第38話:大陸連合魔術学院理事

「まあ、学院長はお口が上手ですね。

 でも私もノアお兄様が強かったからだと思っておりますわ。

 それに私の魅力が加わっているのなら、今後も属性竜を狩れますわね。

 また明日にでも海水浴に行きませんか、ノアお兄様。

 今度はいい素材が手に入るように殺されればいいではありませんか」


 エラがとんでもない事を口にしだした。

 学院長の表情は変わっていないが、少し匂ってきた。

 悪臭とまではいわないが、好きにはなれない臭気だ。

 学院を護るために多少の駆け引きは平気で行うのだろう。

 まあ、学院長の思惑はともかく、エラの気持ちはわかる。

 エラはもう一度俺と海水浴に行きたいのだ。


「いやいやいや、そんな危険な事にエラを巻き込むわけにはいかないよ。

 それに良質でなくてもいいのなら、もう百頭分以上の素材があるよ。

 いや、百頭分以上あるのだから良質な素材も結構あるのだよ」


 学院長の思惑に乗せられてしまうが、その程度の事は別にかまわない。

 属性竜の素材くらいいくらでもくれてやる。

 もちろんそれ相応の対価はもらうけどね。

 俺が一番大切にしているのはエラの安全だ。

 絶対に勝てると分かっていても、属性竜がたくさんいるような場所にエラを連れて行く事は絶対にない。

 まあ、よほどエラが望んだら折れてしまうかもしれないけれど。


「本当ですかな、ノア殿。

 学院としては良質でなくても属性竜素材は欲しいのです。

 まして良質の属性竜素材となれば喉から手がでそうになるくらい欲しいのです。

 どうでしょうか、ただとは申しません。

 お金は渡せませんが理事の地位を用意します。

 良質な属性竜素材を二頭分、破壊された部分が多い属性竜素材を八頭分頂きたい」


 さて、学院長はどの程度の欠損を良質と言っているのだろうか。


「学院長は一撃で鱗と皮と骨を貫通させて脳や心臓を破壊して殺した属性竜は、良質素材を考えておられるのですか」


「まさか、どの属性竜も一撃で殺されたのか。

 身体中に刀傷や魔術傷がない、破壊されているのが心臓か脳だけの属性竜なのか」


「ええ、そうですよ。

 普通なら脳や心臓の損傷も最小限にして狩るのですが、今回はあまりに数が多かったので、目や耳や鼻の素材は完全に原型を保っていますが、脳や心臓は破壊してしまっているのですよ。

 まあ、首を切り落とした属性竜は脳や心臓は完全に原形を保っていますが、血液を全て失っています。

 脳なしと心臓なしと血なしは良質素材ですか」



「良質です、良質です、完璧な良質です。

 三種の属性竜を二頭ずつ渡していただけるのなら、理事になっていただきます」


 さあ、ここからが本気の交渉だ。

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