Gとの戦い
「どうも、浦島太郎です」
「わたくしは講師の亀でございます。今回はGの話です。苦手な方はご注意くださいませ」
「G……例の虫か」
「シンガポールは衛生的な国ですが、高温多湿な熱帯である以上、Gとの遭遇は避けられません」
「国をあげて駆除しないのか?」
「そういう話は聞いたことがありませんね。おそらく、しても追いつかないのだと思います」
「奴ら強敵だからな……」
「というかそもそも、Gは敵だという認識がないのです」
「どういうことだ?」
「その姿を見ても、誰も驚かないし、やっつけようともしないのです。無関心というか、数いる昆虫の1つでしょ、程度の認識ですね。対するGも、人間に見つかっても逃げたりせず、のんびり堂々と過ごしております。日本のGと違って、自分たちは嫌われ者だという自覚がありません」
「逃げないG」
「新鮮ですよ」
「倒しやすくていいんじゃないか?」
「そうなのですが、相手がまったく逃げないと、倒すのが申し訳ない気分になる複雑な人間心理」
「温情が生まれるわけか」
「とはいえ、放置もできないので、殺虫スプレーは常備しておりました。外国の殺虫剤は強力なので数秒で殺せます。たまに飛んで逃げる個体もいましたが……」
「飛ぶ……だと?」
「そうです、飛ぶのです。殺虫スプレーを噴霧しまくっても、飛ばれてしまったら当たりません。わたくしは、恐怖に泣き叫び、同居していた大家に助けを求めました」
「それで、どうなったんだ?」
「大家がハエ叩きで撃ち落としてくれました」
「無事に倒せて良かったな」
「殺虫剤を吸い込んだわたくしは、翌日ひどい下痢に見舞われて、緊急点滴を受けましたので、あまり無事ではなかったですが」
「草」
「実話ですぞ。ですがまあ、人間がGを嫌わないと、Gも人間を嫌わないわけで、ある種の共存かもしれませんね。以上、亀と浦島の恋愛講座でした」
「恋愛講座とは」
「共存は恋愛の基本です」
「無理やりだな」
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