第28話:亜竜

「ノア様、相手は亜竜です。

 貴級魔獣の中でも強力な部類に入ります。

 ノア様が強いのは知っていますが、遊びで狩るのは危険過ぎます」


 サイモンが俺の安全を優先して提案してくれるが、それは聞けない話だ。

 エラが俺の雄姿を見たいと言ってくれているのだ、ジャマしないでくれ。


「ちょっと待ってくれ、サイモン。

 亜竜を狩る機会などめったにない。

 五メートル級の亜竜素材を手にいらられる機会は滅多にない事なんだ。

 ここは冒険者に狩らせてくれ」


 冒険者達の代表であるニコラスがサイモンに頼んでいる。

 俺としてはどちらの意見も聞きたくなかったのだが。


「まあ、亜竜とはそんなに強くて貴重な魔獣ですのね。

 ノアお兄様なら簡単に殺してしまわれるでしょうから、どれほど強いか分からないかもしれませんね。

 ノアお兄様、冒険者達に狩らせてあげてくださいな」


 冒険者がギリギリの状態で狩ったら、鱗が破壊され皮傷つき、素材としての価値が極端に低くなってしまうのだけど、エラが言うのなら仕方がないな。


「エラがこう言っているから狩ってもいいけど、亜竜の価値が下がらないように、身体に余計な傷をつけないようにしてくれ」


「それは冒険者の俺達が一番分かっています。

 分かっていますが、今回はさすがに難しいです」


「だったら余計な攻撃は控えて、少数精鋭が一撃必殺で狩ってくれ。

 それで狩れなければ俺が一撃で狩る。

 お前達も俺が巨人を狩った時の事は覚えているだろう。

 鱗も皮も眼もできるだけ傷つけないようにして狩れるからな」


「分かりました、だったら私が一人で狩りますよ。

 魔術師達は素材を傷つけないように氷結魔術で動きを止めてくれ」


 ニコラスが一人で狩る覚悟をしたようだ。


「俺も亜竜と戦ってみたいのだが、ノア様の側を離れるわけにはいかんからな」


 サイモンが残念そうにしている。

 別にサイモンが側を離れても問題はないのだが、それを言ってはサイモンを傷つけてしまうから、ここは側にいてもらおう。

 雇用主だからこそ、命を預ける傭兵や冒険者のプライドを傷つけてはいけない。


「まあ、とてもすばやい動きですわね、ノアお兄様。

 ニコラスは亜竜を狩れますか」


「そうだね、俺が厳しい条件を付けていなければ、ニコラスなら狩れただろうな。

 だけど今は眼を狙って殺す事もできないし、脚を傷つけて動けなくする事もできないから、チョッと難しいかな」


「本当ですわね、徐々にケガが増えていますね。

 ニコラスはどうしたいのですか」


「口を開けた時に槍で脳を貫こうとしているのだけど、ちょっと難しそうだね」


「あっ、跳ね飛ばされてしまいましたわ、

 助けてあげてくださいな、ノアお兄様」


 やれ、やれ、しかたがないな。

 火系の魔術を使ってしまったら一部とはいえ素材を焼いてしまうから、圧縮した風魔術を耳から叩き込んで脳を破壊するか。

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