共同名義

「どうも、浦島太郎です」

「わたくしは講師の亀でございます。ねえ、浦島さん、結婚したら2人のマイホームが欲しいわ……などと言われて共同名義で家を買うのは考え物です」

「結婚詐欺か?」

「それもありますが、離婚する時に面倒なのでオススメできません」

「常に離婚前提だな、お前」

「ですが、離婚しない夫婦でも、共同名義にはあまりメリットがないのですよ。一方、欧米では、家や銀行口座を共同で保有することは珍しくありません」

「夫婦平等の観点ってやつか?」

「それもあるでしょうが、相続対策という現実的な理由が大きいと聞きますね。日本では、銀行口座は単独でしか作れませんが、あちらでは夫婦で共有するのが一般的なため、申請書の名義人欄が2名分用意されております」

「独身にはつらい世界だな」

「言ってはいけません」

「けど、相続対策できるなら、家も共同で持った方がいいんじゃないか?」

「日本は配偶者控除の額が大きく、1億6,000万円までは相続税がそもそもかからないのですよ」

「結構な金額だな」

「でしょう? まあわたくし、こんな説明しつつ、相続税の試験は落ちましたけど」

「落ちたのか」

「はい、昨日不合格通知を受け取りました。24点でした」

「50点満点の試験か?」

「100点満点で60点以上が合格の試験ですね」

「ドンマイ」

「他のデメリットとしては、たとえば夫婦でローンを組むと、奥さんが仕事を辞めて無収入になった時、奥さんの名義分は住宅ローン控除が受けられないことになります。さらに離婚する時は、不動産は分割できませんので、その分を現金で渡すことになるでしょう。手痛い出費です」

「なるほど、それは確かに面倒そうだ」

「こうならないためにも、家はなるべく単独名義で買いましょうね」

「それ以前に、俺の今の収入じゃローン組めないよ……」

「でしたら竜宮城で暮らします?」

「ありがとう、遠慮しとくよ」

「以上、亀と浦島の恋愛講座でした」

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