第42話:閑話・執念・オリビア第一王女視点

 腹が立つ、絶対に許さない。

 私がこんな所に押し込まれているのは全部あの男がわるいのだ。

 殺す、絶対に殺す、どんな方法を使ってでも殺す。

 あいつを殺してハザートン公爵家を潰せばここからでられる。

 そして妹や弟を殺して私が女王になるのよ。


「ローガン、ハリー、よく戻ったわね」


「ローガン、お召しにより参上いたしました」


「ハリーも戻りました。

 何なりとお命じください」


「そう、だったら早速命じるわ。

 ノアを殺しなさい。

 ノアを殺したらまた愛してあげるわ。

 だから今直ぐ殺しなさい」


「承りました、早速殺し屋の手配をしてまいりますので、しばらくお待ちください」


「私も兄とは別に殺し屋を用意いたします。

 二重に刺客を送ればノアなど簡単に殺せます」


「そう、分かったわ、期待して待っているわ。

 ただし、できるだけ早くノアを殺すのよ。

 ローガンとハリーがこの国に戻れたのは、私が父上にお願いしたからよ。

 ハザートン公爵家への手前、父上もしかたなく私をここに入れたけど、父上の私に対する愛情は以前と全く同じなのよ。

 だからローガンとハリーがグズグズしてノアを殺さないようなら、父上に言って二人を殺させるからね。

 分かった」


「分かっております、オリビア王女殿下。

 火急速やかにノアを殺してみせます」


「はい、兄の申す通りですオリビア王女殿下。

 屋敷に戻って直ぐに刺客を手配いたしますので、ご安心くださいませ」


「そう、だったら直ぐに屋敷に戻って準備しなさい」


「「はい」」


 ローガンとハリーは簡単に引き受けたけど、信用できないわね。

 私が何度命じても犯罪者ギルドは失敗ばかり、最後は私を脅すような身の程知らずな事をするほどだったわ。

 私ができない事を、ローガンとハリー程度にできるわけがないわ。

 もっと役に立つ者に命じなければいけないわね。

 何十人にも命じたら、偶然ノアを殺せるかもしれないわ。


「お前、将軍や騎士団長を呼んできなさい」


「申し訳ありません、オリビア王女殿下。

 国王陛下から国の役職についている者と殿下を会わせるなと命じられております。

 もし勝手に会わせるようなら、殿下をこの塔から地下牢に移すとまで言われておりますので、殿下のために呼ぶわけにはいきません」


「何を言っているの、お前は。

 私の命令よりも父上の命令を聞くと言うの」


「恐れながら殿下、私は殿下の侍女ではなく、国王陛下の侍女でございます。

 陛下の命令に逆らって殿下の命令を聞くわけにはいきません」


「おのれ、おのれ、おのれ、ゆるさないわ、お前を絶対に許さないわ」


「私が申し上げられるのは、国の役職についている者と会っていただくわけにはいきませんが、役職についていない者となら会っていただけるという事です。

 殿下の無聊を慰めるためですから、それくらいの融通はきかせていただきます。

 誰か会いたい方はおられませんか」


「そう、だったらトレーシー城伯を呼び出してちょうだい。

 当主のアーチーは最近将軍を罷免されたのよね」


「はい、殿下の申される通りで得ございます。

 直ぐに使者を送らせていただきます」

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