離婚届不受理申出

「どうも、浦島太郎です」

「わたくしは講師の亀でございます。本日のテーマは『離婚届不受理申出』でございます」

「初級編とは()」

「さっそく話を進めますぞ。離婚届には夫と妻の署名が必要ですが、その署名が当人のものかどうか窓口では確認しないため、片方が署名を捏造して離婚届が受理されてしまうケースがございます」

「それって、ダメなんじゃ?」

「はい、有印私文書偽造罪に問われますな。ただ偽造であっても、ひとたび受理されてしまったら、戸籍を修正するには非常に煩雑な手続が必要になり時間や労力がかかります。そういった事態を防ぐために、あらかじめ『離婚届不受理申出』を提出しておくと、提出した本人が役所へ出向かない限り離婚届が受理されなくなるのですぞ」

「泥沼だな……」

「まあ賛否はありましょうが、知らないうちに勝手に離婚届を出されていた、という事態を回避できますな」

「それだけ詳しいってことは筆者は……いや、聞くのはよそう。その手続は、すぐにできるのか?」

「ええ、書類はすぐに貰えますし、費用も一切かかりませんぞ。いざ離婚準備が整ったら、提出した本人が役所へ出向けば、いつでも自由に取り下げできます。窓口での処理に少々時間がかかる以外、デメリットは特に何もありませんな」

「でも、悲しいよな。わざわざそんな申請するってことは、つまり相手を疑ってるってことだろ? 結婚した時は永遠の愛を誓ったはずなのに」

「理想だけでは走り切れないのが、人生というものでございます」

「そうだろうけど、俺にはやっぱり、その制度は賛成できないな」

「ははは、構いませぬよ。浦島殿は、賛成できないそのお気持ちをどうか大切に持ち続けてくだされ」

「……」

「以上、亀と浦島の恋愛講座でした」

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