シャンパンコール

「どうも、浦島太郎です」

「わたくしは講師の亀でございます。シャンパンコーーール! ハイハイ、グイグイ、もういっぽーん!」

「お前はいつも唐突だよ」

「それはそうと、わたくし以前から思っていたのですが、浦島殿っておだてに弱いタイプですよね? もっと具体的に言うと、ぼったくりバーに引っ掛かるタイプですよね?」

「失礼だな! そんなことないぞ!」

「ですが、美女に囲まれて『浦島さんの格好いいところ見たーい☆』なんて言われたら、値段も見ずにボトルを注文してしまうのでは?」

「う、まあ……」

「そして、冒頭のようにコールされたら、その場の雰囲気で一気飲みしてしまうのでは?」

「……」

「図星ですな」

「いいじゃないか! それでその場の空気が盛り上がるなら! 俺はいくらでも無理をするぜ!」

「サービス精神旺盛とも言えますが、財布の限界を考えてくださいね。あと、一気飲みは絶対にやめましょう。酒は味わって大切に飲んでください」

「ハイ……」

「そんなだから、竜宮城でも騙されるのですよ。亀を助けただけで、あれだけ歓待されるなんて変だと思いませんか? 後で呪われるって気付きませんか? そもそも亀の背中って乗れますか?」

「乗せた本人が言うんじゃない」

「とにかく反省してください」

「いや、理屈はもっともだけど、そんなに責めなくたっていいだろ? 亀を助けるのも、飲み会を盛り上げるのも、本来はいいことじゃないか! 結果だって、俺1人が傷付いただけで、誰かに迷惑かけたわけじゃないんだし」

「まったく、そんなお人好しだから……」

「お人好しだから?」

「好き」

「突然の告白」

「いいですか、自分を傷付けてまで周囲を盛り上げる必要はありません。今回の人生では、自分を最優先にしてください。わかりましたね?」

「まあ、急に性格を変えるのは難しいけど、お前が言いたいことはよくわかったよ」

「やれやれ……。以上、亀と浦島の恋愛講座でした」

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