騙しテク

「どうも、浦島太郎です」

「わたくしは講師の亀でございます。本日は恋愛でも重要な『騙し』について学習します」

「いや、騙したらダメだろ」

「相手を傷付ける嘘はいけませんが、喜ばせる騙しはいいでしょう? ほら、サプライズだって騙しの一種ですし」

「それもそうか」

「騙される快感といえば、何と言ってもミステリー小説ですよね。わたくしが先日読んだ某小説では、指紋認証のトリックが出てきました」

「指紋認証?」

「犠牲者が指紋認証でドアを開けた履歴があるから、その時間には生きていたはずだと推理するんですが、実はとっくに殺されていて死体の指で指紋認証された……というトリックですね」

「確かに、指紋って死んでも消えないもんな」

「こういう『確かに』とか『なるほど』は読んでいて爽快ですよね。自分では書けないのですが、ミステリー小説は字を読むだけでなく、騙される体験そのものを楽しむ側面があると思います」

「恋愛では、騙しをどう活用したらいいんだろう?」

「恋人とビデオ通話していたのに、実はそれは録画で、相手は死んでいたとかどうでしょう」

「死んだらダメだろ」

「でもサプライズでしょ?」

「そういうサプライズはいらないよ。そういや、スパイダーマンの映画だっけ? シャンパンに指輪を浮かべて告白するシーンがあったよな。あれはいいサプライズじゃないか?」

「それ指輪が錆びません? しかも金属の成分が溶け出して、飲んだらお腹を壊すのでは?」

「いや、飲まないだろ。シャンパンはあくまで入れ物みたいなもんで」

「シャンパンを飲まずに捨てるなど、たとえ全米が許しても、このわたくしが許しませんぞ」

「全米を敵に回す覚悟……?」

「どうです、ラブストーリーっぽいでしょう。世界を敵に回しても、わたくしは愛を貫き通しますぞ」

「お前、愛なんて信じちゃいないだろ」

「ふふふ……浦島殿は騙せませんでしたね。以上、亀と浦島の恋愛講座でした」

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