第17話「聖樹と水の精霊」


 僕はモンブランに話しかけた。


「ここは任せる!ちょっと調べ物があるから水の精霊と話しててくれる?リュックもそこに置いとくから」



『はいよぉ〜!皆と話してるね!ありがとう!こんなに精霊達と話すの久々だから、ゆっくりで良いよ!調べ物頑張ってー!』



 水の精霊の質問とお喋りは、残念聖樹モンブランに任せられたので気になった調べ物をする。



 この水の精霊がいる場所にスライムが居たのだ……


 しかし、共存共栄は元の世界でもある話……でも何かが引っかかっていた。



 部屋全体を見渡すと、まだ何匹かスライムが居るので倒して回りながら、エクシアと武器屋の店主が言ってた事を何度も思い出す。


 ・この洞窟は『ダンジョン』では無い。

 ・ダンジョンではないので、この洞窟は宝箱が出ない。

 ・この洞窟はスライムが無限に湧く。

 ・最奥部まで時間が掛からない。

 ・この洞窟はエクシアが幼い頃からあった。



 そして、以前エクシアが教えてくれた事。



 ・ダンジョンは稀に未踏派エリアが存在する。

 ・未踏派エリアが見つかる理由は、探し終えたと思われていただけ。

 ・ダンジョンには稀に隠し部屋がある。

 ・入り口付近から数階は雑魚エリア。

 ・どんなダンジョンでも、上層階は最低限だが生活する為の収入源には使える。

 ・ダンジョンには聖属性の精霊が居ないわけでは無い。



 此処はダンジョンだと思われていないだけであって、勘違いから洞窟だと思っているのでは無いか?


 そして当然『未踏派エリア』があり、勘違いから『見過ごされて来た』のではないか?


 何より奥が行き止まりになっていて、そこそこの水量がある泉がある為に、この先があるとは考えなかったのでは無いか?



 そして、水の精霊の存在……


 水の精霊がいると言われていた以上、清らかなイメージのあまりダンジョンでは無いと言う擦り込み。


 この世界に来て間もない自分だから、この世界の常識に囚われず疑問を持てる。


 そう信じて、モンブランに質問する。



「なぁモンブラン……ダンジョンってそもそも精霊は存在できないのか?」



『ダンジョンは魔の領域だから存在はしにくいけど、出来ない訳じゃないよ?だって水があればそこには水の精霊が泳ぐし、風があれば風の精霊が踊るし、土があれば命を育むし、炎があれば力を見せるんだよ。』


 モンブランは水の精霊と戯れながらも答えてくれる。


 そもそも闇の精霊なんかは、穢れに強いのでダンジョンには長く存在できる様だ。


 それに比べて光の精霊は、穢れが多い場所は存在し辛く、力も出せない様だ。


 モンブランが居た魔の森みたいな場所は、特定の場所が酷く穢れる訳じゃなく、森全体的に穢れる様だ。


 そもそも、ダンジョンの場合は形成に大きく左右されるので、何とも言い切れない様だ。


 ダンジョンだって、そもそもこの世界の産物なので完全に理は変えれない。


 精霊はあるがままを受け入れ、何者にも与しない……それが精霊の様だ。


 ダンジョンは強い業が具現化したもので、穢れが強ければ尚深化度合いが強くなるそうだ。


 そして今度は、そこに宝目当てに人間が集まり、なお一層穢れが増すと言う流れだそうだ。


 僕は、その基本的な部分の質問をする……



「その強い元々の業は何処から来てるんだ?ダンジョンが出来る前とか?」


『基本的には人間の負の念からだよ?人間の負の情念が溜まって形を創り、それがこの世界のあらゆるものに作用して、森が魔の森になったり、海が魔の海域になったり、生き物が魔物化したり、死者が穢れたりするんだよ。そのすべての穢れが特異点として固まりダンジョンを作ると言うわけよ』



 答えを貰った僕は、水の精霊に質問をする……


「此処に居る水の精霊達に質問したいんだけど、最奥部って此処かい?それとも……もっと奥があったりする?」



『ここが最奥部な訳ないよ?』


 モンブランの返事の後に、水精霊が一斉に話し始める……



『だよね!ここは湧き水が多いから、僕らの住処だけど、奥は別だよね〜』



『壁スライムが居て、人間じゃ見えないんじゃないの?』



『不便だよね〜、人間て目で見ないと分からないんだもん。魔力で見れば良いのに』



 複数の証言の元、正解が出た!


 やっぱり最奥部は別にあった!



 そして問題発言が続出だ……『壁スライム』ってなんぞ?


 そして……魔力で見るってどうやるの?見たら最後、人間から遠ざかりそうだけど平気なのかな?



「率直な質問だけど……モンブランと水の精霊から見てここって洞窟?ダンジョン?」



『はははははは…人間てマヌケ〜』



『笑っちゃダメだって!僕達水の精霊と違って目が節穴だから!』


『…ヒロさっき宝箱が云々言ってたじゃん……大丈夫?ここの精霊が哀れな目で見てるよ?自然の生き物が穢れて魔物になっても『宝箱』食べてる訳じゃないから、いくら倒しても宝箱は手に入らないでしょ?』


 水精霊の酷い言葉の後に、モンブランがフォローをしてくれが、モンブランも精霊なので、結局はもっともらしい言葉を言われてしまう……



『宝箱がダンジョンから出るのは人間が強欲で、それを感じたダンジョンが人間を呼び込んで、多くの穢れを集めようとしてるんだよ?だから魔物を倒して『宝箱』が出るなら……もうそこはダンジョンでしょう?』


 モンブランは相変わらず水の精霊と遊びつつ、的確に答えをくれる。


 そして僕の勘違いの原因を言い当てる……


『あ!さっきのおっちゃんの話を間に受けたんだ!その話一番信用しちゃダメでしょ……一番奥がどうとか、目で見て判断するしか出来ない人間が言う事より、せめて魔力か魔素を感知して確認しないと!』


 モンブランがヒントをくれたものの……魔力も魔素も感知できない僕は、人間らしく質問するしか無いのだ。


 でもモンブランはその事を理解した上で、注意を促してくる。


『魔力で観てない人間は!適当な事いつも話すんだから〜ダメだよ〜信じちゃ!』



 思いのほかモンブランの人間へのダメ出しは酷かった……



 何者にも与しないんじゃ無かったんですっけ?モンブランさんよ……と言いたかったけどその言葉は飲み込んだ。


 確かに、言われる前にそうじゃないか?とは踏んでいた。


 でも、それを判断できてしまえば『人間』から遠く離れそうなので、精霊達に確認したけど…まさか確認方法があるとは……


 『魔力か魔素で確認』って、モンブランも水の精霊も言ってたけど、一体全体どうやるんだろうか?


『エクシア達ががいない今、精霊と話せるのであれや此れやと問題にならず済むかな?』……と僕はそう思い、折角なのでモンブランに聞いてみた。



『え?魔物を感知する方法?魔力で?スキルで?それともマジックアイテム?』


 モンブランの方法だけで十分だったが、水精霊も僕に近寄り口々に教えてくれる……


『気配探知スキルが早いよ〜』


『え〜…感知魔法の方が遠くまで確認できるんじゃない〜』


『敵感知スキルもあるよ〜人間にとって魔物は敵でしょ〜?』


『シンプルに魔力感知もあるよ〜』


……『やいのやいの』………


 びっくりする事に、見つける方法は結構な数あった。


 当然だがその方法には魔法もあった。


 その後も水の精霊とモンブランは、話が脱線してはいるが楽しそうに話している。


 モンブランは長い間あの森で一人だったと言う。


 だからこそ今が凄い楽しいのだろう。


 話がことごとく脱線して終わりが見えず状態だ。


 ちなみに僕はと言うと、様々な方法があり過ぎてどれが一番最適で簡単なのか判らないでいた。


 そして、水の精霊とはしゃぐ姿を見てモンブランがあの森から離れた理由が気にもなっていた。


 そんなことを考えていたら、逆にモンブランが不思議そうに話しかけてきた……

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