キャッチフレーズ詐欺

「どうも、浦島太郎です」

「わたくしは講師の亀でございます。はぁ……」

「突然ため息? どうしたんだよ?」

「いえ、毎日講義をしているにも関わらず、受講生がなかなか思ったように増えませんのでな。わたくし少々落ち込んでいるのでございますよ。この講座、ひょっとすると面白くないのでしょうか?」

「(ノーコメント)」

「何かコメントしてくだされ!」

「いや、ほら、この講座そもそもコンセプト微妙じゃん? 登場人物が亀と浦島だけだし、おまけに恋愛講座のくせして、恋愛に役立つ情報ほとんど何も載ってないし」

「そんなことはありませぬ! 非常に役立つ情報も載っておりますぞ! 離婚届の書き方とか、離婚届不受理申出の出し方とか!」

「そこを熱心にアピールされても」

「やはり美少女、または美女が登場しないのがいけないのでしょうか。たとえば講師が巨乳美人で、講義の内容が毎回実習(意味深)で、キャッチフレーズが『さあ、センセイと秘密のレッスン始めましょう?』だったらもっと受講者が増えるのでしょうか?」

「増えるだろうが、そんな内容どこにあった? キャッチフレーズ詐欺はいただけないぜ」

「ショボーン……」

「まあ、前も言った通り、俺はこの講座を受けるって決めたからさ! マイナー講座だろうが何だろうが、地に足をつけて地道にやっていこうぜ」

「そ、そうですな。わたくしとしたことが、取り乱してしまって失礼しました」

「さあ、それじゃ講義を……って今日はもう残り字数が少ないな。明日はどんな話をしてくれるんだ?」

「はい、気を取り直して、離婚時の財産分与と慰謝料の相場について熱烈講義いたしますぞ!」

「(そういうノリがいけないんじゃ……)」

「以上、亀と浦島の恋愛講座でした」

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