ドア・イン・ザ・フェイス

「どうも、浦島太郎です」

「わたくしは講師の亀でございます。以前『フット・イン・ザ・ドア』手法をご紹介しました。覚えていますか?」

「えーと……」

「相手に対する要求を徐々に大きくしていく手法です。『いいレストラン教えて欲しいな』『今度一緒に行ってみない?』『美味しかったから来週も行こう』」

「ああ、そうそう、そんな話だったな」

「これとは逆に『ドア・イン・ザ・フェイス』と呼ばれる手法も存在します。わざと無理な要求をして、その後本命の小さな要求を出す、というものですね」

「ああ、それ、営業の研修で聞いたことあるよ」

「営業? 浦島殿の職業、釣り師でしたよね?」

「…………」

「設定を深く煮詰めずにノリだけで連載小説を書いていると、こういう事態が起こります。悪い例ですね。それはそうと、恋愛で活用する場合は、本命の要求より一回り大きな要求を先に出すのがコツです」

「具体的には?」

「『週末、旅行に行かない?』『泊まりはちょっとなぁ』『じゃあ映画に行こうよ』『日帰りなら、まあうん』……こんな感じですかね」

「なるほど」

「ただし最初の要求が大きすぎると、はなから相手にされないという事態が起きますので、そこは充分に注意したいですね」

「たとえば?」

「『週末、旅行に行かない? 世界一周豪華クルーズ、1,000万円3か月の旅』」

「それは、デートの誘いではなく、もはや完全なネタ振りでは……」

「ツッコミ検定ですね」

「とにかく、先に少し大きめの要求を出せば、後の要求が譲歩したように見えるから、普通に要求するより聞いてもらいやすくなるってことだな」

「はい。上手に活用して、恋愛サバイバルを有利に進めましょう。以上、亀と浦島の恋愛講座でした」

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