良く処理する冒険者3人に僕は感謝しつつ聖樹を後にする。
そしてモンブランは、周りの木々に……
『ちょっと遊びに行ってくるねー!たまには戻るから心配しないで〜!』
と言うと、周りの木々が答える様に揺れた気がした。
こうして、僕のリュックの中に聖樹の若木が入った訳だった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
『ぶっはーーーーーーー!ヒーロー!たまには外に出してよぉぉぉ!お話してよぉぉぉ!』
聖樹の精霊モンブランが、外に出てから初の第一声だった。
しかし周りからいっぱい蒼い珠がモンブランに集まって来る。
『あーーー聖樹の精霊様だー』
『なんで人間と一緒にいるの〜』
『なんで人間と話せるの〜』
モンブランへの質問が後を立たず、水の精霊がわんさか集まって来る。
『イェェェイ!ワテクシ……大人気!!あの森から出てきてよかった〜!』
聖樹にあるまじき発言だ……
その発言は、あの周辺の木々に謝った方が良いはず。
でも、僕的にはある意味助かった。
この水の精霊達に答えられる世界の知識が無いので、モンブランに丸投げだ!
この間に、さっきから引っかかってた事を纏めるとしよう……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。