バッドエンド勝負

「どうも、浦島太郎です」

「わたくしは講師の亀でございます」

「お前、なんで亀なんだよ! 仮にもおとぎ話の登場キャラなら、絶世の美女に化けるとかできるだろ! やってみろ!」

「突然の無茶振り(困惑)」

「いや、俺ね、この前おとぎ話飲み会に参加したんだよ。そしたら、横に座ったのが鶴の恩返しの爺さんでさ」

「かぐや姫様の横は無理でしたか……」

「ああ、競争率が高すぎた。でまあ、仕方なく爺さんと飲んだんだけどさ? 何なのアレ? 助けた鶴が美女になって? おまけに一緒に住んでくれて? 身の回りのお世話までしてくれちゃって?」

「はい。そして夜は部屋にこもり、自分の羽でこっそり反物を織ってくれる、というストーリーですな」

「う ら や ま し い」

「ですが、うっかり部屋を覗いてしまったせいで、鶴は爺様の元から立ち去ってしまうのでしょう? ハッピーエンドではございませんなぁ」

「んなもん自業自得だろ! その程度でバッドエンド気取るとか、亀助けたのにヒロインに呪われて死んだ俺が許さないぞ!」

「まあわたくしも、バッドエンド勝負で浦島殿に勝てるのは、おそらく人魚姫くらいだろうと思っております」

「彼女はバッドエンド界の重鎮だからな。勝負を挑んじゃいけないぜ」

「ともかく、浦島殿には浦島殿の良さがありますよ。ここだけの話、実は浦島殿は、抱かれたいおとぎ話の男性キャラクター第1位なのですよ? 亀の間で」

「亀の間で」

「それに、周囲から尊敬される英雄よりも、努力が報われない主人公の方が、わたくしは親近感がわいて好きでございます。その方が、読んでいて応援したくなりますから。わたくし以外の読者も、心の底ではきっとそう思っているはずですよ」

「頼む、誰か俺に不幸萌えしてくれ……」

「はい、いつかは亀以外にモテるといいですな。以上、亀と浦島の恋愛講座でした」

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