第13話 告白

「君からこんな所に呼ばれるなんて、何かあったの?」


 清水は誰もいない体育倉庫で僕と向かい合い、なぜこんな所に僕から呼ばれたのか分からないことで、少し不安気な表情を浮かべている。


 僕は清水を呼び出したのは良いが、実際目の前にすると言葉が出てこなくなっている。


 体育倉庫の小さな窓から僅かに光が入り込んで来ている。その光が体育倉庫内の埃のせいで白く濁ったような色をしている。


「単刀直入に聞くぞ」


 僕のごくりと生唾を飲む小さな音が静かな体育倉庫内では大きく聞こえる。握りしめた拳の中が汗で濡れてきているのを僕は感じながら、一歩清水に近づいた。


「なぁ、清水。お前の心の中に女の子がいないか?亜麻色の髪をした白いワンピースの」


 100%だと言う確証はない。


 ただ、黒子と傷の位置が一緒なだけ。アイの言うもう1人のアイが清水だとは一言も言ってはいない……


 これで違ってたら僕はただの馬鹿野郎か、僕が頭がおかしくなったと思われるだろう。


 しかし、清水は僕の言葉にぴくりと反応した。そして、さっきまで僕を見つめていた視線は僕の足元へと移り、その体も少し震えているのが分かった。


 その反応をみた僕は、やっぱりアイの言うもう1人のアイは清水だということを確信した。


「どうなんだ清水……」


 僕は確信したが、清水の口から直接聞くのが怖かった。アイに二度と会えなくなるかもしれないからだ。


 でも僕はアイを解放したかった。あの何もない野原で過ごすことしかできないアイを。


 とても長く感じる。


 体育倉庫はやけに静かで、ここだけが周りからシャットアウトされているかのように、静かにゆっくりと時間が流れているような感覚に陥ってしまう。


「……そうだよ」


 静かな空間にひびをいれるかのように、清水の震えた声が僕の耳へ飛び込んできた。


 その声は本当に小さく聞き取り難いくらいだったはずなのに、僕にとってはがつんと耳朶を引っ張られて怒鳴られたくらいのショックだった。


「いるよ……気づいたのは半年くらい前なんだけどね」


「ただ、はっきりとそれが君の言う女の子だと分かって来たのはつい最近だよ」


「でも、その女の子がなんて名前か、俺の心の中でなにをしているのかは分からない」


 清水は言葉を選びながらゆっくりと少しづつ話し始めた。


「俺はね、小さい時に周りと違うことに気づいたんだ」


 そして清水は黙り込んでしまった。


 なにかとても重要なことを打ち明けようとしていることは分かる。


 しかし、それを言う覚悟が清水には出来ていないようであり、その葛藤が僕に痛いほど伝わってきている。


「圭くん、俺さ……」


「男であって、でも女でもあるんだ」


 顔を上げ僕の目を強い眼差しで見つめながら清水は一言一言をしっかりと僕へ伝えた。

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