あいあい傘

「どうも、浦島太郎です」

「わたくしは講師の亀でございます。最近、季節の変わり目で天気が不安定でございますな。朝は晴れていても、念のため折り畳み傘を持ち歩きたいところです」

「あっ、折り畳み傘と言えば、俺ラブラブネタ持ってるぜ!」

「ふーん、言ってみればぁ?(上から目線)」

「だいぶ前だけど、学校の帰り道、急に雨が降ってきてさー。そん時は千代と一緒だったんだけど、傘持ってないって言うから、俺の傘に入れてやったわけよ。あいあい傘ってヤツだな!」

「別に珍しくもありませんな」

「まあ聞けよ。やっぱさ、お互い意識するじゃん? ぎこちなく歩幅を合わせたり、うっかり肩が触れ合って慌てて離れたり、その後赤面して顔をそむけたり。なにしろ至近距離だからなぁ。けどさ、最初は良かったんだけど、途中から風が強くなってきて、俺の傘が突風でぽっきり折れてしまったんだ」

「ざまあ」

「と思うだろ? で、すっかり途方に暮れてたら、千代がカバンから折り畳み傘を取り出したわけだ」

「ん? 傘は持っていなかったのでは?」

「本当は持ってたんだ。『えへへ、あいあい傘したくて嘘ついちゃった!』だぜ?」

「なんたる小悪魔」

「こういう可愛い嘘なら、いくらだって歓迎だよな!」

「確かに、相手を騙す嘘はよろしくないですが、ドキドキさせて喜ばせる嘘はいいものでございますなぁ」

「あれ、前みたいに嫉妬しないの?」

「あの時は取り乱してしまいましたが、わたくしは恋愛講座の講師ですぞ。未来ある若者のフレッシュな恋を全力で応援しまする」

「うさん臭い……あっ、まさか録音されてる?」

「いいえ」

「ホッ」

「今回は、浦島殿の赤面ノロケ顔を動画で録画しましたぞ。このデータを消して欲しくば……」

「やっぱりそのオチかい!」

「以上、亀と浦島の恋愛講座でした」

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