シングルハラスメント

「どうも、浦島太郎です」

「わたくしは講師の亀でございます。浦島殿は、結婚のご予定は? お子様は何人欲しいですか? どんな家庭を築きたいです?」

「いや、そんな予定まったくないけど……」

「ええーっ、なんで結婚しないの? 一人は寂しいし老後も不安でしょ? 早くいい人見つけて結婚しなよ~! というシングルハラスメントに遭遇した経験はございませんか?」

「たった今遭遇したよ」

「わたくしも何度かあります。結婚ハラスメント、あるいはソロハラスメントと呼ぶ場合もありますが、いずれにせよ迷惑ですよね」

「俺は結婚したくないわけじゃないし、むしろしたい派だけど、周囲にあれこれ言われるのは苦痛だな」

「え、結婚したいのですか? わたくしが、結婚は人生の墓場だとあれほど力説したのに?」

「それ、恋愛講座として根本的におかしいよな」

「何もおかしくはありません。結婚するのが自由なら、結婚しないのもまた自由であるはず。独身者の権利は守られるべきです」

「けど実際、ソロハラされた時って、どう返したらいいんだろう?」

「ソロハラをするのは、たいていの場合既婚者ですから、結婚を悪く言うのも角が立ちますよね」

「とはいえ、黙ってやり過ごすのも悔しいよなぁ」

「ちなみに筆者はこう答えておりますぞ。『私オタクだから結婚や再婚はちょっと無理かな~。老後? 介護付き老人ホームに入居する予定! そうそう、こないだ市営墓地の生前予約したんだ。永代供養付きで20万円なんだけど』」

「墓の話……だと……?」

「結婚そのものは否定せず、しかし自分にその意志がないことを伝える完璧な返しでは? なお墓地は本当に予約しました」

「独り身キメてんなぁ……」

「結婚に対する価値観は人それぞれです。する・しないで争ったりせず、既婚者であれ独身者であれ、お互いの立場を尊重したいですね。以上、亀と浦島の恋愛講座でした」

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