最終回
「どうも、浦島太郎です」
「わたくしは講師の亀でございます。突然のお知らせですが、この恋愛講座は今日が最終回です」
「えっ」
「驚きましたか? 驚きましたね? そうです、別れはいつだって突然なのです。だからこそ、目の前の大切な人を毎日しっかり愛しましょうね」
「終了の理由は?」
「ネタ切れ」
「オブラートの欠片もないな」
「わたくし、単刀直入を信条としておりますので」
「でもそっか、寂しくなるな。どれくらい続いたんだっけ?」
「3月から始めたので、およそ10か月ですね。本当は3か月くらいの予定だったのですが、調子に乗って予想外に長く続けてしまいました」
「しかし、恋愛の話はほとんどなかった気がする」
「離婚には詳しくなったでしょう?」
「でしょう? と言われても……」
「いかんせん、わたくし自身が失敗例ですので、あまりお役には立てなかったかもしれませんが、失敗した身だからこそ皆様の幸福を願う気持ちは強いのです。良いですか? こちらのルートへは絶対に来ないでください。辿り着く果ては、とても寂しい場所ですので」
「な、なんだよ急に……。俺も彼女いないし、立場は一緒じゃないか」
「一緒なわけありません。浦島殿はまだお若い。これからの人生に数えきれない分岐があり、その先にはきっと輝かしい未来が存在します」
「お前にだって未来はあるだろ」
「わたくしには過去しかありませんよ。でも、心配しないでください? みんなに自慢したい、とても素敵な過去ですから」
「本人がそう言うなら、そうなんだろうな。でも、明日から会えなくなるのは正直寂しいよ」
「おっと。そんな台詞がひょいと出るなど、恋愛スキルを上げましたなぁ」
「スキルじゃなくて本心だけど」
「はい。恋愛とは、技術で制するものではありません。本心で向き合うことが結局何よりも大事だと思います」
「……そうだな!」
「以上、亀と浦島の恋愛講座でした。皆様、どうぞ良いお年をお迎えください」
亀と浦島の恋愛講座 常木らくだ @rakuda_tsuneki
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