第46話:襲撃者
あまりにも程度が低すぎて相手にならない。
数は多いが下級レベルに到達しているのがようやく三人いるだけで、他の四十一人は下級にすら到達していない、犯罪者ギルドでも最底辺の連中だ。
だが俺は全知全能の神ではないので、俺を超えるような能力を持っている刺客を知覚できずに見逃している可能性もある。
「誰かいるか」
控室にいる当直の護衛二人が起きている事は分かっているが、一応声をかける。
「はい、なんでしょうか」
「三流の刺客が四十四人襲ってくる。
だが俺が感じ取れないくらいの達人がいるかもしれない。
俺のことはいいから、エラの護衛に注意するように伝えてくれ」
「はい、直ぐに行ってまいります」
上役の護衛が視線で配下に指示を出すと、配下が軽く頭を下げて出て行った。
上役は俺の側を離れない心算のようだ。
そろそろ警備の傭兵も襲撃に気付く頃だな。
「襲撃だ、敵の襲撃だ」
「殺すな、この程度の人間なら生け捕りにしろ」
護衛の傭兵達も直ぐに襲撃者が最低の連中だと分かったようだ。
以前から指示しているように、黒幕を自白させるために生け捕りにしようとする。
まあ、恐らく、オリビア王女の手先だろう。
いや、オリビア王女に命じられたバカが集めた連中だろうな。
オリビア王女以外にも多くの人間に恨まれている自覚はあるが、あの連中ならもう少しましな刺客を集めるくらいの才覚はある。
「ノアお兄様、刺客が襲っていたという事ですが、大丈夫ですか」
「エラ、そのような服装で兄とはいえ男性の部屋に来てはいけないよ」
いくらなんでも、公爵令嬢が夜着にガウンを羽織っただけで男の部屋に来てはいけないから、エラに厳しいことは言いたくないのだが、しかたなく注意をしておく。
「大丈夫ですわ、弟達にこのような姿を見せたりはしませんわ。
ノアお兄様だから安心しているのです」
「いや、俺でも駄目だよ、エラ。
急に逃げなければいけない可能性もあるから、直ぐに着替えてきなさい。
エラに冒険に行くときの装備を整えさせてくれ」
エラに厳しい注意をする事などできないが、精一杯の注意しておく。
エラが着替えるの嫌がったのが分かっているから、護衛の女傭兵や戦闘侍女に八つ当たりする事はできないが。
だが俺を超えるような刺客の襲撃があった時の事を想定して、戦闘に耐えうる装備を整えるよう女傭兵や戦闘侍女に命じた。
「黒幕が近くにいるぞ。
お前が一隊連れて捕獲してこい」
「はい」
本当に今回の襲撃者は最低の無能のようだ。
集めた襲撃者も、事前に俺の事を少しでも調べていれば揃えないような低能だ。
しかも逆襲を受けそうな所まで自身が出てくるなんて、バカ過ぎる。
どうせ出てくるのなら一緒に襲撃すればいいものを、加わるだけの度胸はない。
加わるだけの度胸もなければ、ドンと本拠地で待っている度胸もない。
「捕らえた黒幕と襲撃者を俺の前に連れてきてくれ。
魅了と支配の魔術をかけて、一番後ろにいる奴を襲わせる」
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