第13話「宝箱で泥沼冒険者完成」


 因みにこの村出身のエクシアと武器屋の店主が、洞窟はダンジョンでは無いので『宝箱』は出ないとエクシアと店主が口を揃えて言っていた。


 それなのに全て倒し終わった後、ペットボトルサイズのスライムから何故か『宝箱』が出た……


 今この洞窟は、もしかするとダンジョンになっているのだろうか?


 箱の大きさは、倒したスライムの大きさより遥かに大きく30cm近くの大きさだった。



 迂闊に触って平気か?そんな風に悩んでいたのだが、とりあえずゲームなどでやる様に宝箱に『鑑定』を遠巻きからする事を思いつく。


◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇


宝箱 『異世界からの祝福』『罠無し』


      入手方法


 ダンジョンの魔物を倒した場合。

 特殊な状況下で魔物を倒した場合。

 そのいずれかで稀に入手。


 箱にはランクがあり、ランクが上がる程、

 良品が詰まっている。


 箱には罠がかかっている場合がある。

 ランクが上がると箱内部は複合罠になる。


 解錠方及び罠の解除方は箱ごとに異なる。


◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇



 鑑定結果を見たが、罠は無く安全に開けられる宝箱の様だった。


 この箱が通常の宝箱か、ランクの高い宝箱の見分けが付かないが、箱ごと持ち帰るには重かったので『中身だけ持っていこう』と、決心が出来たので箱を開ける事にした。



 そこに入っていたのは



◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇


 ジャガイモの種芋「麻袋入り(10個)」

 空気圧縮型 水鉄砲「2個」

 風邪薬『咳喉鼻水複合タイプ』小瓶1個(18錠)

 胡椒2KG (業務用パック)「1袋」


◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇


 正に異世界の祝福だった。


 一応簡易鑑定(文字が浮かぶ様に見る)をするが、危険そうな表記が無いので持ち帰ろうと決める。


 これは、僕が異世界人だから手に入ったのか……それとも特殊な宝箱だったのかが僕には分からない。


 でも風邪薬はこの異世界では助かるし、胡椒は調味料なのでキャンプで重宝するので結菜さんが喜びそうだと思いリュックにしまう。


 麻袋の中はジャガイモの種芋で数は10個にもなり、しっかりした実の種芋は地味に重い。


 最大の謎が水鉄砲が2個……『水の精霊の住む洞窟』だけに水鉄砲だったのだろうか?



 水鉄砲はハンドガンタイプでバーをスライドさせると圧縮空気が溜まるタイプだった。


 奥の水辺で試してみよう……童心に帰れそうな気がする。



 村にいる子供にでもあげるべきだろうか?だが、渡したら異世界人とバレる可能性から駄目だろう。



『それにしても宝箱って出ると嬉しいな……冒険者が病みつきになる気がわかるなぁ……』



 僕は一人でボソッと呟く。



 宝を回収した後、クズ魔石も回収してポーチにしまってから道を確認すると、左の方が若干狭そうに見えるので、反対の右の方へ向かう。


 しかし、道は奥で合流していた……其処はまた開けた場所になり、先程と同じ位のスライムが居た。



 洞窟最奥部に向かう道がその広間から繋がっている様で、奥に続く道は最奥部が見えるぐらい幅が広く大きい。


 先程と同じ様に戦うが、最後に残ったペットボトルサイズの1匹で『鑑定』の事を思い出し、魔物に鑑定が効くのか試してみる



◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇


スライム 『小型種』 LV.2 系統進化前個体


       使役前個体 


  ステータスには個体差、系統差あり


  ステータス LV不足により鑑定失敗


     条件により使役可能


 粘体を持ち、身体の中には核があり絶えず

核を動かし身を守る。


 常に動かす核の中に魔石を持つ。


 スライムの粘体は錬金素材として使える。


 スライムの核を別素材(液状、ゲル状)に入れ

る事で系統変化させ素材体積を増加させる事が

できる。

 系統変化先 LV、経験値不足で鑑定不可。


 ダンジョン生息種の場合稀に宝箱を落とす。


◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇



 思ったより詳しい情報が得られた。



 鑑定には、LVと経験値等いろいろな条件が必要という事も今の鑑定でわかり、少し満足した。



 最後の1匹を倒すと、小さな金属製横長のペンケースの様な物が落ちた。



 取ろうと手を伸ばした時……もしかしてこれも宝箱?と思い、とっさに手を引く。


 そして鑑定をかけると……まさかのサイズの宝箱だった。



 迂闊に触って罠などあったら危険だと心底反省するしか無かった……形状からすれば横長のケースなのでこの形状をよく知る異世界人は気をつけた方が良さげだ。



◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇


   宝箱 (ランクF) (罠無し)


       入手方法


 ダンジョンの魔物を倒した場合。

 特殊な状況下で魔物を倒した場合。

 その何かで稀に入手。


 箱にはランクがある。

 ランクが上がる程、良品が詰まっている。


 箱には罠がかかっている場合がある。

 ランクが上がると箱内部は複合罠になる。


 解錠方及び罠の解除方は箱ごとに異なる。


◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇



 ………ランクFの宝箱が出た。


 コレはこのままエクシアに見せようと持ち上げると、中では何かが転がりカラカラと音がする。


 一応中身を確認してからリュックにしまう。


 中身は厚さが5センチ程度の丸い鉄の缶と小さな小瓶で、封がされていたので簡易鑑定をする。



◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇


塗り薬(小)1個


傷薬(小)1個


◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇



 こちらも危険はなさそうだ……クズ魔石を拾い上げ宝と一緒にしまう。


 僕はその後、幅広の道を進みながら最奥部へたどり着いた。



 思わぬ宝箱の収穫で予定より時間がかかったが、それでも30分ちょいと言う感じだ。


 最奥部は若干傾斜した場所で、確かに奥は泉と言えるくらいの水量が感じられる。



 奥の方にはスライムがまた居たが、流石に慣れたので遠くから石を投げようとして気がついた。


 数匹ほど奥に居たスライムは、真ん中の個体が他の個体に体積を奪われている様だった。



 弱い個体が強い個体数匹に粘体を奪われ、見る見るうちにピンポン球位のサイズになった。



 それに伴い、核を震わせながら必死にそこから逃げようと踠いていた。



 魔物の世界も弱肉強食なんだと思いつつ……複雑な思いで、体積を奪ってまでやっと大きくなった数匹を倒し、後に残された魔石を拾い集める。



 そこに最後に残った弱々しいスライムは倒す気になれず『この後に此処まで来る誰かに任せよう』と思い見逃す事にした。



 水辺を覗くと……小さな蒼い珠の様な物が、水から浮いては戻り水に溶ける様に消える。



 不思議だなと蒼い珠を眺めていると、唐突の蒼い珠が数個ほどこっちに向かってきて僕の周りを廻り始める。



 遠くからでも何か言っているには微かに聞こえるが近くに来たらハッキリ聞こえた……僕をからかっていた様だ。




『んべ〜!人間〜人間〜んべ〜!!』



『ははは〜またやってんの〜?彼らはもう僕等を見えないのに〜!』



『だって〜面白いじゃーん!!こんな近くにいるのに〜!なーんにも感じないんだよ〜』



『ほら!ツンツン!!ほっぺを突っついちゃうぞぉー!』



『アレ?ちょっと!ちょっと!!まって……突っついちゃダメ〜!、この人間見えてる!僕たちの事………目で追ってるよ〜』



 間違いなく幻聴の類では無い……


 蒼い光同士で話してる………そして今猛烈にツンツン突っつかれてる…



 僕はその声に……



「魔物?だったら突っついたりしないで襲ってきてるか……もしかして洞窟の精霊?」



 と話しかけながら、念の為ナイフを抜くと………声に反応したのか、水から沢山の蒼い珠が浮き上がってきた。



 蒼い光は豆粒位小さいものから、大きいものはビー玉サイズの物まである。




『精霊の加護持っている人間だ〜』



『久しいね!村に聖樹が無くなって見える人が居なくなって随分経つのにねー』



『何処の精霊の加護かなー?何処からきたの?』



『精霊の加護だけじゃ無いみたいよ〜聖樹と何処で契約したの〜?』



『なんで僕達、水の精霊と話せるの〜?』



 など……口々に質問している。



 ヤバイ…絶対に一人で来るべきじゃなかった。



 この質問内容といい……さっきの宝箱といい……こっちの世界の住人じゃ無い僕には、答えが見つからない。



『ねぇ、おにぃぃさん!その背負いバッグに仲間が居るんだけど開けてくれる?』



『うんうん!さっきから中でモゴモゴしてるんだよねー』



 それを聞いた僕は、背中のリュックを開けてみると………1つの苗木の周りが、ぼんやり蒼く輝いている。



 この苗木は、エクシア達と上級種魔物用罠を仕掛けた翌日に見つけた物だった……

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る